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1-7 小さな喧嘩と昼ご飯

久々ですね。

お待たせ(?)しました。

また連載していきます。

「なんや喧嘩したんか自分ら。珍しいなぁ」


 お昼ご飯。いつものように4人集まって、窓際に陣取って口を動かす。窓から入る風がアヤの髪を揺らしている。外を見ると、鮮やかな木々が初夏を告げようとしているようだった。

 

 いつもならニコニコしているアヤは、今日はむすっとしてもくもくと箸を運んでいた。


「そんなこともあるだろう。どんなに仲が良くとも、ある程度衝突はあるものだ」

「そんなものなのかなぁ。別に喧嘩ってわけでもないんだけどね。ねぇアヤ、そろそろ許してくれない?」


 アヤは何も言わない。ただ、目をそむけながらお弁当を食べている。作ったお弁当は朝渡したけれど、無言で受け取ってはくれた。空腹には勝てないもんね。


「何があってん?なんか前にもこんなことあったような…」

「よく覚えてるね。アヤがこんなに拗ねるのはこのときくらいじゃないかな?」

「ということは…なんだ?料理か?」


 玲仁のカンが冴えている。半ば当てずっぽうのその言葉は、目の前の不貞腐れ幼馴染に突き刺さったようで、「ふぐっ?!」と喉を詰まらせていた。その様子を見て、机を越えて正面に手を伸ばす。


「よーしよーし大丈夫だぞ〜(さすさす)」

「ありがとう…」


 落ち着いたらしいアヤが、どうやら話をする気にはなったのか、こちらに体を向けた。依然顔は不貞腐れたままだけど。


「そんなに料理苦手なら教えてもらえばええやん」

「それは私のささやかなプライドが…」

「僕が全部作ったげるよ?」

「それも違います」

「ふむ。では教えて貰うのではなく、一緒に料理をするというのならどうだ?」


 ぽろっと漏らした言葉に、アヤはポカンとしたまま玲仁を見ている。そのままゆっくりこちらを向いたかと思うと、目を見開いて口を動かした。さながら、というかこれこそが「鳩が豆鉄砲を食らったような」顔なんだろう。


「ーーーか」

「え?」

「その手があったか!!」


 誰でも気づきそうなものだけどなぁ。同じことを思ったのか、隣の灰崎は「この子アホとちゃうか」とでも言うような目でアヤを見ていた。まあ折角同棲してるわけだし、一緒に料理するタイミングなんて幾らでもあるだろう。そんな間抜けな会話をしていると、ふと玲仁がこちらを見て質問してきた。


「ところでだ愁。先日言っていた場所の探索はどうだったんだ?何か気になるモノは見つけられたか?」

「「うぇっ?!」」


 すぐに頭に浮かんできたノアを振り払い、慌てて取り繕う。知っている人はなるべく少ない方がいい。目の前で同じ様に慌てる少女にとアイコンタクトをとる。


(この件は絶対バレちゃいけないから、秘密だよ)

(わかった)


「いや、愁が慌てるのは…いやそれもわからんけどアヤはなんで慌てとるんや?」

「ナ、ナナンデモナイヨ…?」


 これじゃ何かあると言っているのと変わらない。本当に隠し事が下手な幼馴染である。挙動不審になった二人に、残る面々、特に灰崎が食いついた。何かあったに違いない、そう確信して目にいたずら心を爛々と光らせながら詰問を繰り返す。


「おやおや?早く帰ったと思ったらこれは何かあったんやね?あるんやね?何があったんかおじさんに教えてご覧?」

「ほんとになにもないんだってば!ねぇシュウ!」


 いやこっちにふっちゃだめでしょ。ニヤつきながら、ほんとにぃ?と覗き込む灰崎になんでもないかのように答える。


「そういう意味ではほんとにないよ。探索結果ってことなら、多少珍しいものはあったけど、特筆すべきものはなかったかなぁ」


 嘘はついてない。…いやついてるな。まあ仕方のない嘘っていうのもあるし。うん仕方ない。ごめんよ友よ。灰崎は「ふーん?」と意味有り気な顔を浮かべているが、質問者の玲仁はあまり表情を変えていないように見える。


「…うむ。愁がそういうのならそうなんだろう。ハズレ情報を引かせてしまってすまなかったな」

「いや、大丈夫だよ。ありがとう」


 バレてそうだなー。具体的な内容はともかく。ただ、こういうとき玲仁は深く踏み込んでこない。人が話したくなさそうなことには突っ込まない、人との適正距離を保てるタイプだ。こういう性格だから、いくら残念でも嫌われるようなことにならないのかもしれない。今はその配慮に感謝しよう、と思いつつまた何か返さなきゃな、なんても思う。


「そんなことよりさ、次のテストの準備は皆出来てるの?もうそろそろじゃなかったっけ?」

「え、もうそんな時期やった?はやないか?」

「時が過ぎるのは早いからな。そうか…もうすぐ…半袖の時期か…。衣服を身に纏うことで生まれる何かもあるが、やはり純粋な露出度、焼けた肌、何より透…」

「はーいそこまでにしとこうね〜」


 周りの人からの視線が痛い。やるときはやるが駄目なときは駄目なやつだった。しかし、テスト対策というならば今回はとてもまずい。最近勉強していない。上位は維持しておきたいところだ。ただ、僕よりもまずいのがいる。


「テスト…テストぉ…。またたいしてなんにもしてないシュウに負けるのは嫌だよぅ」

 

 この中で最も成績の悪いアヤが、顔を突っ伏して嘆く。


「真面目なのに馬鹿ってもう救いようがないわな自分。勉強してないならまだしもしてるのに成績悪いて目も当てられんわ」

「まあ赤点程ではないのだから、そう気に病まなくてもいいのではないか?」

「いやさ、勉強してるのに成績下ってなんか嫌なんだよね〜」

「真性の馬鹿みたいやもんな」

「いわないで悲しい」  


 普段どんな勉強してるんだか。あ、でも家にいるなら勉強見てあげればいいのか。きっと凄く効率の悪い方法で愚直にやってるに違いない。そんなことを思っていると、灰崎が似たような事を切り出した。


「じゃあ勉強会するか?学生っぽくてええやん。成績上位勢3人組おるし多少上がるんちゃうの?」

「ほんと?助かる!是非お願いします!」

「ふむ、いい案だな、ならもう放課後にでもしてしまうか」

「じゃあ第一回アヤの成績上げる大会開催だね」


 とんとん拍子に決まった勉強会。楽しみではあるんだけど、ここまできてようやく気付いた。


「ねえ、場所はどこでするの?」

「そら一番広く使えるシュウの家やろ。異論ないやんな?皆」

「勿論いいぞ」「いいよー、あっ」


 …遅かった。アヤがやってしまった感と申し訳無さと誤魔化しを混ぜて割ったような、なんとも言えない顔でこちらを見る。これで断るのもなぁ。


「?どうしたんアヤ」

「何でもないよ!ありがとう!」


 どうなることやら。







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