【Fast Episode.9】ドキッ!
【Fast Episode.9】ドキッ!
あれから一か月くらいたった。
5月の半ばとは言え、もうじき夏だ。
かなり暑い日も出てきた。
そして俺はと言うと、あれからゆきみとはあんまり話ができていなかった。
ゆきみの方は生徒会とか、勉強とかで忙しいのだろう。
そんな俺はいつも通り、リュウトやチヒロとだべっていた。
チヒロ「でさ、タクミは誰をオリ会に誘うの?」
…またその話か。
チヒロ「やっぱり華咲さんとかいいんじゃない?」
委員長か…。
たしかに胸もでかいし、なにより天然で俺もあの日の一件以降はよく妄想する。
チヒロ「あれ?また妄想中?」
タクミ「ちゃうわい!!!」
チヒロ「うーん。だけどやっぱダメだよね。それにタクミには、「まだ」可愛い彼女がいるじゃない。」
あれ?これどっかで聞いた事あるな…?
デジャブ?
タクミ「は?…また俺、自分でも知らない間に、誰かと付き合ってたわけ???」
チヒロ「またまた……。今日は「月曜」だからね。昼休みに会えるでしょ?」
そうしていると…。
チヒロ「———ほら。来たよ。タクミの彼女が。」
チヒロが教室の入り口を指さした。
そこには…
ゆきみがいた。
タクミ「ばっ……!アレは違うぞ!」
ゆきみこと、西宮ゆきみだ。
チヒロ「なんで?再会してから仲いいじゃない。」
タクミ「あれはただの幼馴染だって!!」
チヒロは少しため息交じりに話す。
チヒロ「ただの幼馴染ね…。タクミさ、何人ただの幼馴染がいるんだい?」
う…その言い方はかなり含みのある言い方だな…。
タクミ「しらねぇよ!!ってかあいつ、なんで学年違うくせに時々ここに顔出すんだよ……。」
チヒロ「委員長に用事でしょ。ゆきみちゃんも生徒会の係だから。ここんとこ毎週月曜の昼休みには委員長と何か話をしてるみたいだよ。」
タクミ「そうだっけかな…?」
そういや、毎週月曜日は俺のクラスに顔出してたな。
…もっとも俺は月曜ってのもあり、昼休み以降には大体、寝てたが…。
続けてチヒロが。
チヒロ「こないだ彼女が、ここでそう言ってたじゃん。タクミ、ちゃんと聞いてあげてないんだね。」
…あーそういやそんな事言ってたような言ってなかったようなー…。
やべぇ!全然覚えてねぇ!
俺の記憶力はにわとり並みって昔から言われてっからなー…。
ゆきみが話しかけてきた。
ゆきみ「あっ、タクミ!チヒロもリュウトも!こんにちはー!」
タクミ「上級生に呼び捨てはないだろ?」
だが、当の二人はそんなことは気にしていないみたいだ。
リュウト&チヒロ「こんにちはー。」
二人ともゆきみと同じ口調で返す。
そして、ゆきみに愛想よく挨拶されて、満面の笑みで行儀よく挨拶を返していた…。
特にリュウトに至ってはあからさまに鼻の下が伸びてる気がする。
そんなリュウトの態度を見て、俺はなんだかちょっとムッとした。
…ってなんだ?…俺、ヤキモチ妬いてる…?
いやいや、まてまて。
転校してしばらく会えなかったとは言え、ゆきみはただの幼馴染。
ガキんちょの頃から金魚のフンみたいにくっついて歩かれて、どっちかと言うと俺は迷惑していたんだ。
まぁ、この間会った時は一瞬わからなかったが、確かにガキの頃を比べると、ちょっと可愛い感じにはなってきたけど…。
……いや、待てよ?
あれ?よく見たらかなり可愛い…。
そんなゆきみを見ていたらゆきみから。
ゆきみ「なに?タクミ。あたしの事、ジロジロ見てる。」
俺は反射的に言い返す。
タクミ「あ?み、見てねーよ。」
すると…
ゆきみは顔を近づけてきた。
ゆきみ「ふ~ん、そうかな~?」
うわ!顔近い!!!やばい!少しドキドキしてきたぞ…!
ゆきみ「いくらあたしが可愛いからって、やらしー事考えないでよね!へへへ。」
すると、用事を思い出したのか…。
ゆきみ「じゃね!」
…そう言い残し、つむじ風みたいに俺達の所から去っていき、華咲みどりの方へ駆けて行った。
こいつも嵐みたいなやつだな…。
…あれ?やっぱりデジャブ?
…しかし、なんだあいつ!
やっぱ、ちっとも可愛くねー!
あの減らず口がなければ十分可愛いと思うんだがな…。
———って俺、また「可愛い」とかって思ってるし。
おかしいぞ。こんなの。
そして、タイミングを見計らったかの様にチヒロが。
チヒロ「気を付けなきゃね。タクミ。」
えっ…?なんの事だ?
チヒロ「彼女最近、上級生に人気があるみたいだよ。」
……なんだと!?
チヒロ「だって我が校で久しぶりの一年からの生徒会メンバーだし、僕らはゆきみちゃんと幼馴染だけど、何せ僕らみたいな上級生の階に来て堂々と話すコミュニケーション能力だよ?」
…たしかに一年からの生徒会入会は現生徒会長の、扇谷勝以前は5年程いなかったという。
一旦冷静になろう。
タクミ「へ、へぇ…。物好きが多いんだな。」
チヒロ「実際に可愛いからね。それにタクミも「幼馴染の特権」もいつまでも有効って訳じゃないと思うよ。」
うぐっ…。
タクミ「大体、まだ子供じゃねーか。彼女にしたいとか考えた事もねーよ!」
……と、俺は精一杯の虚勢を張る。
そんなチヒロは少し考えて。
チヒロ「ふーん……。」
な、なんだよ、その顔は…!
ゆきみ「あ、そだ!!」
いきなり後ろから声がかかる。
タクミ「わっ!!な、なんだ!?」
いきなり戻って来るなよ!心臓止まりそうになったじゃねーか!
ゆきみ「あたしね、さっき調理実習の授業でクッキー焼いたんだ~!」
調理実習?そんなのあったか?
…いや、こいつは1年だ。
俺達とは時間割は違う。
そしてゆきみはへへへと悪戯っぽく笑った。
そして…
ゆきみ「あたし……タクミの為に作ったんだよ。はいっ!あ~んして?」
なっ!?あ~ん、だと!?
それってアレか!?美人とイケメンな彼氏彼女がよくレストランとかでするアレか!?
俺は少し…いや、今思うとかなり赤面だったと思う。
タクミ「や、やめろよ!」
俺は異常に心臓をバクバクいわせながら少し後ずさる。
ゆきみ「あはは!冗談だってば!授業で作ったのが余ったから持ってきただけ!ハイ。これあげる!」
そういうと俺の手の上にちょこんと可愛らしいラッピングが施されたクッキーを乗せた。
しっかしこいつが料理とはな…。
これ大丈夫か?毒とか入ってないだろうな…?
…しかし、なんにせよ、貰えるものは嬉しい。
ありがたく頂いておこう。
ゆきみ「あっははー動揺しまくりじゃん、タクミ!そんなんじゃ彼女できないぞー!」
タクミ「う、うっせい!」
彼女か…。
まだ動揺しまくりの俺は「彼女」という単語を聞いただけでゆきみ=彼女なシーンを想像してしまう。
…くそっ!チヒロのヤツがあんな事言うからヘンに意識しちまうじゃねーか!
そんな俺を尻目にリュウトが。
リュウト「ゆきみちゃーん。俺には無いの?」
ゆきみ「ごっめーん。ちょっとしか余らなかったのー…。」
リュウトから「えー!いいなー」という心の声が聞こえてくる。
…俺もそろそろエスパーに目覚めちまったか。
そしてあからさまに物欲しそうな目でリュウトが俺の手元を覗き込んできた。
タクミ「や、やらねーぞ?」
俺はなぜか急に気恥ずかしいような…腹立たしいような…妙な気分になった。
そして後で考えると、何を思ったのか———
貰ったクッキーの包装を開け、口いっぱいにクッキーを頬張り、一気にゴクンと食べた。
…案の定、喉につかえた。
———んっがっぐっぐ!?!?!?
なんだこのクッキー!?美味しいのは美味しいが、口に含んだだけで口の中の水分を全部持っていかれる…!!
それを見ていたゆきみが…
ゆきみ「タクミ!?ど、どうしたの!?」
く、苦しい…。
口の中の水分も持っていかれるし、あと、1つだけなんだこの味!すげぇ変な味がする!!クッキーになんか悪いモンでも入っていたのか!?
どちらにしろ俺は、その場で悶絶して倒れたのであった。
次回に続く。
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次回更新は…9/15日です。
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