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EP 20

口臭地獄とゴッドチューブの伝説(大団円)

 神々の暴露大会と、宇宙崩壊の危機から一夜明けたポポロ村。

 村はいつものようにのどかな朝を迎え、小鳥のさえずりが響き渡っていたが――村長宅であるシェアハウスの換気扇からは、依然として『致死量のニンニク臭』が絶賛排出中であった。

「……うぅ……っ。はぁ……」

 ポポロ亭の座敷の隅。

 大宇宙管理局のトップである世界神オリンは、顔面に何重にも重ねた分厚い『魔導防臭マスク』を装着し、体育座りで完全に丸くなっていた。

「自業自得だろ。あんだけ大トロを食って暴露しまくれば、胃への負担も臭いも倍増するっての」

 俺――リアン・シンフォニアは、厨房から朝食の準備をしながら、哀れなハゲの神様を見下ろして冷たく言い放った。

 昨夜、俺がオリンの口に直接ぶち込んだ最悪の魔導野菜『ガーリッすりおろし』の威力は絶大だった。

 オリンが口を開こうとするたびに、彼自身の口臭(細胞が破壊されて怒り狂ったアリシン成分)が鼻を突き抜け、自らの異臭で白目を剥いて気絶しそうになるという地獄のループ。

 結果として、オリンは一言も喋れなくなり、銀河艦隊によるポポロ村へのカチコミはギリギリで回避されたのである。

「もごもご……(すまなかった、リアン君。君の機転がなければ、私は上司たちの逆鱗に触れ、宇宙ごと消滅させられていた……)」

 オリンが、マスク越しにテレパシーのような念話で謝罪してくる。

「別に気にしてねぇよ。俺は客に料理を出しただけだ」

「もごもご……(しかし、私の威厳は完全に地に落ちた。育毛剤の効果がないことまで宇宙全土にバレてしまったし、銀河神カケル君の怒りも買っている。……もう、私の神生は終わりだ)」

 オリンのハゲ上がった頭頂部には、昨夜のような七色の後光(確変演出)は一切なく、ただのくすんだ電球のように哀愁を漂わせていた。

「ふふふ……ははははっ! 何を落ち込んでいますの、オリン様!」

 そこへ、お賽銭箱型掃除機を抱え、目元に濃いクマを作ったリーザが、狂気じみた笑い声を上げながら座敷に飛び込んできた。

「見てくださいませ! 昨夜のゴッドチューブの最終リザルト(結果発表)ですのォォッ!」

 リーザがバァン! と机の上に叩きつけた『エンジェルすまーとふぉん』の画面を見て、俺は思わず目を見開いた。

「なっ……同接(同時接続者数)……5億人!?」

「そうですわ! 宇宙全土の暇を持て余した神々、魔族、獣人、人間が、オリン様の『確変ハゲ・大暴露特番』に釘付けになったんですの! その結果……一晩で集まったスーパーチャットの総額は、なんとルナミス帝国の国家予算10年分を軽く超えていますわ!!」

 リーザがヨダレを拭いながら、鼻息を荒くしてオリンに詰め寄る。

「オリン様! あなたは威厳と引き換えに、宇宙一の『撮れ高』を叩き出したんですの! これだけのPV(評価率)を稼ぎ出せば、銀河神への昇進に必要なポイントなんて、お釣りが来るくらい一瞬でクリアですわよ!」

「も、もごっ!?(な、なんだと!?)」

 オリンがガバッと顔を上げた。

「……マジか。炎上商法ここに極まれり、だな」

 俺は呆れて頭を掻いた。

 オリンは自らの黒歴史(ハゲと育毛剤)を晒し、上司へのセコい嫌がらせ(お茶に唾)を暴露した。しかし、そのあまりにも人間臭く、情けない姿が、宇宙全土の視聴者の『謎の同情と爆笑』を誘い、空前のバズを引き起こしてしまったのだ。

「ええ。その代わり、経済の爪痕もヤバいですけれどね」

 いつの間にか起きてきたルチアナが、ピンク色のジャージ姿でコーヒーをすすりながら、疲れた声で言った。

「ゴルド商会の育毛剤『漢達の頭皮戦線』は、株価が90%下落して紙切れ同然になりましたわ。その代わり、昨夜リアン君が使った『ガーリッ君』の消臭効果(物理的に口を塞ぐ)が注目されて、ニンニク農家の株がストップ高ですのよ」

「わたくしの『わナンバー(レンタカー)』の件も、なぜか『カグヤ様はSDGsシェアリングエコノミーの最先端を行くエコな女神!』と謎の好意的解釈をされて、レンタカー会社の株価が爆上がりしていますわ……」

 カグヤが、信者の盲目的な解釈に複雑な表情を浮かべている。

「ま、結果オーライってやつだな」

 俺はフライパンを煽りながら、ベーコンと目玉焼きを皿に盛りつけた。

「お前らの横領や裏垢の件も、オリンの炎上がデカすぎて完全に霞んでるしな。……で、そのオリンの処分はどうなったんだ?」

 俺の問いに、ヴァルキュリアが静かに口を開いた。

「先ほど、創造神ユニーバ様と銀河神カケル様から、正式な通達がありました」

 ヴァルキュリアが、羊皮紙のスクロールを広げて読み上げる。

『――世界神オリンの暴挙は、神の品位を著しく汚すものであり、万死に値する。……しかし、昨夜の配信が叩き出した歴史的PVにより、大宇宙管理局の今期の予算目標が一日で達成されてしまったことは、高く評価せざるを得ない』

「もごっ!(おおっ!)」

 オリンの顔に希望の光が差す。

『よって、星の消滅は免除とする。ただし、オリンには罰として、銀河神への昇進面接の無期限延期、ならびに「大宇宙管理局・全トイレの100年間手洗い清掃」を命ずる。……追伸。二度と俺のお茶に唾を入れるな。次やったら本当に次元主砲をぶち込む(カケル)』

「も、もごごごご……(100年間のトイレ掃除……! だが、生き延びた! 私は、神として生き延びたのだ!)」

 オリンは涙を流しながら、天に向かって祈りを捧げた。

「わーお! 終わり良ければすべてヨシだねぇ!」

 キュララが、ニコニコと笑いながら自撮りドローンを片付けている。

「リスナーのみんなも大満足みたいだし、ポポロ村の特別予算もガッポリ降りるし、ハッピーエンドだぁ!」

「ハッピーエンド……ノブリス・オブリージュの精神が、大宇宙の経済を回したというのか……ッ!」

 クラウスがまたしても意味不明な感動の涙を流している。

「ルチアナ様! これでわたくしたちも、推し活とレンタカーの生活を維持できますわね!」

「ええ! 月人君のファンクラブ、無事に更新できそうですわ!」

 ……本当に、どうしようもない神々である。

 自らの威厳を捨ててPVを稼ぐ上司と、予算を推し活に溶かす部下たち。

 だが、この破天荒で人間臭い連中だからこそ、アナステシア世界は今日も平和(?)に回っているのかもしれない。

「もごもごっ!(リアン君! 今回は本当に世話になった! ポポロ村は最高の村だ!)」

 オリンが、俺に向かって深々と頭を下げた。

「あぁ。次はもっと普通の飯を食いに来な。……ただし、ガーリック抜きでな」

 俺が鼻で笑ってベーコンエッグをテーブルに並べると、Sクラスの面々と神々が、一斉に朝食に向かって群がった。

 神々の暴露大会と確変ハゲの騒動。

 リーザの『ふ〜ん石』が引き寄せた一連の喜劇は、強烈なニンニク臭と共に、ゴッドチューブの伝説として宇宙の歴史に深く刻み込まれることとなったのである。

 ――そして。

「もぐもぐ……リアンさーん、おかわりください!」

 一人だけ、昨夜の騒動などどこ吹く風で、三杯目のご飯をかき込んでいる見習い女神リリスの姿が、そこにはあったのだった。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

『神々の暴露大会と確変ハゲの悲劇(ポポロ村視察編)』、無事に完結いたしました。

リーザの『ふ〜ん石』から始まったピタゴラスイッチ、そしてオリン様のパチンコ確変(レインボー演出)からの大暴露はいかがだったでしょうか?(笑)

最終的に全てを物理で解決したリアンの『ガーリッすりおろし』や、神々のセコすぎる裏事情など、コメディ全振りのエピソードを楽しんでいただけていれば作者として望外の喜びです。

「面白かった!」「オリン様ドンマイ!」「ガーリッ君ウザすぎw」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、今後の執筆の大きなモチベーションになります!

また、【ブックマーク】への登録や、感想コメントもいつでもお待ちしております!

次回からも、リアンとSクラスの面々(+神様たち)のドタバタな日常と美味しい料理をお届けしていきますので、引き続き『アナステシア世界』をよろしくお願いいたします!

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