【Fast Episode.15】廊下の彼女はうわさの子。
【Fast Episode.15】廊下の彼女はうわさの子。
今日も授業が終わった。
さっきは男子生徒に俺達の思い出を話したりと、なかなか充実した一日だった。
そう、この時までは。
放課後になり、俺は帰宅の準備をしていると、リュウトがいつものお誘いをしてきた。
リュウト「よぉ、タクミ!帰り、お好み焼き寄ってかねー?」
タクミ「おう、いいな!ちょうど腹減ったしな!チヒロも行くか?」
チヒロ「うん。今日はイカ玉が半額———」
チヒロがそこまで言いかけた時、俺達は外がやけに騒がしい事に気付いた。
タクミ「なんだ?廊下が騒がしいな…」
するとリュウトが。
リュウト「行ってみようぜ!!」
まーた始まったよ…。
…こいつの野次馬精神、昔からだが、なんとかならんのか…。
俺達が廊下に出てみると、隣の2組のクラスの方に人だかりができていた。
チヒロ「あっち、なんだか人だかりができているね。」
たしかに、なんかやたらと盛り上がっている。
そして、人混みの中心に「誰か」がいるようだ。
???「ちょっと、どいてー!通してー!!」
この声にリュウトが反応する。
リュウト「これは…あげはちゃんの声!?」
2組の中野あげはがいるのか?
俺達は蚊帳の外で、状況がわからない。
タクミ「なんだ?この騒ぎ…?」
するとチヒロが。
チヒロ「ちょっと聞いてくる!」
そう言い、チヒロは人混みの中へ消えていった。
こういう時、チヒロの奴は行動が早い。
…そういや、チヒロも野次馬精神だったな…。
絶対あいつ、将来はジャーナリストとかになってそうだな…。
リュウト「俺も!!!」
それに便乗し、リュウトも人混みの中に消えて行った。
あいつはシンプルにただ野次馬だ。
……と思ったが、あいつは中野あげは信者だからな…普通に気になるんだろうな。
俺はって?俺はこういうのは苦手なんだ。
そうこうしている内に、チヒロが戻って来る。
チヒロ「聞いてきたよ。」
はや!!!
さすがだな、チヒロ。
そうしてチヒロは珍しく興奮気味に口を開く。
チヒロ「あの中野あげはがとうとう陥落したんだって!」
陥落??なんのこっちゃ??
続けてチヒロが。
チヒロ「オリ会に誘われてOKしたんだよ。入学以来、今まで断りまくって100人斬りの異名を取ってたのにね。」
へぇ…。
そうなのか…あの中野あげはがねぇ…。
俺はチヒロに聞いた。
タクミ「へぇ、誰がオトしたんだ?」
するとチヒロは。
チヒロ「野球部の敷島だって。」
タクミ「敷島って、ピッチャーでエースの?」
俺はあまり野球に興味がないから、名前しか聞いた事がなかったが…
そんな野球部の敷島光一は俺達と同じ三年で、この学校のエースナンバーを背負う者だから、一応、名前だけは知っていた。
チヒロ「そうそう。今年の甲子園進出を勝ち取ったって言われてる、今まさにうちの学校のヒーローだね。」
タクミ「へえー。やっぱ学園アイドルもそういうヤツになら、なびくんだな。」
余談だが、うちの高校は野球はそこそこ強い程度の普通の高校だ。
地区予選でも3回戦や準決勝辺りまではいくが、優勝した事はなかった。
タクミ「地区予選突破して、校内でも噂になっていたのは知っていたが、まさかあいつがオトすとはな。」
チヒロ「それが…どうもそういう訳じゃなさそうなんだよね。」
続けてチヒロが。
チヒロ「敷島、中野さんを野球部の部室に連れて行ってさ、部員全員で泣きながら土下座して懇願したんだって。」
………。
えぇ…(困惑)
チヒロ「そして敷島がさ、「もし今、中野さんにオリ会の誘いを断られたら、自分はメンタル弱いから甲子園でボロボロになる…。だからどうか受けてください!」って言って承諾してもらったみたいだよ。」
俺はますます困惑するとともに、呆れまででてきた。
タクミ「きったねー!つうか、スポーツマンシップはどこに行ったんだよ。」
チヒロ「だよねぇ…。まぁ、うち、念願の初出場だからね……。部員達も必死だったみたいだよ。」
部活への頑張りは認めるが、誘う為の頑張りは間違っているよなぁ。
チヒロ「で、中野さんも断り切れなくなって、オリ会に出るくらいだったら…って感じでOKしたみたいだね。」
タクミ「なるほどなぁ…。しかし…泣きながら土下座?オリ会ぐらいでそこまでやるか?普通…。」
チヒロ「だってあの中野あげはだよ?…ちょっとやそっとじゃオトせないと思ったんでしょ。」
んー………。
チヒロ「もっとも、中野さんはあんまりにも固いから、中野あげはには好きな人でもいるんじゃないかって、そんな噂もあったけど…。」
リュウト「いない!!あげはちゃんに好きな人などいない!!そんな羨ましいヤツなど、この世にはいないんだー!!!!」
…リュウト、戻ってきたか。
リュウト「事情を聞いてきたぞ!!それが酷い話なんだ!!!あの敷島が野球部全員使って———」
タクミ「あー…すまん。それ、今、チヒロに聞いた。敷島が中野あげはを部室に連れて行って、野球部全員で土下座したって話だろ?」
リュウト「うぐぐ…。さすがチヒロ、情報収集が早いな…!」
チヒロ「いやぁ、それほどでも。」
リュウト「まあ、聞いたんなら話が早い。なあお前ら、こんな酷い話があるか!?」
たしかに酷い話なのは間違いないが、リュウト、いつも以上に熱くなってるな…。
俺は信者でもないからそこまでは気にはならないが…。
リュウト「あのあげはちゃんをこんな卑怯な手でGETする奴がいるとはぁ!」
続けてリュウトが。
リュウト「あげはちゃんって言ったらアイドルだ!夢だ!女神だ!そして、数少ない俺達の希望でもあるんだよ…!!学校一の女子…。女子の中の女子なんだよ!!!なぁ、タクミ、チヒロ!お前らもそう思うだろ!?」
チヒロ「…リュウトの気持ちはわかるけど…。」
タクミ「たしかにチヒロの言う通り、気持ちはわかるけどさ、そこまでなのはお前だけなんじゃ…。」
するとリュウトは俺達の回答に気に入らなかったのか…
リュウト「なにぃ!?タクミお前、あげはちゃんの美しさを否定するのかっ!?」
……いや、別にソコは否定してないんだがなぁ…。
タクミ「いや、そうじゃなくて。とりあえずリュウト、一回落ち着け。」
俺はひとまずリュウトを落ち着かせる。
タクミ「大体お前、いつも外見だけで決めちゃってるじゃん?内面もみよーぜ。あの中野あげはって言っても、顔は良くても、性格は悪いかも知れねぇぞ?」
するとリュウトはぽかんと口を開けたアホ面で。
リュウト「ん???外見だけで何が悪いんだ??」
タクミ「お前なぁ……。いいか?もう一回言うけど、女ってのは外見もそうだけど、中身だって重要なわけで———」
そこまで言いかけた時、中野あげはが人混みの中から出てくる。
あげは「んもー!!通してってば!見世物じゃないんだから!!」
どん!!!!!
おわっ!!!
俺は人混みの中をかき分けて脱出してきた中野あげはと派手にぶつかってしまい、中野あげはは派手に尻もちをついてしまった。
あげは「いったーい!!」
中野あげは!?!?
なんでまさに話の渦中だった人が俺にぶつかってくるんだ!?
あげは「なんでこんなところに突っ立ってんのよ、もー!!」
おわ……。
怒られた…。
しっかし、何回かしか見たことなかったが、改めて近くで見るとめっちゃ可愛いな。
怒ってんのにこんなに近くで見ると…ヤバいくらいに可愛いぞ!!!
すまん、リュウト……前言撤回だ。
認めるわ…。
これは確かに可愛いわ…。
お前の言い分を認める事なんて、滅多にないけど、これだけは認めるわ…中野あげは、学校イチだわ。
うん…。
なんて、一瞬のうちに考えていた。
すると彼女は。
あげは「大体、なによ?女は中身がじゅうよーとかって?」
うわー………。
そこだけ話を聞かれてたのか…。
タクミ「い、いや、女っつーか!人間はみんな中身次第だとかって話をしてただけで———」
そこまで言った時、あげはが。
あげは「そう…。中身次第ねぇ…?…あたしはアンタが踏んでるあたしの鞄の「中身」が心配なんですけど?」
ん?…えっ…!?!?
次回に続く。
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次回更新は…10/6日です。
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