↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
164/409

EP 3

誕生日パーティー開幕! 迫り来る二つの呪い

「ふはぁ~……! すっごくいい匂い! ルナ、もうお腹と背中がくっつきそうだよ!★」

シンフォニア男爵邸の広大なダイニングルーム。

テーブルの中央に鎮座する巨大な土鍋から立ち上る、黄金色のブイヤベースの香りが部屋中に充満していた。

「ん。キャルルも、お肉(魚)食べたい。村長、早くゴーサイン出して」

「待て待て、主役の俺より先に食おうとすんな。まずは儀式(プレゼント交換)が先だろ」

エプロンを外したリアンは、よだれを垂らすルナとキャルルを制し、自分の席である上座にドカッと腰を下ろした。

今日はリアン・シンフォニアの8歳の誕生日パーティー。

集まったのは、クラウス、ルナ、キャルル、ダイヤ、そしてリーザという、1年S組の規格外メンバーたちだ。

「よし! じゃあキャルルからプレゼント! はい、星の砂を集めた小瓶だよ! 綺麗でしょ!★」

キャルルが無邪気な笑顔で、キラキラ光る砂の入った小瓶を差し出した。

「お、おう。サンキュ」

リアンは笑顔で受け取りつつも、内心で(原価ゼロじゃねぇか。海辺で拾ってきたな……まぁ、気持ちの問題か)と、前世の打算的な大人の顔で計算していた。

「リアンP! 私からは、撮影現場で重宝する『超軽量型チタン製折りたたみパイプ椅子(特注品)』です!」

「おう、ダイヤ。それは普通に助かるわ。エターナル世界のコンサルでパイプ椅子が壊れかけてたからな」

次々とプレゼントが渡され、いよいよ、極貧サバイバー・リーザの番が回ってきた。

「リアン君……いつも美味しいご飯を作ってくれて、ありがとう。これ、私からのプレゼント!」

リーザは、泥を綺麗に洗い落とし、ピカピカに磨き上げた『ふ~ん石』をリアンの手のひらに乗せた。

「なんだこれ。やけに綺麗な虹色の石だな」

「えへへ、帝都を歩いてたら『偶然』見つけたの!(※野良犬と死闘を繰り広げたゴミ捨て場で)」

「へぇ、わざわざ探してくれたのか。ありがとな、リーザ」

リアンがその虹色の石をしっかりと握りしめた、その瞬間である。

ピキィィィィンッ……!!

リアンの耳の奥だけで、ガラスに致命的なヒビが入ったような、不吉極まりない音が鳴り響いた。

(……ん? なんだ今の音。耳鳴りか……?)

リアンが不思議に思いながら、自分の椅子に座り直そうと体重をかけた、その時。

バキィッ!!

「――は?」

これまで一度も壊れたことのない、最高級のマホガニー材で作られた頑丈な椅子の脚が、まるで最初から折れていたかのように、唐突にへし折れた。

「どわぁっ!?」

リアンは無様に宙を舞い、お尻から床に激突した。

「り、リアン君!? 大丈夫!?」

リーザたちが慌てて駆け寄る。

「い、痛てぇ……。なんだこの椅子、シロアリにでも食われてたのか……? まぁいい、怪我はねぇよ」

リアンが立ち上がり、後頭部をさすりながら開いた窓のそばに立った、その瞬間。

「カァァァーーッ!!」

窓の外を飛んでいた一羽のカラスが、見事な爆撃フンを投下。

それは見事な放物線を描き、つい先日、女神リリスのスマホの角で殴られてできた『リアンの頭頂部のタンコブ』の上に、ベチャッ!とクリティカルヒットした。

「…………」

「り、リアンぁぁぁっ! 運が悪い! 今日の君はあまりにも不運すぎるぞ!」

クラウスがハンカチを取り出して慌てふためく。

「……チッ。なんだってんだ、急に運が下ブレしやがって。……ただの偶然だろ」

リアンはカラスのフンを拭き取りながら、毒づいた。

彼はまだ気づいていない。ポケットに入れた『ふ~ん石』の呪いにより、今の彼の運勢のパラメーターが【絶対的底辺(通常時のリーザ以下)】という、生物としてあり得ないマイナス数値に固定されてしまったことに。

「まぁいい、厄落としだ。……お前ら、プレゼントありがとうな」

リアンは気を取り直し、新しい椅子(ダイヤがくれたチタン製パイプ椅子)に座り直した。

そして、テーブルの中央にある土鍋の蓋を、勢いよく開け放つ。

パァァァァァァンッ!!

立ち昇る黄金の湯気。

濃厚な魚介のスープの中で、真っ黒なつみれ(暴露鯛)が宝石のように輝いている。

「さぁ、俺が前世……いや、俺の持てる技術の全てを注ぎ込んで作った、極上の海鮮ブイヤベースだ。冷めないうちに食え!」

「「「いただきま~す!!」」」

ルナが、キャルルが、リーザが、クラウスが、ダイヤが。

そして、自分で作った料理に絶対の自信を持つリアン自身が。

スプーンで『暴露鯛のつみれ』をすくい、一斉に口の中に放り込んだ。

「――――ッ!!」

全員の動きが、ピタリと止まった。

(……美味い! なんだこれ!?)

リアン自身、自分の料理でありながら戦慄した。

呪いの成分がアミノ酸と結合した結果、舌の上で爆発する旨味は、前世の三ツ星レストランのフルコースすら児戯に等しい『神の味』に昇華されていたのだ。

だが、極上の美食体験は、ほんの一瞬のこと。

次の瞬間。

ブチィィィィィィィィィッ!!!!!

S組全員の脳内で、理性を司る「ストッパー」が、太いワイヤーがちぎれるような音を立てて物理的に吹き飛んだ。

「……え?」

リアンは、持っていたスプーンを取り落とした。

おかしい。

胸の奥から、胃液よりももっと熱くて、ドロドロとした『絶対に他人に言ってはいけない秘密』が、喉元までせり上がってくる。

(ま、待て……! なんだこの感覚!? 違う、言うな! 絶対に口を開くな、俺ェェェッ!!)

前世の記憶。

転生者であるという、この世界における最大の機密事項。

それが、暴露鯛の呪いによって、ダムが決壊したように押し寄せてくる。

リアンは必死に両手で口を押さえたが、自白剤の王の力は、7歳の子供の抵抗など軽々と打ち砕いた。

「じ……実は、俺は……っ!!」

リアンの口が、勝手に開き始める。

そして、異変が起きたのはリアンだけではない。

ルナの瞳孔が開き、リーザが立ち上がり、クラウスが天を仰いでいた。

誰も止まらない。

誰も止められない。

男爵邸のダイニングルームで、1年S組の全てを破壊する【強制カミングアウトの嵐】が、今まさに吹き荒れようとしていた――!!


お読みいただきありがとうございます!


評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。