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EP 4

カオスの坩堝と、止まらない本音

ブチィィィィィィィィィッ!!!!!

S組全員の脳内で、理性を司る「ストッパー」が、一斉にちぎれ飛んだ。

「ぐっ……! あ、開く……! 俺の口が勝手に……ッ!!」

リアンは必死に両手で口を塞いだが、自白剤の王『暴露鯛』の呪いは、前世で培った大人の自制心すらも赤子のようにねじ伏せた。

両手の隙間から、これまで絶対に誰にも言わなかった【世界最大のタブー】が、ゲロのように溢れ出す。

「じ、実は俺は前世から転生してきた元・25歳の料理人で……って、な、何を言ってるんだ俺はぁぁッ!?」

リアンが目を見開いて絶叫する。

だが、その衝撃の爆弾発言カミングアウトにツッコミを入れる者は誰もいなかった。

なぜなら、他のメンバーもすでに、自分の本音の暴走を抑えきれなくなっていたからだ!

「はうっ……! 胸が、胸がドキドキして……言わなきゃ……ッ!」

ルナが顔を真っ赤にして立ち上がり、バンッ!とテーブルを叩いた。

彼女の純粋無垢な瞳が、リアンを真っ直ぐに射抜く。

「わ、私! リアン君の事が好き! ……あっ!? な、何をいってるのかな私ぃぃっ!?」

ルナが自分の両頬を押さえ、プシューッと頭から湯気を吹き出してパニックに陥る。

「ええ!?」

突然のガチ告白を真っ正面から喰らい、リアンの思考が停止した。

中身がアラサーとはいえ、ヒロインからのド直球のラブコールである。

「あ、あ、ありがとうよ ルナ……! じゃなくて、なんで急にラブコメ展開になってんだ!?」

リアンが照れと混乱で顔を赤くしていると、今度はルナの隣で、極貧サバイバーのリーザが勢いよく立ち上がった。

彼女の瞳には、愛ではなく、ギラギラとした『欲望ゴールド』の光が宿っていた。

「私も! リアン君の財産(お金)がだぁぁぁい好き!! ……あっ、何をいってるのかな私!?」

「えぇ!?」

リアンは完全にズッコケそうになった。

「お前はブレないな! せめて『リアン君の作るご飯が好き』とかオブラートに包めよ! 財産目当てって堂々と宣言するヒロインがどこにいるんだよ!」

だが、暴露の嵐は止まらない。

今度は、いつもマイペースで安全靴を履いた破壊神・キャルルが、モジモジと身をよじりながら、上目遣いで向かいの席を見た。

視線の先には、クラウスがいる。

「私は……クラウス君のことが、ちょっと気になるかなって!★」

「ブフォッ!?」

極上の海鮮スープを飲んでいたクラウスが、キャルルの爆弾発言に驚愕し、見事な勢いでスープを吹き出した。

「な、なんだってキャルル!? ぼ、僕のことが……っ!?」

クラウスが顔を真っ赤にして動揺するが、彼もまた『暴露鯛』の呪いから逃れることはできない。

生真面目な騎士の仮面の下に隠されていた、少年らしい純粋すぎる『本音』が、彼の口をこじ開けた。

「いや、それより聞いてくれ! ぼ、ぼくは……本当は立派な騎士なんかじゃなくて、仮面を被って悪を倒す『正義のヒーロー』になりたいんだぁぁぁッ!!」

クラウスは、食卓の上で謎の変身ポーズ(ヒーローの決めポーズ)を全力でキメながら、涙ながらに己の夢を絶叫した。

「かっこいい野望じゃねぇか!」

リアンは思わずテーブルから身を乗り出して叫んだ。

「男のロマンだろ! 騎士のテンプレにハマるより、よっぽど人間らしくていいぜ!」

「ありがとうリアン! 僕は、僕は本当はずっとマントをつけて高いところから飛び降りてみたかったんだぁぁっ!」

クラウスが号泣しながらサムズアップする。

「あ、あの! 私も言わせてください!」

ADのダイヤが、持っていたカメラを放り投げて叫んだ。

「私は、リアンPがいつも現場で無茶振りしてくるのが本当にキツいです! 休日出勤の手当てをつけてくださいぃぃっ!」

「それは後で経費で落としてやるから、今は黙ってろ!!」

カオス。

まさにカオスの坩堝るつぼである。

男爵邸のダイニングルームは、互いの本音と愛の告白、そして将来の夢と給与交渉が入り乱れる、大絶叫大会と化していた。

(ハァ、ハァ……! な、なんだこの地獄絵図は……!?)

リアンは荒い息を吐きながら、テーブルの上の『海鮮鍋』を睨みつけた。

(このつみれ……『暴露鯛』か! 前世の知識にはなかったが、この異世界には『食った者の本音を強制的に暴く魚』がいるって聞いたことがある! クソッ、クラウスの家の執事め、とんでもない劇物を誕生日に持ち込みやがって……!)

だが、本音を叫び合ったおかげか。

部屋の空気は、どこか妙な『スッキリとした連帯感(と気まずさ)』に包まれ始めていた。

ルナは顔を真っ赤にしてリアンをチラチラ見ているし、キャルルもクラウスを見てニコニコしている。リーザに至っては「リアン君の財産……ふへへ」とヨダレを垂らしている。

(……まぁ、結果的に腹を割って話せたんだ。暴露の呪いはヤバいが、誕生日パーティーの余興としては、悪くねぇ……)

リアンが大きく息を吐き、このカオスな状況を受け入れようとした、まさにその瞬間。

ジリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!!

突如として、男爵邸中に【火災報知器のけたたましい警報音】が鳴り響いた。

「な、なんだ!?」

リアンが弾かれたように立ち上がる。

『火事です! 火事です! 奥の倉庫から出火しました! 皆さん避難してください!』

使用人たちの悲鳴が廊下から響き渡った。

「そ、倉庫だと……!?」

リアンの顔から、一瞬にして血の気が引いた。

先ほどまで暴露鯛の呪いで赤くなっていた顔が、今度は青白く染まっていく。

なぜなら。

その出火した倉庫の地下には、リアンがポポロ村やGod-Tubeのコンサルで稼いだ僅かな残りのお金や、将来のための『超・重要機密の隠し財産へそくり』が、全て隠されていたからだ。

リーザから貰ったプレゼント――『ふ〜ん石』による【絶対的負運】の呪いが、いよいよリアンの人生に牙を剥き始めた瞬間であった。

お読みいただきありがとうございます!


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