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EP 8

紅蓮の戦乙女ホームレスの絶叫と、超魔導合体ガッコウガー!

その頃、ルナミス学園の第一校舎の裏庭(目立たない茂みの奥)では。

一人のうら若き女性が、携帯用の焚き火台の前にしゃがみ込み、恍惚とした表情を浮かべていた。

「ハハッ……! ついに、ついに引き当てたぞ! 帝国軍の最高級プレミアム糧食【EPa型】の余剰品!! さらにデザートには、焚き火でじっくりと黄金色に炙ったマシュマロと、熱々のコーンスープだ! これ以上の幸せ(ディナー)が、この世にあるかよ!!」

彼女の名は、ダイヤ・マーキス。

燃えるような真紅のポニーテールに、抜群のスタイルを包み込む紅蓮の装甲【クリムゾンアーマー】。

かつて裏社会で『紅蓮の戦乙女』と恐れられた元・超一流の賞金稼ぎであり、現在はSクラスの担任教師、兼、学園の用務員である。

彼女は勇者の血を引く大貴族の令嬢でありながら、重火器の弾薬代とメンテナンス費用で常に【極限の自転車操業】に陥っており、宿代すらケチって学園の裏庭でテント生活ホームレスを送るという、とんでもなくたくましい(悲惨な)生態をしていた。

「さぁ、冷めないうちにマシュマロを……ん?」

ダイヤが、トロトロに溶けたマシュマロを口に運ぼうとした、まさにその瞬間。

ズズズズズズズズッ……!!

大地が、激しいマグニチュードを伴って大きく揺れ始めた。

「な、なんだ!? 敵襲か!? 地震か!?」

ダイヤが咄嗟に【魔導式サブマシンガン】を構え、周囲を警戒する。

すると、グラウンドの方角から、見上げるほどに巨大な『漆黒の化け物(アビス怪人)』が姿を現したではないか。

「おいおい、なんだあのデカブツは! 50メートルはあるぞ! 弾薬コストがいくらあっても足りねぇ……って、うおわあああっ!?」

ドゴォォォォォォンッ!!

突如として、ダイヤの目の前にある『第一校舎』が、凄まじい地響きと共に、基礎ごと大地から浮き上がり始めたのだ。

「ああっ!? わたしのマシュマロが土まみれに! テ、テントが!! わたしのテントが校舎の風圧で吹き飛ばされたぁぁぁっ!?」

ダイヤは、頭を抱えて絶叫した。

だが、悲劇はそれだけでは終わらない。

第一校舎、第二校舎、大時計塔、そして体育館。学園の主要な建築物たちが、ルナの放った強烈なエメラルドグリーンの魔力光のネットワークに包まれ、まるで意思を持っているかのように空中で【組み替わり】を始めたのである。

「なっ……ななななっ!?」

体育館がパカッと割れて巨大な『胸部装甲』となり、第一校舎と第二校舎が『両腕』と『両脚』を形成する。

そして、ルナミス学園のシンボルである大時計塔が、ロボットの『頭部』としてカシャンッと合体した。

それを見たダイヤは、弾き飛ばされた戦闘糧食(EPa型)を抱きしめながら、血の涙を流して叫んだ。

「が、学校がーーっ!! わたしの職場(学校)があああああっ!!」

学園が壊れれば、彼女の「Sクラス担任兼用務員」という数少ない安定収入(給料)が完全に断たれてしまう。

極度の貧困と純情(?)を併せ持つ戦乙女は、己の生活を守るために地を蹴った。

「ふざけんな! 給料日前に職場を失ってたまるかぁぁっ!!」

ダイヤは、ユニークスキル【ウェポンズマスター】の圧倒的な身体能力を全開にし、ワイヤー付きのアンカーを射出。空中で合体しつつある第一校舎(右腕部分)の窓から、強引に内部へと突入した。

* * *

一方、その第一校舎の内部——Sクラスの拠点『タコ部屋』。

そこは今、とんでもない事態に陥っていた。

「……おいルナ。なんだこれは」

リアンが、呆然としながら周囲を見回す。

つい先ほどまで、ボロい長机とコタツが置かれていたタコ部屋は、壁や床がメタリックな装甲板へと反転し、無数の魔導ホログラムモニターが展開される【超絶ハイテクなメインコックピット(操縦席)】へと変貌を遂げていたのだ。

「ふふっ♡ これが、初代学園長が密かに遺した究極の防衛システム……超魔導合体兵器のブリッジですわ!」

ルナが、誇らしげに胸を張る。

「学園全体が巨大ロボットになるなんて、初耳だよーっ!?」

キャルルがウサ耳を逆立てて興奮し、クラウスが「素晴らしい! これならあの巨大魔物とも真っ向からやり合える!」と魔剣を構える。

「さぁ、リアン君! 貴方がこのガッコウガーの【メインパイロット】ですわ! さっさと操縦桿を——」

「バカ野郎」

ルナの提案を、リアンは一刀両断に切り捨てた。

「俺は経営者(CFO)であって、パイロットじゃねぇ。それに、俺一人でこんなデカブツを動かせば、魔力リソースが尽きて確実に赤字になる。……操縦は、それぞれの適材適所に【アウトソーシング(丸投げ)】するぞ」

リアンは、決して一人で無双はしない。

己の最も得意とする『盤面の指揮』に徹するため、コックピットの中央にある、一番偉そうな席(元・リアンの帳簿用デスク)にどっかりと腰を下ろした。

「クラウス! お前は右腕(近接戦闘)の操縦桿を握れ! キャルルは両脚のステップ(フットワーク)を担当しろ!」

「了解した、リアン!」

「任せて! ウサギのキック、ロボットでも見せてあげる!」

「ルナはメインエンジン(魔力供給)だ! リーザは……お前はみかん箱を持って、敵から魔力を吸い取ってこっちの予備電源に回せ!」

「も、燃え尽きるまで働きますわぁっ!!」

「キュララ! お前はカメラを回して、この戦いを全世界に配信(PR)しろ! 広告収入で、このロボットの修繕費を稼ぐんだよ!」

「おっけー! リスナーのみんな、スパチャの準備はいーい!?」

全員が完璧な配置につき、巨大ロボットの機動音が「ブゥゥゥンッ!」と高鳴る。

バンッ!!

その時、タコ部屋のドアが乱暴に蹴り開けられた。

「てめぇらァァァッ!! わたしのテントと晩飯を台無しにしやがって、一体何をして——」

怒り心頭で怒鳴り込んできたダイヤ・マーキスであったが、コックピットと化したタコ部屋の異様な光景を見て、ピタッと固まった。

「……あ? なんだお前ら、このSFチックな空間は」

「おお、ダイヤ先生か。ちょうどいいところに来た」

リアンが、デスクから振り返ってニヤリと笑った。

火器管制シューティングの担当が空いてたんだ。……先生のユニークスキル【ウェポンズマスター】なら、このロボットの隠し武装ミサイルやビームの最適解も、一瞬で把握できるだろ?」

「はぁ!? なんでわたしがタダ働きで、こんな馬鹿デカいロボットの射撃手を……」

特別残業代ボーナスを出す。……それに、このデカブツを無事に着陸させねぇと、学園は半壊して、あんたの『用務員の給料』も無くなるぞ?」

「……ッ!! やる! やらせろ!! 悪党(怪人)をぶっ飛ばして、残業代と正義を同時に稼ぐ! 完璧なビジネスだ!!」

貧乏と金(給料)という言葉に極めて弱いダイヤは、即座に手近なコンソールにしがみつき、恐るべき適応能力で学園防衛兵器の火器管制システムを掌握し始めた。

これにて、Sクラス&担任による、最強の【防衛陣形チームワーク】が完成したのである。

* * *

一方、グラウンド。

巨大化を果たし、勝利を確信していたアビス怪人は、目の前で立ち上がった『自分と同じサイズの巨大な建造物ロボット』を前に、完全にフリーズしていた。

『……ハ?』

アビス怪人は、巨大な目をしばたかせた。

『な、なんだアレは……。学校が、学校が合体してロボットになった……だと!? バ、バカな! 人間ごときが、そんな超技術を……!?』

ズシンッ……! ズシンッ……!

巨大な学園ロボットが、大地を揺らしながらアビス怪人の真正面に立ちはだかる。

その時計塔(頭部)の目が、ピコーン! と眩く発光した。

コックピットのリアンが、マイクのスイッチを入れ、グラウンド中に響き渡る大音量で、冷徹に、そして最高にカッコよく宣言する。

「お待たせしたな、不良債権(アビス怪人)。……これより、Sクラスによる【強制執行】を開始する」

リアンは、コンソールの上に足をドンッと乗せ、不敵な笑みを浮かべた。

「超魔導合体……『ガッコウガー』。変形完了だ!!」

『……フ、フザケルナァァァァァッ!! そんなオモチャ(ハリボテ)で、この俺様とやり合おうというのかァァァッ!!』

アビス怪人が、焦りと恐怖を誤魔化すように、巨大な触手を振り上げて咆哮する。

「オモチャかどうかは、身をもって味わいな。……いくぞお前ら! Sクラスの、特大の決算報告バトルだ!!」

「「「「「「おおおおおおおおっ!!!!」」」」」」

巨大化した深淵の化け物と、学校が合体したトンデモ巨大ロボット。

なろう系史上最もスケールが狂った、しかし最高に胸熱な巨大戦が、今ここに幕を開けたのである!

読んでいただきありがとうございます。

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