1-6 見慣れた事件
「シュウ、いつまで寝てるの?」
また寝坊してしまったのか。
アヤにはいつもお世話になってるなあ。
「ちょっとシュウ、聞こえてるんでしょ?もう起きないと遅刻するよ?」
そうはいっても体はピクリとも動かないし。
にしても今日は声がやたらと近い。
ついに家の鍵を突破されたというのか…?
「シュウ!」「うわぁっ?!」
突然身体から温もりが失われた。
春眠暁を覚えず、春の朝は眠るもの。
そんな僕の常識は儚くも敗れ去った。
ってなんでアヤが部屋にいるのさ。
「おはよう。…なんでここに?今日そんなに時間ないの?」
そこまでだとは感じないけど。
寝惚け眼でアヤと見つめ合いながら言う。
今日も君は早起きですね。
「何言ってるの。隣で寝起きしたんだから起こしに来ただけでしょ」
隣の家なんていつも…あっ。
「なるほど。そういえば同棲始めたんだっけ」
「~~~っ!!」
何も考えずに放った一言だったが、目の前の少女にはクリティカルヒットしたらしい。
顔を背けて、
「ごはん!冷めるから!早く降りてきて!」
と言い残して出ていってしまった。
これが今日から毎朝続くのか。
「朝はゆっくり出来なくなるな…」
二度寝なんてもってのほか。
悲しい現実だ。
幸せな朝に別れを告げながら、学校の準備を始める。
だいたい"明日のことは明日する"というスタンスなので、鞄の中身も朝調整。
忘れ物の原因になっているのは間違いない。
「ん?アヤ、ご飯冷めるっていってたよな…?」
一抹の不安を胸に各種準備を終わらせ、下に降りると。
「ちょっ、アヤ、君は何を作るつもりだい?!お願いだから爆発とかはやめておくれよ?!」
「ノアは黙ってて!作るのは私!」
超物騒な話してますね。
ってことはやっぱり。
「アヤ!?料理してるの?!ストップ、大変なことに」
「きゃあっ!?」
急いで駆けつけたが時すでに遅し。
大きな音とともに短い悲鳴が聞こえた。
みると、暗黒物質をのせたフライパンに、何故か中身の爆散した鍋。
極めつけは「完成品!」とばかりに並んでいる元野菜達。
どうやったらあんな変色するんだろう。
余りの惨事に頭を抱えて立ち尽くしていると、初めてコレを見たはずのノアが勢い良く口を開いた。
「シュウ!何なんだいこれは!この子はまともに料理する気があるのかい?何を作りたいのか全くわからないよ!」
まあ一見さんはびっくりするよね。
当の本人は台所で鍋を見つめ肩を震わせていた。
ああ、小さい頃何度もみた光景だ。
何回か料理を振舞おうとしてくれたときがあった。
殆ど失敗だったけど、そのあとの行動はいつも決まっていた。
そう、こんなふうに目に涙を浮かべながら。
「もう二度と料理なんてしないから~!!」
走って出て行ってしまうと。
「何なんだあの子は…。まるでハリケーンかなにかのようだよ」
ノアが部屋の惨状を見渡しながら言う。
まあ悪気があるどころか善意も優しさでしてくれてるからね。
そこまで悪い気はしないというものだ。
片付けるのは僕だけど。
「ちゃっちゃと片付けてアヤに軽食でも持っていってあげよう。朝ご飯もお弁当もなしじゃ耐えられないだろうし」
「全く、ここまでされてその態度、随分と仲良しさんでいいことじゃないか」
「まあそう言わないでよ。折角アヤが作ってくれようとしたんだから」
ノアがこっちをみて笑っている。
そういう彼女はそこにいるだけで楽しいのだろうか。
「ノアはこの後どうするの?といっても外には連れて行ってあげられないけど」
いくら緩くても流石に見つかってしまえばアウトだ。
何かで暇潰しできるといいんだけどね。
「凄く凄く暇だよ全く。ま、君たちが帰ってくるまではスリープしとこうかなぁ。早く帰ってきておくれよ?」
「そっか…。ごめんね。ノアの移動についてちょっと考えてみるよ」
そう簡単には見つからないと思うけど。
「よし、じゃあ片付け開始だ」
…毎回思うけど、何使ったらこんなことになるんだろう?




