EP 20
ヤラセと炎上(S組の乱入)
「よし、仕込みは完了だ。これより、エターナル世界における『史上最大の介入』を開始する」
リアンの合図と共に、玉座の間のモニターに映し出されていた『はじまりの村』周辺の風景が、ルナとキャルルの乱入によって劇的に変化した。
「いくよ、キャルル! 『世界樹の成長加速魔法』、出力MAXで解放だ!★」
「うん! 了解だよ、ルナちゃん! えいっ!」
ルナとキャルルが、何もない『はじまりの村』のメインストリートに、突如として禁断の魔法を叩き込んだ。
次の瞬間――。
ドォォォォォンッ!!
地面から凄まじい轟音と共に、数秒前までただの雑草が生えていた土地が隆起し、雲を貫くほどの巨大な『世界樹』が爆速で成長を開始した。
その枝葉は魔王城の外壁を突き破り、村の民家を押し潰し、あろうことか『勇者ユート』がせっせとスライムを狩っていた草原を、瞬く間に原始のジャングルへと変貌させた。
「な、なんだぁぁぁっ!? 草が! 草が俺の足に絡みついて動きを封じてくるぞ!?」
「ユート様! 3ゴールド(スライム)がジャングルの木の上へ逃げました! 追いかけてください、利息が払えなくなりますよ!!」
ルナとキャルルの乱入は、もはや災害レベルだった。
「ひゃっほーい! 壊しちゃえー!★」
ルナは無邪気に空を飛び回りながら、魔王軍の砦を「あ、ここ邪魔だね」と魔法で更地にしていく。
キャルルは「村長特権だよ!」と笑いながら、安全靴で魔王軍の防衛線を踏み抜き、重機顔負けの破壊力で地面に巨大なクレーターを作った。
「あ、あ、ああぁぁ……! 予算100万で作った背景が! 私の苦労が木っ端微塵に……ッ!」
リリスがスマホの画面を見ながら、悲鳴を上げて涙を流す。
だが、リアンの目は冷徹にGod-Tubeの『PVグラフ』を追っていた。
ギュイィィィィィン!!
グラフの線が、まさに垂直上昇を見せている。
「ビンゴだ。テンプレ通りに進む物語なんて誰も見たくない。……『世界をメチャクチャに破壊して回る謎の美少女たち』という圧倒的イレギュラーが加わることで、視聴者は『次に何が起きるか』というカタルシスに飢えるんだ」
『なんだこの美少女たち!? 強すぎだろwww』
『魔王軍の砦がwww 踏まれて崩壊www』
『勇者パーティーが完全に脇役になってて草』
『この「ヤラセ感」が逆に面白い! 運営のガチな妨害工作!!』
『【炎神アグニ】から 2,000,000円 のスーパーチャット!:【最高の災害だ! もっと壊せ! もっと燃やせぇぇぇッ!!】』
スパチャの金額が桁違いに跳ね上がる。
もはや『エターナル』は、勇者の冒険譚ではなく、リアンがプロデュースする『ド派手な破壊とカオスを楽しむリアル・バラエティ』へと変貌していた。
「ひゃはは! 魔王軍も反撃してよー!★」
ルナが面白がって、炎魔将軍グレンの執務室にまで火種を投げ込む。
「貴様らぁぁ! 俺の城を遊び場にするなぁぁっ!」
激怒して追いかけてくるグレンだが、ルナの魔法に翻弄され、ズッコケては広場を壊すという『体を張った芸』を強制的に披露させられていた。
「これだ。この『ギャップ』が神々の心を掴む」
リアンはニヤリと笑った。
だが、リアンが一つだけ計算を誤っていたことがある。
ルナとキャルルの出力は、あまりにも高すぎた。
「あの……リアンP? 魔法のエネルギーが過剰すぎて、空間が耐えられなくなってきてるみたいです……」
リリスがスマホの画面を指差す。
ミシミシミシ……ッ!!
空間に『ヒビ』が入っていた。
それは、ゲームで言う『領域外(バグ空間)』への入り口だった。
このまま二人が暴れ続ければ、世界そのものが真っ二つに裂け、ログインしている全員が『強制ログアウト(存在消滅)』する危険性がある。
「……やりすぎたな」
リアンは腕を組み、空中に浮いている『領域外の入り口』を見上げた。
「おいダイヤ! あのヒビを塞げ! 大工道具(建築スキル)で空間を強引に縫い合わせるんだ!」
「イエッサー!! 空間の『隙間』を、あえて『高級な額縁(装飾)』で塞ぐことで、バグを『仕様』へと昇華させてみせますッ!!」
ダイヤが空間の裂け目に飛んでいく。
それは、リアンPが次に打つ『炎上の仕様化』という、さらなる狂気のプロデュースの幕開けでもあった。




