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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
最終章 魔王のいない世界で
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そして未来へ

え?

いや、そんなに怒らないで下さい。

売り払ってやるってそんな殺生な。

名刀なんですよ?


まあまあ。

落ち着いて下さいルクトさん。


黙っていた事は謝ります。

でもここしばらくに限って言えば、黙っているように言っていたのは

他でもないガンダルクですよ?

せっかくだから、アルメダの出発の前の日に登場するよー!…って。


ええ。

もちろん、最初から再転生の準備は済ませていました。

それこそ、あなたがガンダルクと共にあたしの許を訪れる前からね。

その点は、レムリと一緒に説明した経緯の通りです。


でもね。

正直に言うと、無事に再転生できる保証はまったく無かったんですよ。

術式は念入りに組んでいましたし、転移の触媒として使用する毛髪も

量的には十分でした。

ですがそもそも、百年以上も経った後で転生するというのは無茶です。

いくらあたしでも、そんな突拍子もない前例は聞いた事もありません。


それに、ガンダルクの傍にはいつもあなたがいた。

あなたが守っている限り、そうそうガンダルクが死ぬような事はない。

むしろ、あなたが先に死ぬ可能性の方が高かった…と本気で思います。

何より、今さらガンダルクが自分で死を選ぶとも思えなかった。

レムリの体に宿っている限り、歳を取る事はありません。だとすれば、

いずれあなたが先に老いて死ぬ結末も十分にあり得ました。


どこをどう切り取っても、再転生の事を話せる場は無かったんですよ。

勝手だと思われるでしょうが、今のままでいいと考えていました。


でも、やはりガンダルクはあたしの想像を斜めに超えてきました。

まさか二番刀の破片を取り込んで、体の内側から転生術を解くとは。

嘘偽りなく、そんな展開は今も昔もまったく想定していませんでした。


レムリの肉体を殺す事なく、転生を成し遂げる。

それはもう、魔術も貴術も超越した奇跡としか言えません。少なくとも

意図して成せる事では絶対にない。あたしの手には負えない事でした。


だからこそ、あたしは怖かった。

その時が来たら、ガンダルクがどうなってしまうのかが。

答えが見えなかったからこそ、希望と不安に押しつぶされそうでした。

下手に本人やあなたに説明する事も出来なかった。お察し下さい。


話したが故に失敗したでは、もはや悔やみ切れない。

だからあたしは、黙って成り行きを見守る道を選びました。

そしてガンダルクは。



かろうじて、あたしが生成した肉体に再転生を果たしていたんです。


================================


ええ、そうです。ご推察の通り。

あたしとレムリは、夜はほぼ毎日のように転移で洞窟に通ってました。

まともに体を動かす事すら出来ないガンダルクの世話をして、いつか

ルクトさんの許へ戻れるように力を尽くしました。実に大変でしたが、

昔に戻ったかのような日々でした。


口にはしませんでしたが、その態度を見ればすぐに分かりました。

ルクトさんに会いたいんだな、と。


思いの強さを知ればこそ、あたしもレムリも焦らないようにしました。

万全の体になってから、あなたの許へ連れて来ようと。今さらですが、

さほど心配もしていませんでした。

あなたが、ガンダルクとの思い出を捨てる事はないと思っていたから。


ルクトさん。


ここに至り、ガンダルクとレムリの不老の鎖は解かれました。

永い歳月を経て、あたしの術からの解放を勝ち取った。

2人とも、ごく当たり前の生と死に向き合える時間と体を得たのです。


ガンダルクを


よろしくお願いします。


勝手な願いですが


彼女と共に、幸せになって下さい。

あたしもお手伝いしますので。


共に未来を歩んでいきましょう。


だから



…売るのは思い留まって下さいね?


================================


翌日もよく晴れた。


「にゃはは、いいお日和だねえ。」


誰より早く外に出たガンダルクが、空を仰いで笑う。


「忘れ物はないよな?」

「もちろんです。」


そんな言葉を交わしながら、ルクトとアルメダが続いて外に出る。

トッピナーとラジュール、レムリの3人もその後に続く。


転移術網が部分的に再開された今、ここからメグランの王都ロヒリアへ

一瞬で向かう事も可能だ。連絡さえすれば、メリゼの転移貴術を使って

召喚してもらう…という手もある。ただしそれでは、今のガンダルクは

置いてけぼりになってしまう。


「何にせよ、ゆっくり行こうよ。」


ガンダルクが提案するまでもなく、ルクトたちもそのつもりだった。


「じゃあ、気をつけてね。」

「プローノ様によろしく。」

「ああ。んじゃ行ってきます。」


さすがにトッピナーとラジュールは同行しない。ここの仕事がある。

こうして見送る選択もまた、各々の選択の形でもあった。


「さあて、んじゃ道を…」


向き直ったルクトの言葉が、そこで不意に途切れる。


「…?」

「あ。」


彼の見つめる先に視線を向け、他の皆もその沈黙の意味を察した。

そこに立っている者たちの姿に。


「よう、ルクト。」

「よう、メリフィス。」


久し振りの再会だった。


================================


「お久し振りです。」

「こんにちはー。」


短い沈黙ののち。

そんな挨拶の言葉を口にしたのは、メリフィスのすぐ後ろに並び立つ

ホニップとイノだった。傍らには、笑みを浮かべるソーピオラもいた。


「あらお久し振り!」

『お元気そうですね。』


トッピナーやアミリアスたちも相好を崩す。

彼女たちとこうして会うのも、本当に久し振りの事だった。


「元気そうだな。」

「ああ。」


ルクトと言葉を交わしたメリフィスの視線が、隣に立つ黒髪の少女へと

向けられた。


しばしの沈黙ののち。


「…もしかして、ガンダルクか?」

「ご名答!」

「ホントに?」


ソーピオラが目を丸くする。


「戻って来たの?」

「お恥ずかしながら。」

「へえぇ…」


大きく頷いたソーピオラが、意味深な笑みを浮かべてメリフィスの方に

視線を向ける。当のメリフィスは、苦笑していた。ホニップとイノも、

じっとメリフィスの言葉を待つ。


「…どうかしたか?と言うか、何か用だったんだよな?」

「ああ。だが、もういいんだ。」

「何がいいんだよ。」

「無駄足になっちまったからなあ。…いや、そうでもないのか。」

「……………………?」


いまいち話の見えないルクトの傍らで、ガンダルクが面白そうに笑う。


「にゃはははは!…ひょっとして、ルクトを誘いに来てくれたの?」

「まあな。…ハハハ!」


堪えかねたかのように、メリフィスがそこで短く笑った。


「アルメダがいなくなったらヒマを持て余すだろうと思ったからな。

また一緒にやらねえかと誘うつもりで来たんだよ!」

「マジかよ。」

「ったく、とんだ無駄足だぜ!!」

「ハハハッ、確かにな!!」


ルクトとメリフィスは、声を揃えて愉快そうに笑った。

ガンダルクも笑った。アルメダも、トッピナーも。ホニップもイノも、

ソーピオラも。ラジュールもレムリもアミリアスも、心から笑い合う。



ああ、素敵な無駄足だったと。


================================


「せっかくだから仕事受けていってくれ。頼むぜトッピナーさん。」

「とびきりの難題を紹介するよ。」

「ええー…」

「ホントですか?」

「いいじゃんやろやろ!」


ソーピオラたちは、わいわいと言い合いながら紹介所に入っていく。

彼女たちの背中を見送り、ルクトはメリフィスに向き直った。


「じゃあ、またな。」

「ああ。」

「行くかガンダルク、アルメダ。」

「ええ。」

「はい!」



「ルクト。」

「うん?」


「いろいろ、すまなかったな。」

「気にするな。」


即答に迷いはなかった。


「俺とお前の仲だろ?」

「ああ。」

「お互い、幸せになろうぜ。」

「そうだな。」


笑顔で言い交わし、2人は右の拳を突き出して打ち合わせた。


「何かあったら呼んでくれ。」

「ああ。お前もな。」


「にゃはははは!いいねやっぱり。仲がいいのは何より素晴らしい!」


ガンダルクの笑い声が、晴れ渡った空に巻き上がっていく。

皆で守った空に。

皆で変えた世界に。


自由な生き方は、時に厳しい。


それでも、自分なりの形で前を向く事ができる。

例えばこんな風に。


そして自分たちは、自由な未来へと歩んでいく。

共に歩むべき、誰かを愛しながら。



キンカジの街に注がれる日差しが、皆の笑顔を照らし出していた。



================================



================================

================================


「っと、ちょっと弱いなあ。ここの結び、もうちょっと何か…」


「お姉ちゃん!」

「何、なぁに?…今けっこう乗って書いてるから、邪魔しないで…」

「北の公園に空飛ぶお菓子屋さんが来てるんだよ!」

「え、ホントに!?」

「早く!!売り切れちゃうよ!!」

「ちょちょ、ちょい待ち!ええっと小銭小銭、小銭どこだっけ!?」

「先行ってるよー!!」

「あー、待ってよクレオ!!」


ドタドタ慌ただしい足音が、やがて遠ざかっていく。

主のいなくなった部屋の机の上に、何かを書き記した紙があった。



数年後。


アステアの魔王ザンツ、グレインの軌跡を記した書籍が世に発表され、

人々は知られざるその歴史に大いに惹きつけられた。嘘か真実かは誰も

分からなかったものの、その内容は実に奥が深く、そして両者に対する

哀惜の念に満ちていた。


誰が知ると言うのだろうか。

彼らの事を。


著者の名はヨーク・ヨー。


誰も彼女を知らなかった。

何者なのかも。

彼女にとって、魔王が何なのかも。


そして世界は続いていく。


今日も

明日も



誰も知らない未来へと。


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追放剣士とお気楽魔王

~自由な奴らが世界を変える~


       完

これにて完結です。

長いお話にお付き合い頂き、本当にありがとうございました!


1月1日より次回作「ようこそ神託カフェへ!!」スタートです。

よろしければ、こちらもご贔屓に。

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― 新着の感想 ―
[良い点] よかった良かったガンダルクが帰ってきたルクトのもとに。 何もかもがハッピーエンド、この結末に感謝します ありがとうございました。
[一言] 完結お疲れ様です 毎朝読むのを楽しみにしてました素敵な物語をありがとうございます!
[一言] 良い物語をありがとう。 お疲れ様でした。
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