表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
339/368

EP 17

女神たちの黒歴史(巻き添えと確変の絶対防御)

 ポポロ亭の宴会場は、もはや神聖な視察の場などではなく、宇宙全土に配信される『神々の公開処刑場(ゴシップ特番)』と化していた。

「あぁぁぁぁぁっ!! わたくしの、わたくしの威厳がぁぁぁっ!!」

「なんてことを暴露してくれますのハゲェェェェェッ!!!!」

 大宇宙管理局のリーダー・オリンの口から放たれた、無慈悲な真実。

 ルチアナの『クレカ残高一千円(推し活への横領)』と、カグヤの『わナンバーの高級レンタカー&国宝質入れ事件』。

 二柱の女神は、数千年にわたって築き上げてきた「慈悲深く高貴な女神」というブランディングを、たった数十秒のハゲの絶叫によって完全に粉砕されたのだ。

『腹痛いwww 神様も金欠なんだなww』

『カグヤ様の「タロー・ヤマダ」は草。偽名が雑すぎるww』

『ルチアナの推し活に親近感湧いたわ。赤スパ投げとく』

『【悲報】宇宙の予算、アイドルとレンタカーに消える』

 キュララが操る自撮りドローンのカメラが、頭を抱えてのたうち回る二柱の女神を克明に映し出している。

 ゴッドチューブの同接(同時接続者数)は一億人を突破し、コメント欄の流れるスピードはもはや肉眼で追えないレベル(滝行)に達していた。

「五円! 御縁! ハイッ! スパチャの勢いが止まりませんわ! オリン様の口は、まさに宇宙一のエンターテインメント(集金マシーン)ですのォォッ!」

 リーザが、お賽銭箱型掃除機のディスプレイに表示される莫大な金額を見て、ヨダレを撒き散らしながらタップダンスを踊っている。

「……おい、リアン」

 厨房の入り口で、クラウスが冷や汗をダラダラと流しながら俺の肩を掴んだ。

「お、オリン様の様子が……さらにヤバいことになっているぞ! あの魚(暴露鯛)、まだ効果が切れないのか!?」

「切れるわけねぇだろ」

 俺は腕を組み、ニヤリと笑いながら座敷の上座を見据えた。

「俺が出したのは、暴露鯛の成分が一番濃縮されてる『腹身の大トロ』だ。消化管に吸収され尽くすまで、あのハゲの暴露衝動は絶対に止まらない。……それに、ふ〜ん石(負運)が導くコメディの神様が、あいつの暴走を全力で後押ししてやがる」

 その言葉の通りだった。

 オリンの頭頂部ハゲは、依然としてパチンコの激アツ確定音『キュイイーン!』という幻聴と共に、七色の虹色レインボーに発光し続けている。

 脳内麻薬がドバドバと分泌されているオリンの目は、血走り、完全にイッていた。

「ハァ……ハァ……! まだだ! 吐き出したりない……! もっとだ! 己の部下たちの恥部を、宇宙の果てまで晒し出さねば、この胸のつかえは取れんのだぁぁぁっ!」

「お、オリン様! もうやめてくださいませ! これ以上は本当に、天界の品位が……っ!」

 見かねた天使長ヴァルキュリアが、青ざめた顔でオリンを止めに入ろうとした。

 彼女は真面目で規律を重んじる性格だ。この惨状をこれ以上放置すれば、自分が管理する天使族の士気にも関わる。

 だが、確変レインボー状態のオリンの視線が、ギロリとヴァルキュリアを捉えた。

「ヴァルキュリア君!!」

「ひっ!?」

 ビシィッ! と指を差され、歴戦の天使長が肩をビクンと跳ねさせる。

「君は『規律が第一』と、いつもルチアナ君に正論をぶつけて偉そうに説教をしていますが……! その実、ルチアナ君が執筆してコミケで売り捌いている泥沼の同人恋愛小説『聖獣機神ガオガオンの社内恋愛事情は辛いよ』を、こっそり全巻フルコンプで集めていますね!?」

「な、ななななっ!?」

 ヴァルキュリアの顔が、一瞬にして茹でダコのように真っ赤に染まった。

「しかも! 毎晩ベッドの中でそれを読みながら、『ああ……朱雀と青龍のドロドロの三角関係……尊い……っ! 私もこんな恋愛をしてみたい……!』と、枕を抱きしめて身悶えしているのを、私は知っているぞぉぉぉぉっ!!」

『天使長、腐女子だったwwwwwwww』

『ガオガオンの同人誌とかニッチすぎるだろww』

『規律(笑) 尊い(真実)』

『ヴァルキュリア様、好感度爆上がりだわww』

「あぁぁぁぁぁぁっ!! 違うのです! あれは、敵(ルチアナ様)の生態を知るための、あくまで学術的な資料として……ッ!!」

 ヴァルキュリアは両手で顔を覆い、バタッとその場に倒れ込んで完全沈黙(社会的な死)を迎えた。

「まだだ!! 終わらんぞルチアナ君、カグヤ君!!」

 オリンの砲火は再び、二柱の駄女神へと向かう。

「ルチアナ君! 君が『聖獣機神ガオガオン』の作詞作曲をしたとドヤ顔で言っていますが、あれは単に『月人君アイドルに歌わせたいから、適当に3分で作ったテキトーな曲』ですね!?」

「ぎゃああああ! 月人君のファンクラブ会員(ガチ勢)に殺されるぅぅっ!」

「そしてカグヤ君! 君は表向きはルチアナ君と仲良くやっていますが……裏垢(アカウント名:@月の世界の暗黒姫)で、『あのピンクジャージのオバサン、また月人君に擦り寄ってる。マジ無理。消えろ』と、毎日100件以上の誹謗中傷を書き込んでいるのを知っているぞ!!」

「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? な、なぜ裏垢のパスワードまでご存知なんですのこのクソハゲはァァァッ!?」

 神の権能(全知全能)を、まさか部下の裏垢監視とネトストにフル活用していたとは。

 オリンの小者っぷりも大概だが、暴露された側のダメージは計り知れない。

『裏垢での誹謗中傷はエグいwww』

『カグヤ様、性格真っ黒じゃんww』

『女神同士の陰湿なネットいじめwww』

「…………」

「…………」

 プツン。

 プツン、プツン。

 ルチアナとカグヤの脳内で、何かが決定的に『切れる』音がした。

 二柱の女神は、ゆっくりと立ち上がった。

 先ほどまでの「誤魔化そう」という焦りや、恥じらいはもう無い。

 彼女たちの顔は、一切の感情を失った能面のように冷え切り、その両目からはハイライトが完全に消え去っていた。

「……殺す」

 ルチアナのピンクの芋ジャージから、漆黒のドス黒いオーラが立ち昇り始める。

「……ええ。この宇宙から、あのピカピカ光る汚物を、完全に消滅させますわ」

 カグヤの周囲にも、月の裏側のような冷たく暗い、殺意の魔力が渦巻き始めた。

「お、おい! まずいぞリアン!」

 クラウスが顔面を蒼白にして叫んだ。

「二柱の女神が、完全に正気を失った! このままではポポロ村どころか、この大陸全土が神の怒り(八つ当たり)で消し飛ぶぞ!」

「チッ……さすがにやりすぎたか」

 俺も舌打ちをし、マグナギアの起動準備に入ろうとした。いくらなんでも、女神二人が本気でブチギレて魔法をぶっ放せば、ポポロ亭は跡形もなく消え去ってしまう。

 ――だが。

 女神たちの『本気の殺意』を前にしても、七色に光るハゲ(オリン)は、一切の恐怖を感じていなかった。

「フハハハハハッ! 怒ったか、ポンコツ共め!」

 オリンが両手を広げ、不敵な笑みを浮かべる。

「くらえ! 世界神・裁きの鉄槌ジャッジメント・ストライク!」

「消えなさい! 月光の粛清ルナティック・パニッシャー!」

 ドゴォォォォォォォォンッ!!!!

 ルチアナの手から放たれた極大の光の柱と、カグヤから放たれた漆黒のレーザーが、オリンの体を容赦なく直撃した。

 ポポロ亭の座敷が爆炎に包まれ、強烈な衝撃波が周囲のちゃぶ台や食器を吹き飛ばす。

「や、やりやがった! あのアホ女神ども、自分たちの上司を本気で殺しに行きやがった!」

 俺は風圧を腕で防ぎながら、土煙の向こう側を凝視した。

 いくら大宇宙のトップとはいえ、無防備な状態で女神二人の本気魔法を食らえば、タダでは済まないはずだ。

 しかし。

 煙が晴れた後、そこに立っていた光景に、俺たちは言葉を失った。

「……な、無傷……だと!?」

 クラウスが信じられないというように目を見開いた。

 オリンは、ボロボロの貸し出しジャージ姿のまま、傷一つ負わずに立っていたのだ。

 彼の体を守っていたのは、魔法の障壁でも、神の結界でもない。

 彼の頭頂部から放たれる『七色レインボーの光』が、強烈なオーラとなって全身を包み込み、ルチアナとカグヤの魔法を完全に『弾き返して』いたのである。

「ば、馬鹿な……! わたくしたちのフルパワーの魔法が、ハゲの光(後光)に弾かれた!?」

 ルチアナが愕然と声を上げる。

「フハハハハハッ! 愚かな部下たちよ!」

 オリンが、神々しい(しかしまん丸のハゲの)頭を揺らしながら高笑いした。

「暴露鯛の力と、私の内なるカタルシスが融合し、今、私の神気は過去最高の『確変状態ジャックポット』に突入しているのだ! この七色の『絶対防御オーラ(無敵時間)』の前には、いかなる物理攻撃も魔法も通用せん!」

「か、確変の絶対防御だと……!?」

 俺は戦慄した。

 パチンコにおける『確定演出レインボー』は、絶対に外れない、つまり『いかなる妨害も受け付けない無敵状態』を意味する。

 リーザの『ふ〜ん石』が引き起こしたコメディの法則が、オリンの体を一時的な『無敵のギャグキャラクター』へと昇華させてしまったのだ。

「ふふふ……はははははっ!」

 攻撃を無効化され、絶望するルチアナとカグヤを見下ろし、オリンの血走った目が、さらなる『高み』へと向けられた。

「下っ端の暴露は、これくらいで十分だろう……!」

 オリンが、ドローンのカメラを鷲掴みにし、レンズの奥――宇宙の彼方にいる『絶対的な存在』に向かって、ギラギラと笑いかけた。

「さて……! 今この配信を見ているのだろう!? 大宇宙管理局の、さらに上層部にいる……お偉方どもよぉぉっ!!」

「……っ!! な、なにを言ってるの、あのハゲ……!?」

 ルチアナが、サーッと血の気を引かせた。

 俺も、背筋に強烈な悪寒が走った。

 オリンの視線の先。

 それは、世界神である彼らよりもさらに上の次元。

 銀河を束ねる『銀河神』、そして宇宙そのものを創造した『創造神』。

 触れてはならない、絶対に怒らせてはならない『聖域トップ・オブ・トップ』への宣戦布告。

「や、やめろオリン様! それ以上はダメですの!」

「世界が! アナステシア世界が物理的に消滅しますわ!」

 ルチアナとカグヤが、己の黒歴史の怒りすら忘れ、本気で世界(と自分たちの命)を守るためにオリンの足元にすがりつく。

 だが、七色に輝く確変ハゲの暴走ジャックポットは、もう誰にも止められなかった。

 神々の暴露大会は、いよいよ『宇宙崩壊』のカウントダウンへと、その狂気のアクセルを踏み込んだのである。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ