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EP 28

極貧アイドルの強欲ステージと、課金資金の強制吸い上げ(差し押さえ)

「……差し押さえ(横取り)だと? ハッ! 貧乏人の負け惜しみも大概にしろ!」

ポポロ村の広場。

白銀のオリハルコン鎧に身を包み、膨大な『黄金のオーラ(課金ステータス)』を立ち昇らせるゼロスは、リアンの言葉を鼻で笑い飛ばした。

「私のユニークスキル『マネー』は、神界のシステムと直結している! 炎上神ワイズ様の無限の資金力がある限り、私のステータスは絶対に揺るがない! それを横取りするだと? そんなことができるわけ——」

「できるんだよ。……俺たちのタコ部屋が誇る、宇宙一『強欲』なアイドルのバグを使えばな」

リアンが指を鳴らす。

それを合図に、エンジ色の芋ジャージに健康サンダルを履いた人魚姫・リーザが、みかんステージの上でマイクを構えた。

「ゼロスさん、と言いましたわね? 貴方のような『薄っぺらいステータス』で虚勢を張る男、私は大嫌いですの」

リーザは、その可愛らしい顔に、ぞっとするほど冷酷で、そして底なしの『強欲』を宿した瞳を向けた。

「お金というものは、パンの耳をかじり、スーパーの半額シールを巡って血みどろの争いを勝ち抜いた者にのみ宿る、神聖な輝き! 貴方のように、神からタダで振り込まれたおチートでイキっている成金に……アイドルの集客力バグの恐ろしさを教えて差し上げますわ!!」

リーザが天にマイクを突き上げる。

「ミュージック、スタート!! 『Love & Money』!!」

キュイィィィィィンッ!!

キャルルとルナが操作する魔導スピーカーから、ポップで暴力的なほどに明るいイントロが広場に響き渡る。

【朝に目覚ましが鳴ったわ(ジリリリ!)】

【私はまだ眠いわ(おはよー!)】

リーザがステップを踏み、歌い始めた瞬間。

彼女のユニークスキル『貧乏神』が、完全に狂ったベクトルで発動した。

周囲のありとあらゆるリソース(時間、視線、心、そして金)を強制的に吸い尽くす、絶対的なアイドルの引力ブラックホール

「な、なんだ!? 身体が……勝手に音楽に……!?」

ゼロスの身体がビクッと硬直する。剣を振り下ろそうとしていた腕が、まるでアイドルのライブでサイリウムを振るかのように、不自然なリズムを刻み始めたのだ。

【今日も私の為に世界が動く(まわって!まわって!)】

【全て上手くいくわ(絶対!)】

【愛も富も一つの物(どっちもちょーだい!)】

【ダイヤが欲しい♪ 土地も欲しい♪(Want You! Want You!)】

「さあ! ダーリン(ATM)! 貴方のとキャッシュで、私を生かしてちょうだい!!」

リーザがマイクを客席ゼロスに向け、バチンッと極上のウインクを飛ばす。

その瞬間であった。

『チャリィィィィィン!!』

ゼロスを包み込んでいた『黄金のオーラ(課金ステータス)』が、突如としてパラパラと物理的な『金貨スパチャ』の形に変換され、宙を舞い始めたのだ。

そしてその金貨の群れは、まるで巨大な掃除機に吸い込まれるかのように、リーザの足元に置かれた『お賽銭箱(段ボール)』の中へとズビズビと吸い込まれていく。

「なっ!? ば、馬鹿な!? 私のオーラ(ステータス)が……!!」

ゼロスが驚愕に目を見開く。

【世界中が私の為に愛を叫ぶ(まわって!まわって!)】

【全部抱きしめるわ(最強!)】

【ダイヤも株も♪ 土地も愛も♪(All Need! All Need!)】

「もっと、もっと愛して(課金して)ね? 貴方のすべて(人生)、私が背負ってあげるから!!」

シュゴォォォォォォッ!!

リーザの歌声が高まるにつれ、ゼロスから金貨ステータスが剥がれ落ちるスピードが爆発的に加速していく。

『マネー』のスキルで強化されていた筋力、敏捷、耐久力……それらすべてが、リーザの『Love & Money』というシステム干渉バグによって、完全に【ルーティング改ざん】され、アイドルへの強制スパチャ(投げ銭)として横取りされているのだ。

「や、やめろォォォッ!! 私の金が! 私の力がぁぁぁっ!!」

* * *

「——はぁぁぁぁっ!? ふ、ふざけんな!! なんだこのエラー画面は!!」

神界の第一会議室。

モニターの前で、炎上神ワイズはカプチーノのタンブラーを床に叩きつけ、絶叫していた。

彼のエンジェルすまーとふぉんの画面には、恐るべき通知が秒間数百件のペースで滝のように流れていた。

『SYSTEM:ゼロス・ディバインへの資金転送エラー』

『SYSTEM:資金のルーティングが【リーザ(ルナミス帝国地下アイドル)】に強制変更されました』

『SYSTEM:スーパーチャット 100,000G が リーザ に送金されました!』

『SYSTEM:スーパーチャット 500,000G が リーザ に送金されました!』

『口座残高が急激に減少しています。警告:このままでは破産します』

「あ、あ、あ、ああああっ!! 俺の予算が! スポンサーから集めた大事な神界の予算が、なんで敵の芋ジャージの女の口座(お賽銭箱)に吸い込まれてんだよォォォッ!!」

ワイズは涙目でキーボードを叩きまくり、送金をキャンセルしようとするが、リーザの『貧乏神』による強制徴収は、神のシステムアクセスすらも完全にシャットアウト(魅了)していた。

神界の資金が、文字通り音を立てて溶けていく。

* * *

「あ……あぁ……っ……」

ポポロ村の広場。

曲が終わり、リーザが「サンキュー、ダーリン♡」と完璧なポーズを決めた瞬間。

ゼロスを包んでいた黄金のオーラは、チリ一つ残らず完全に消え失せていた。

みかん箱の前の段ボールには、神界から吸い上げた天文学的な額の金貨スパチャが溢れんばかりに山積みになっている。

「私の……無敵のステータスが……ゼロに……」

ゼロスは、信じられないものを見る目で、自分の両手を見つめた。

ワイズからの資金供給を完全に絶たれた彼は、元の「ただの一般兵以下のステータス」に戻っていた。

「あ、がっ……!? おも、い……っ!?」

ステータスが消失した瞬間、ゼロスの肉体に『現実の物理法則』が襲い掛かる。

彼が装備しているのは、純度100%の【オリハルコン製の鎧と大剣】である。数十キロを超えるその超重量は、圧倒的な筋力ステータス(課金)があって初めて動かせる代物だ。

元の貧弱な肉体に戻ったゼロスにとって、それはもはや『絶対に身動きが取れない鉄の棺桶』でしかなかった。

ガシャンッ!!

「ぐ、うおぉぉっ!?」

重さに耐えきれず、ゼロスは無様にうつ伏せに倒れ込んだ。

自慢の白い歯(整形)が石畳に激突し、ボキッと情けない音を立てて折れる。起き上がろうと腕に力を入れるが、鎧の重さでピクリとも動かない。

「……言っただろ。ステータスと装備を剥がされたら、お前には何が残るんだって」

うつ伏せで亀のようにジタバタともがくゼロスの頭上に、冷酷な影が落ちた。

リアンである。

「ひっ……! ま、待て! 私は神に選ばれた勇者……!」

資金源スポンサーを完全に絶たれた企業は、それを『倒産』って呼ぶんだよ」

リアンは、冷え切った目で足元の偽物を睨み下ろした。

「ステータスを吸い上げられ、重い鎧(負債)に押し潰されて動けない。……さあ、不良債権の解体作業フィニッシュと行こうか」

リアンが右手を高く掲げた。

その視線の先、ポポロ村の上空を覆う分厚い雲が、禍々しい紫色の雷光と共に、巨大な渦を巻き始めていた。

「借金(リボ払い)で買った偽物の強さごと、消し飛べ」

冷徹なるプロデューサーの最終宣告。

炎上神の理不尽なやらせを完全に粉砕する、最凶の戦略兵器(召喚獣)が、今まさにその姿を現そうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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