EP 29
召喚(大)空丸降臨! 100ロックオン・プラズマ砲の完全論破
「う、動け……! 動けえぇぇッ!! 私の腕よ、足よ!! 私は神に選ばれた勇者なのだぞ!!」
ポポロ村の広場。
『Love & Money』の理不尽な強制徴収によって、ワイズから振り込まれた莫大なステータス(金)を1ミリ残らずリーザのお賽銭箱に吸い取られたゼロスは、石畳の上で無様に這いつくばっていた。
元の「一般兵以下の貧弱なステータス」に戻った彼にとって、神界からリースした最高級品である【純度100%のオリハルコン製重装甲】は、自らを押し潰す鉄の棺桶でしかない。
歯を食いしばり、顔を真っ赤にして立ち上がろうとするが、重厚な白銀の鎧はピクリとも動かない。
その姿は、資金繰りがショートして身動きが取れなくなった倒産企業の社長そのものであった。
「……見苦しいな。己の身の丈に合わない資本(装備)を背負い込んだ末路がこれか」
リアンは、足元でミジメに這いつくばるゼロスを見下ろし、呆れたようにため息をついた。
「ま、待て! ガキ……いや、リアン君! 話せば分かる! 金ならある! リーザ君に吸い取られた分以外にも、神界の口座にはまだ少し残高が……!」
「黙れ。テメェらみたいな『命を数字としか見ないゲス』と交渉する気は一切ねぇ。……それに、お前の直属の上司は、今頃破産寸前で胃に穴が開いてるはずだぜ?」
リアンが冷たく言い放つ。
事実、神界の第一会議室では、炎上神ワイズがモニターの前で「俺の予算があぁぁっ!」と頭を抱え、泡を吹いて発狂していた。
「キャルルの村に火をつけようとした落とし前だ。……その偽物の強さごと、残党まとめてチリになれ」
リアンは右手を天高く掲げ、自身の魔力を極限まで練り上げた。
タコ部屋でルチアナからインサイダー取引(神託)によって授けられた、最強のカード(大)のロックを解除する。
「——来い。召喚(大)、【空丸】ッ!!」
ゴゴゴゴゴゴォォォォォォォッ!!
リアンの声に呼応し、ポポロ村の上空を覆っていた分厚い雲が、禍々しい紫電の嵐を伴って巨大な渦を巻き始めた。
大気が震え、空間そのものが軋むような異音が鳴り響く。
「な、なんだ!? 空から……何かが来るッ!?」
クラウスが、空を見上げて驚愕の声を上げる。
雲の渦の中心から、金属的な重低音と共に姿を現したのは——全長数十メートルに及ぶ、漆黒の流線型をした『巨大な機械竜』であった。
全身を覆う特殊合金の装甲。魔力で稼働する巨大なスラスター。そして、口の奥で不気味に青白く発光する極大のエネルギー炉。
ファンタジー世界に突如として顕現した、現代の戦略兵器の極致。
『ギギ……ギュォォォォォンッ!!』
機械竜・空丸が、電子音の混じった咆哮を上げる。
その圧倒的な質量と威圧感に、広場の端で生き残っていた数十体の魔獣の残党たちが、恐怖で腰を抜かし、完全に戦意を喪失した。
「ヒィィィッ!? ま、魔獣!? いや、ゴーレム!? ワイズ様、あれは一体何なのですかァァッ!?」
動けないゼロスが、涙と鼻水を垂らしながら絶叫する。
* * *
「な……んだよ、あれ……」
神界のモニター越しにそれを見ていたワイズは、完全に思考が停止していた。
彼が契約しているゴッドチューブの『システム』が、必死に空丸のステータスをスキャンしようとするが、モニターには【測定不能】の赤い文字が乱舞するだけである。
「ルチアナのババアが創った世界に、あんなオーバーテクノロジーの兵器が存在するはずがねぇ……! どこの馬鹿が、こんなチートをガキに渡しやがったんだよ!!」
ワイズは、ルチアナが「裏ルート」で直接戦力を付与したことに気づき、ギリッと歯を食いしばった。だが、後の祭りである。
* * *
「……空丸。目標、眼下のクズ勇者と、森に隠れている魔獣の残党すべて」
リアンが冷徹に指示を出すと、空丸の漆黒の装甲がカシャカシャとスライドし、全身から無数の『砲門』が展開された。
空丸の機械の瞳が、赤いレーザー光線を放ち、地上にいる敵を次々と補足していく。
『ピピッ、ピピピッ……。マルチロックオン、開始。……ターゲット、100体、補足完了』
リアンの脳内に、空丸からの機械的なシステム音声が響く。
「……フルバースト(一斉掃射)だ。消し飛べ」
リアンが静かに右手を振り下ろした。
その瞬間。
『ギュィィィィィィィィンッ!!!!』
空丸の全身の砲門、そして大きく開かれた機械の顎から、極限まで圧縮された青白い『プラズマエネルギー』が、夜の闇を完全に吹き飛ばすほどの閃光と共に発射された。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!???」
ポポロ村の広場と、隣接する原生林に、無数の極太レーザーの雨が降り注ぐ。
それはもはや戦闘ではなく、一方的な『解体作業(蹂躙)』であった。
森に潜んでいた残党の魔獣たちは、逃げる間もなくプラズマの直撃を受け、悲鳴を上げる暇すらなく文字通り「チリ一つ残さず」蒸発していく。
そして、広場の中央でゼロスに直撃した最大のプラズマ砲は、神界の最高級アイテムである【純度100%のオリハルコン製重装甲】を、まるでプラスチックのおもちゃのようにドロドロに溶かしていった。
「あ、あ、あああぁぁぁ……っ、私の、私の最強の装備がぁぁぁっ!! ワイズ様ァァァッ!!」
数千度の超高温プラズマが、ゼロスの鎧と剣を液状化させ、地面の石畳ごと蒸発させていく。
あまりの光と熱に、クラウスやキャルルたちも思わず目を細め、腕で顔を庇った。
数十秒後。
空丸のプラズマ砲の掃射が終わり、砲身からシュゥゥゥと冷却用の白い蒸気が吹き出す。
ポポロ村の広場を包んでいた土煙とプラズマの残滓が、夜風に吹かれてゆっくりと晴れていった。
「……さて、焼き加減はどうかな」
リアンが前世のスーシェフの顔つきで、クレーターと化した広場の中央へと歩み寄る。
「う……あ……」
そこには、オリハルコンの鎧を完全に溶かされ、なぜか奇跡的に【白い布のパンツ一丁】だけになったゼロス・ディバインが、全身を真っ黒に焦がした状態で倒れ伏していた。
自慢の金髪はチリチリのアフロヘアーになり、あれほど輝いていた白い歯は折れ、白目を剥いて完全に気絶している。
命だけは助かったようだが(リアンが意図的に威力を調整したのだ)、勇者としての威厳も、神に選ばれたプライドも、すべてが完膚なきまでにへし折られた無様な姿であった。
「……よし。極上の『ウェルダン』だ」
リアンは、白焦げのパンイチ勇者の前で、フッと冷徹な笑みを浮かべた。
上空では、任務を終えた巨大な空丸が、リアンに向けてゆっくりと首を垂れている。
絶対的な資金力に依存した炎上神のやらせ台本は、極貧アイドルの強欲と、新たなる召喚獣(大量破壊兵器)の圧倒的な暴力によって、完全に粉砕されたのである。
「これで、俺たちのシマを荒らした不良債権の処理は完了だ」
リアンは、空に浮かぶ『神格カメラ(ドローン)』——いまだにポポロ村の惨状(やらせの失敗)を配信し続けているゴッドチューブのレンズに向かって、冷たい視線を向けた。
「おい、画面の向こうで震えてる『三流のプロデューサー(炎上神)』」
リアンは、真っ黒焦げのゼロスを指差し、悪魔のような笑みで宣告した。
「お前の用意した『悲劇』のセットは、俺たちが最高の『喜劇』に書き換えさせてもらったぜ。……せいぜい、低評価の嵐と大赤字に震えて眠りな」
それは、神に対する完全な勝利宣言。
炎上神ワイズの理不尽な企みは、Sクラスのえげつない盤外戦術と圧倒的な火力の前に、完璧なまでの『大赤字決算』を迎えたのである。
読んでいただきありがとうございます。
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