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最終回・ある学校の授業風景

 はい、着席ー。今回はどこからだったか……ああ、技術革新からだね。

 じゃあまずは予習してるかどうかテスト。技術革新のきっかけとなったのはどこ? んー、アドリオンさん。



「リュース王国の西部ー」



 正解。厳密にいえば西部のトラウモント地方とシュタインベック地方ね。ちなみに先生の実家もそこにあります。あ、ここはテストに出さないからね。

 トラウモント地方とシュタインベック地方は隣り合ってるから、多分その境界あたりで始まったんじゃないかと言われてるけど、まだ詳細は分かっていないんだよね。そこらへんの資料を管理している王国とシュタインベック財団が歴史に関する資料に閲覧制限をかけてるの。



「えー、それなんか怪しいニオイしねー?」



 バルマーくーん、先生には形だけでも敬語使おうねー。

 制限の理由は当時の領主テオドール・エーベルハルトの遺言によるものが大きいんだって。あ、あとこっちはテストに出ないけど実は王国的にちょっとまずい事情もあるらしいよ。



「あれ、先生の苗字と一緒だ」



 そうよー。先生も世が世ならお姫様……もちろん嘘だよ。わたしはテオドールの弟の方の子孫だから。まあ、他の人よりは財団の書庫に入る手続きが楽なんだけどね。この時代の研究者になったのもそこらへんが理由の一部だったりして。


「へえー」


 あ、今のはもちろんテストに出さないよー。

 さて、この時期に開発されたもので有名なのは計量の単位に洗剤、羊皮紙から植物性の紙にシフトしたのもこのへんだね。チョークの発明もこのころ。あと、教科書にはあまり載らないけどスキップジャックの燻製とかラミナリアでスープを作る技術ができたのもこの時期。



「でも先生ースキップジャックもラミナリアも海産物でしょ。あのへんって海ないですよー?」



 そこが面白いところなのよね。これはトンデモ学説の一つなんだけど、技術革新をもたらしたのはマレビトって言われてるのよ。



「マレビトって、あの迷信に出てくる?」



 そう、そのマレビト。暗黒時代が暗黒時代たりうる理由はそこなんだよね。どこからか人を誘拐しては自分の都合のいいように使役していたって。それは外国とも言われているし、いっそこの世界の外からとも言われているのはこの間教えたよね。

 技術革新をもたらしたマレビトは異世界から来た……みたいな伝承がシュタインベック地方に残っているの。ここらへんは知りたければ大学院まで進んでゼミに入りなさい。私と姉がみっちりしごいてあげるから。



「げえー」



 はい、思っても悲鳴は出さない! 本音と建前は使い分けなきゃうまく生きていけないわよー。

 マレビトかどうかはともかく、技術革新はある錬金術士の登場ぬきに語れない……と言いたいところだけど語るに語れないのが現状でもあるんだよね。民話と技術書以外に記録が残されていないの。だからマレビトだったんじゃないかーなんて言われてるんだけど。

 一応、有力な説が無いこともないんだよ? ほら、みんな一度は課題図書で読んだことあるでしょ。「リカルド・ヴィンターの書簡」っての。



「貴族のお嬢様と謎の男の文通記録でしたっけー」



 そう。使われている文法がきれいだから、上手に手紙を書くためのひな型にも使われてるアレ。ちょっと意外な話なんだけど、リカルド・ヴィンターっていう人間がいた記録はそれしかないの。そこから読み取れる情報も限られてて、シュタインベック地方に住んでたこと、黒髪だったこと、背が高かったこと、なぜか夜にしか動けない体質だったこと……そのくらい。

 そのリカルド・ヴィンターにはユーリっていう同居人がいて、この二人の錬金術士が技術革新の要だったと言われてるわね。……ユーリ、に関しても記録らしい記録がほとんど残ってないんだけどね。



「ないないづくしじゃーん」



 だから研究が面白いんじゃない。わかってないね、カーフェンくん。先生の仮説もないことはないんだけど、まあ研究自体が未だに制限されているからねー。発表できるかどうか。





 ……っと、そろそろ授業時間終わるね。

 それじゃ、今回の課題は「リカルド・ヴィンターの書簡」を読んで自分の考察をレポートで提出すること。ただの感想文とかあらすじ解説だったりしたら容赦なく再提出だからねー。

 はい、授業おしまいー。

ありがとうございました! よかったら他の小説もひいきにしてやってください

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