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サイドストーリー第五話 救出(フェリシア視点)

【フェリシア視点】


 翌朝、街を出て森へと向かう。


「レアンドロがコーマと交戦を始めた場所はさっき伝えた通り。

 アインの処刑はできるだけ引き延ばすけど、どんなに頑張っても3か月が限界。

 それを過ぎたら王立騎士団がコーマ討伐に向かう前に逃げてね」

「ルシアを除いた職員は全員エストーラから退避する。

 逃げるときはエストーラには寄らずそのままベルハイムに来てくれ」

「はい、分かりました。ありがとうございます!」

「フェリ、絶対に無事に帰ってきてね」

「うん、ベルハイムで待っててね」


 ユフィとハグして分かれを惜しんだ後、ユフィ、ルシアさん、ハリソンさんに見送られながら森へと入る。

 コーマ、絶対連れて帰るから。


 ◇◆◇◆◇


 コンパスを頼りに森を進んでいき、目的地へと向かう。

 ゴブリンは何匹か見付けたけど、攻撃してくる様子はない。

 エストーラの冒険者が討伐のために何度も森に入っていたって聞いたから、多分そのせい。


 もう目的地の近く。

 この辺りにコーマの痕跡が残っているといいけど。


「フェリシア!?」

「コーマ!」


 コーマ見付けた!

 やっぱりまだここに居たんだ。


「まだここに留まってくれてたんだね、会えて良かったー」

「いや、フェリシアこそ、なんでこんなところにいるんだ?」

「コーマを探してたんだよ!

 コーマがしちゃったことは分かってる。

 今ベルハイムでもエストーラでも大変なことになっててね。

 コーマもエストーラに入れなくて大変だよね。

 でもコーマがエストーラに来て何もしてませんって言ってくれたら全て解決するんだ。

 だから一緒にエストーラに行こう?」


 お願い!信じて付いてきて!


「待て待て、待ってくれ。

 俺がしたことが分かってるって、どのくらい分かってるんだ?」

「……冒険者8名とエストーラ冒険者ギルド支部長、そしてギルド職員の殺害、だよね」


 合計10名、大量殺人だよ。


「ギルド職員はまだ殺してない」

「えっ、そうなの?

 でもエストーラに帰ってきてないって……」

「村で生きている」


 レベカさんが生きてる!?ううん、それより……


「村?まさか、コーマは今ゴブリンの村にいるの?」


 やっぱりユフィの予測は当たってたんだ。

 コーマはゴブリンと意思疎通が図れるとは聞いてたけど、あれだけ大量に殺していたゴブリンと本当に一緒に暮らしているなんて。

 コーマの横にゴブリンがいるけど、あれがその村のゴブリン?


「そうだ」

「……そう。コーマは、もう人間の街で暮らす気は無いの?」

「ああ」


 人間を10名も殺したからっていうのは分かるけど、ゴブリンはその10倍以上も殺してるでしょ。

 それなのに、どんな神経してたらゴブリンと一緒に暮らせるんだろう。


「もしコーマが自分がしてしまったことを気にして人間の街に入れないと思っているなら、それは気にしないで。

 コーマが誰も殺害していないって証言してくれたなら全部無かったことになるから」

「そんなこと信じられるわけないだろ」


 本当なら処刑されて当たり前。

 それなのにたった一言証言するだけでその罪が消えるなんて信じられるわけない。

 でも、私はアインさんに恩を返すためだったらいくらでも時間を掛けるよ。


「うん、そうだよね。

 でも本当なんだよ。

 すぐには信じられないかもしれない。

 だからコーマに信じてもらえるようになんでもするよ」


 うっ、コーマが下卑た視線を向けてきた……。

 これ本当に嫌。

 でも我慢しなきゃ。

 これもアインさんを助けるため!


「とりあえず、俺の村に来るか?」

「良いの!?ありがとう!」


 ◇◆◇◆◇


 ゴブリンの村に着くと、沢山のゴブリンが石を積み上げて私を待っていた。

 まさか、レアンドロさんを倒せたのって、ゴブリンの協力があったから?


 コーマがゴブリンと何言か話すと、ゴブリンは石を片付け始めた。

 コーマはこの村と随分と馴染んでるんだね。

 ベルハイムでは街の人と話してるところを見たこと無かったし、コーマにとってはこの村の方が居心地がいいのかもね。


 村を見渡しても、見つかるのはゴブリンだけ。

 レベカさんはどこにいるんだろ。


「ねえ、コーマ。レベカさんはどこにいるの?」

「こっちだ」


 コーマに連れられて家の中に入ると、隅の方に人影が一つ。

 まさか……


「レベカさん!?」

「……誰?」

「ベルハイム支部職員のフェリシアです。大丈夫ですか?」


 片手を縄で縛られて家の隅に繋がれている。

 顔はやつれて生気を感じない。

 見るからに何日も禄に食事を取れていなさそう。

 それに……。


「ベルハイム……?あそこはもっと小さい子しかいないはず」

「最近冒険者から職員になったばかりです。

 レベカさんはご飯を食べれていますか?」

「いいえ……」

「少しでも食べれそうなら食べてください」


 近くにあったスープをスプーンで掬ってレベカさんの口元に近づける。


「いっ、嫌!近づけないで!」


 レベカさんは顔を背け、怯えながらも全力で食べるのを拒否している。

 こんなにやつれているのに食べるのを拒否するなんて、レベカさんに何があったの……?


「ねえ、コーマ。なんでレベカさんはこんなに怯えてるの?」

「最初の頃、ゴブリンたちがレアンドロの死体を使ってスープを作った。

 それと勘違いしているんだろ。

 俺は食ってないし、それをレベカに食わせようとも思っていない。

 そのスープに入っているのは鹿肉だ」

「レアンドロさんを……?」


 人の遺体でスープ?

 自分が食べてなかったとしても、それを見過ごしていたなら同じでしょ。

 何、自分は関係ないみたいな顔してるの。


 レベカさんをこれ以上こんなところに居させるわけにはいかない。


「レベカさんをエストーラに返そう」

「……なんでそんなこと」

「レベカさんがずっとこのままここにいたら死んじゃう。

 コーマはレベカさんを殺したいわけじゃないでしょ?」

「そりゃそうだが……」

「これからは私がいる!

 だからレベカさんを解放してあげて!」


 私だってここに居たいわけじゃないけど、私は自分で選んでここに来た。

 でもレベカさんは違う!


「分かった。返そう」


 良かった……。

 コーマはまだ完全に人の心を失ったわけじゃなかった。


「ありがとう。

 レベカさん、立てますか?エストーラに帰れますよ」


 縄を解き、レベカさんを支えながら立ち上がる。

 レベカさんの足にはほとんど力が入ってない。

 私1人でレベカさんの身体全てを支えるなんてできない……。

 だけど、これ以上コーマにレベカさんの身体を触らせたくない。

 エストーラまで歩けるかな……。


「足元のパンを持っていけ。

 それならレベカは食えるらしい」


 足元を見ると、食べかけのパンらしきものがあった。

 これ、全く発酵させてないでしょ。

 こんなパン、エストーラでも見たことないよ。


「レベカさん、少しだけでも食べたほうがいいです」


 レベカさんの口元にパンを運ぶと、少しだけ齧って食べ始めた。

 こんなのそのままじゃ食べづらいだろうし、スープに浸さないと食べたくない。

 けど、スープがあれだとそんなこともできない。

 それでこの衰弱具合……。


「食べながらでいいです。早くここから離れましょう」


 ◇◆◇◆◇


 森の出口に辿り着いた。

 歩いているうちに段々とレベカさんの足に力が戻り、1人でも歩けそうなほどになった。

 結局、コーマは付いてくるだけで一回も手伝おうとする素振りを見せなかった。

 手伝うって言っても手伝わせなかったけど。


「レベカさん、ここからは1人で歩けますか?」

「あなたは?」

「私はまだやることがありますから。

 でも必ず行きます。

 だから先に行って待っていてください」

「……分かったわ。

 必ず帰ってきてね。

 待っているから」

「はい!」

「ありがとう。それじゃ……」


 レベカさんをエストーラへ見送る。

 ハリソンさんがエストーラから退避するって言ってたけど、今なら多分間に合うはず。

 レベカさんはこれでもう大丈夫。


 あとは私がコーマをエストーラに連れて帰ればいいだけ。


「ねえ、コーマ。私たちもこのままエストーラに行かない?」

「俺の居場所はあの村だ。

 エストーラにはない」

「エストーラなら美味しいご飯が沢山あるよ?ベッドもあるし。

 それに、宿屋で色んな女の人を買えるよ」

「そんなもの、欲しいわけじゃない!」


 コーマが本気で怒ってる……。

 ベルハイムでもトラメリアでも毎日のように女の人を買ってたのに?

 女の人を買いたいわけじゃなかったら、なんでそんな頻繁に買ってたの?

 意味分かんない。


 ……けど、今はコーマとの関係を悪くするわけにはいかない。

 謝らないと。


「ごめん」

「いや、いい」


 少し雰囲気が悪くなったけど、これが最後の説得。

 これでコーマが頷いてエストーラまで一緒に来てくれることが、コーマにとっても一番良いことなんだよ。


「コーマがこれからもゴブリン達と一緒に暮らすつもりだっていうことは分かった。

 でも、お願い。

 一度だけでいい。

 エストーラに行って誰も殺してないって証言してほしい。

 このままだとアインさん……ベルハイムの支部長が処刑されちゃうの!」

「……なんでアインが処刑されるんだ?」

「魔法を教えてもらうとき、もし魔法で犯罪したら本人とその人に教えた人が処刑されるって言われなかった?」


 コーマが少し考えてる。

 やっぱり忘れてたんだ。


「ますますエストーラに行く理由が無くなった。

 さっさと村に帰るぞ」

「待って!アインさんが処刑されるんだよ!?」

「願ったり叶ったりだな」

「コーマがアインさんを恨んでいるのは知っているけど……。

 でも、エストーラに行って証言するだけで死ななくていい人が死なずに済むんだよ?」

「アインは死ななくていい人間じゃない」


 コーマから見たら、アインさんはそうなんだ。

 でもね、私から見ても、多分他のどんな人から見ても、コーマとアインさんのうち、死んだ方がいいのはコーマだよ。


「どうした?村に戻らないのか?」

「ううん、今行く」


 コーマ覚悟していて。

 これから私はコーマにとって嫌なことを沢山する。

 それで、最後は冒険者とギルド職員みんなでコーマを殺す。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新は2026年4月27日の予定です。

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