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EP 4

慰安旅行(という名の強制労働)! マサカ茸狩りツアー開催

「——というわけで、これより俺の14歳の誕生日記念『ポポロ山・慰安旅行ツアー』を開催する。全員、動きやすい格好に着替えて集合しろ」

 ルナキンでのカオスな宴から一夜明けた、翌朝。

 ポポロ村の村長宅シェアハウスのリビングにSクラスの面々とルチアナを集めた俺は、腕を組んでそう宣言した。

「わぁい! 慰安旅行! さすがリアン、太っ腹だねぇ!」

 キャルルがウサギ耳をピンと立てて無邪気に喜ぶ。

「ふふっ、自然と触れ合うのは素晴らしいことですわね」

 ルナも、お嬢様然とした微笑みを浮かべている。

 だが、その中で一人だけ、顔を真っ青にしてガタガタと震えている駄女神がいた。

「い、慰安旅行って……まさか、本当に私を山で強制労働させる気……!? 私、大宇宙管理局の公務員(女神)よ!? 山で泥だらけになってキノコを採るなんて、そんな地味で過酷な肉体労働……ッ!」

 ルチアナが、ハイブランドのドレスの裾を握りしめながら抗議の声を上げる。

「嫌ならいいぞ。今すぐ魔導通信石で天界のカスタマーサポートに連絡して、お前の居場所を黒服の取り立て屋にチクるだけだ」

「やりますぅぅぅっ! キノコでもなんでも根こそぎ採ってやりますぅぅっ!!」

 俺が通信石を手に取った瞬間、ルチアナは食い気味に悲鳴を上げて前言を撤回した。

「よし。今回狙うのは、ポポロ山に自生する秋の味覚にして超高級食材——『マサカ茸』だ」

 俺は、リビングの黒板にマサカ茸の絵を描きながら説明を続ける。

「松茸と同等、いやそれ以上の圧倒的な旨味と香りを誇り、帝都の高級料亭では金貨数枚で取引される代物だ。こいつを山ほど乱獲して市場に卸せば、お前のソシャゲの借金(100万ルナ)も一発で返済できる」

「五円! 御縁! ハイッ! つまり、山に落ちている金貨を拾い集めるようなものですのね! わたくしのアイドルの才能(お賽銭箱型掃除機)が火を噴きますわォォッ!」

 リーザが、すでに黄金のドルマークを両目に浮かべてお賽銭箱をアイドリングさせている。

「さぁ、行くぞ。借金返済(スローライフ防衛)のための、極限のサバイバルだ」

     * * *

 ポポロ村から少し離れた、緑豊かなポポロ山の麓。

 そこは現在、綺麗に区画整理されたテントサイトやコテージが並ぶ、人気のレジャー施設『ポポロ山キャンプ&スキーリゾート』として開拓されていた。

「パァーンッ!!」

 俺たちが到着すると、小気味良い薪割りの音が響いてきた。

「……あら、いらっしゃい。リアン君にキャルル村長。今日は随分と大所帯ですわね」

 大きな丸太を見事な片手斧でカチ割り、額の汗を腕で拭いながら振り返ったのは——元・アバロン魔皇国の『氷魔将軍』にして、現在は脱サラしてこの山を管理する最強の農業女子、スアイであった。

 彼女はかつての露出度が高すぎるビキニアーマーを完全に捨て去り、『タローマン』製の機能性抜群なオーバーオールを着こなしている。首にはタオルを巻き、すっぴんに近い健康的な顔立ちには、大自然を満喫するガチキャンパーとしての充実感が満ち溢れていた。

「よう、スアイ。今日も精が出るな。……単刀直入に言う。マサカ茸狩りの許可が欲しい」

「マサカ茸? 構いませんけど……あそこは私の管理地ですから、入山料として通常は収益の7割をいただきますわよ?」

 スアイが、片手斧を肩に担ぎながら涼しい顔で条件を提示してくる。さすがは元魔軍の将軍、ビジネスの交渉も容赦がない。

「いや、5割(折半)で手を打ってくれ」

 俺は、後ろに控えていたキュララをスッと前に押し出した。

「その代わり、このゴッドチューバーの配信で、あんたのキャンプ場の宣伝を大々的にしてやる。PV(視聴率)が跳ね上がれば、天界からの予算も降りて、新しいサウナ施設を建てる資金になるはずだ」

「……ふふっ。相変わらず、交渉マリーシアが上手いですわね、リアン君。いいでしょう、商談成立ですわ。ただし、山は危険ですから遭難しても自己責任でよろしく頼みますわよ」

 スアイはニヤリと笑い、快く俺たちを山へと通してくれた。

     * * *

「わーお! リスナーのみんなぁ! 今日はポポロ山から『女神と行く! マサカ茸狩り生配信!』をお届けするよぉ!」

 キュララが自撮りドローンを飛ばし、元気に配信をスタートさせる。

『うおおお! ルチアナ様だ!』

『相変わらず美しすぎる!』

『赤スパ一万ルナ! 慰安旅行楽しんで!』

「おーほっほっほ! 下界の迷える子羊たち、ごきげんよう! 世界神ルチアナよ! あなたたちの浄財スパチャ、天界への寄付(借金返済)としてありがたく受け取ってあげるわぁ♡ もっと! もっと投げなさい!」

 ルチアナは、画面に向かって必死に投げ銭を要求し、愛想笑いを振りまいている。

(その寄付、全部月人アイカツの魔法石に消えたんだけどな……)

 俺たちは配信の裏で、黙々と山林を捜索した。

 マサカ茸は、松茸と同じくアカマツなどの根元に生える。俺の前世の知識と、エルフであるルナの『植物と対話する能力』のおかげで、捜索は思いのほか順調に進んだ。

「リアン君、あそこの木の根元に……あの子たちが『ここにいるよ』って言ってますわ」

「おっ、マジだ。でけぇな」

 落ち葉をかき分けると、そこには立派な笠を持った、香り高いマサカ茸が群生していた。

「五円! 御縁! ハイッ!! 吸い尽くしますのォォッ!」

 リーザが掃除機で枯れ葉ごとマサカ茸を吸引(収穫)し、あっという間にカゴはいっぱいになっていった。

「よし、午前中の収穫はこんなもんでいいだろう」

 俺は、ずっしりと重くなったカゴを見て頷いた。

「ちょうど昼時だし、少し休憩にするぞ。……俺が、採れたてのマサカ茸をその場で焼いてやる」

「「「おおおおっ!!」」」

 Sクラスの面々から、歓声が上がる。

 俺は持参していたキャンプ用の七輪を取り出し、炭火を熾した。

 採れたばかりのマサカ茸の石突きを丁寧に削り落とし、縦に手で割いて、網の上へと乗せる。

 ——ジジッ……ジュワァァァァ……。

 炭火の熱がキノコに通り始めると、表面にうっすらと汗(旨味の雫)が浮かび上がる。

 それと同時に、秋の森の香りを何十倍にも濃縮したような、松茸特有の暴力的なまでに芳醇な香りが、周囲一帯にフワァッと広がった。

「うわぁぁ……すっごくいい匂い……っ!」

 キャルルが、ウサギ耳を垂らしてヨダレを拭う。

「ゴクッ……これは、神界の宴で出される最高級品にも引けを取らない香りね……」

 ルチアナも、借金のことを忘れて網の上をガン見している。

「よし、焼き上がったぞ。軽く醤油草の汁と、レモンを絞って食え」

 俺が皿に取り分けると、腹を空かせたSクラスと駄女神が一斉にマサカ茸に食らいついた。

「「「いただきまーす!!」」」

 パクッ。

 シャクッ、と小気味良い歯ごたえ。

 そして次の瞬間、口の中いっぱいに広がる、強烈な旨味と圧倒的な香り。

「美味しいぃぃぃぃっ!!」

「なんという芳醇な味わい! これがマサカ茸……ッ!」

 クラウスが目を閉じ、大げさに天を仰ぐ。

「んんん〜っ! 神だよぉ! 配信見てるみんな、これ最高に美味しいよぉ!」

 俺も一つ口に放り込む。

(……うん、完璧だ。前世で扱っていた最高級の国産松茸と比べても、全く遜色ない。いや、魔力が含まれている分、旨味がさらに強烈だ)

 みんなでワイワイとマサカ茸を平らげ、持参していたおにぎりも完食し、大満足の昼食となった。

「ふぅ、食った食った。借金返済の労働とはいえ、たまにはこういうのも悪くないな」

 俺が温かいポポロ・コーヒーを啜りながら一息ついた、その時だった。

 ——ヒュオォォォォォォ……。

 突如として、ポポロ山に冷たい秋風が吹き抜けた。

 先ほどまで和気藹々としていた空気が、まるで『カメラのフィルターが切り替わったかのように』、急激に重く、シリアスなものへと変貌したのだ。

「……おい、どうした?」

 俺が違和感を覚えて顔を上げると。

 そこには、俯いたまま微動だにしないクラウスの姿があった。

「クラウス?」

 クラウスは、ゆっくりと顔を上げた。

 その瞳には、いつもの熱血騎士の光はなく、どこか冷徹で、理知的な光が宿っていた。

 彼は、かけてもいない『架空のメガネ』を中指でクイッと押し上げる仕草をすると、低く、重々しい声でこう呟いたのである。

「……皆、動くな」

「は?」

「まさか……。信じたくはないが、どうやらこの中に……『裏切り者』がいるようだ」

「……はぁっ!?」

 俺のツッコミも虚しく、クラウスのその一言を皮切りに、Sクラスの面々の様子が次々とおかしくなり始めた。

 俺たちは、完全に舐めていたのだ。

 この『マサカ茸』という食材が持つ、松茸の美味しさの裏に隠された『もう一つの真の効能』というものを。

第4話『慰安旅行(という名の強制労働)! マサカ茸狩りツアー開催』をお読みいただきありがとうございます!

ルチアナの限度額100万円の借金を返すため、リアンの指示でマサカ茸の乱獲ツアーがスタート!

元氷魔将軍スアイの「タローマン製オーバーオール」のガチキャンパー姿や、キュララの強かなゴッドチューブ配信など、ポポロ村の面々が相変わらずのたくましさを見せています。

そしてお昼ご飯に食べた絶品のマサカ茸。

しかし、マサカ茸の恐るべき効能(推理力が0.5倍増しになり、ミステリー小説の登場人物になりきってしまう)が発動してしまい……!?

クラウスの架空のメガネクイッ! から始まる、狂気の密室サスペンス(茶番)の幕開けです!

「スアイがすっかり農家にww」「マサカ茸うまそう」「クラウス何言ってんのw」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、スアイのキャンプ場のサウナ建設資金になります!

【ブックマーク】のご登録、感想コメントもいつでもお待ちしております! 次回、迷探偵たちの推理バトルをお楽しみに!

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