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サイドストーリー第二話 ギルド(フェリシア視点)

【フェリシア視点】


 仕事に出ていた全ての冒険者の仕事終了を確認して、みんなでユフィのいるところに向かう。


「皆さん、本日の業務は終了しましたか?」

「終わった。それよりアインさんはどうなるんだ!?」


 この子はイサーク。

 歳はユフィと同じで、私を除けばここの職員で年齢が一番上の子の1人。


「エストーラ支部長のレアンドロさんはコーマさんを処分して交渉するつもりのようです。

 その結果アインさんの処刑を免れられるかは分かりませんが、コーマさんを処分しない限りは交渉もできない、とのことです」


 処分……。

 でも、仕方ないよね。

 アインさんを助けられる可能性が少しでもあるなら、それに賭けるしかない。


「もし交渉が失敗したら……やるのか?」


 やる?

 やるって……何を?


「それは……分かりません。

 本部の決定を待ちましょう」

「……俺は1人でもやるぞ。

 セラに続いてアインさんまで。

 もうこれ以上貴族の好き勝手になんてさせられない!

 あいつらなんていなくても、ゴブリンなんて俺達だけで倒せるんだ!」

「落ち着け。ハリソンを信じろ。

 あいつならアインを見捨てるなんて決断はしないはずだ」

「ニコラさん……」


 エストーラから来た連絡係のニコラさんは多分私よりも年上。

 やっぱり年上だからか貫禄があるなあ。

 ハリソンさんは、今の冒険者ギルドの実質的なリーダー、だったかな。


「一先ず、明日以降は魔法講習を中止して、窓口業務のみの運営にします。

 窓口はフェリシアさんと、11歳以下の子たちで対応をお願いします」

「えっ?ユフィたちはどうするの?」

「……私やイサークたちは森に入って対人戦の再訓練を行います」

「対人!?」


 対人って、人と戦うことを想定しているってこと?


「よしっ!アインさんを俺達の手で取り戻してやるぞ!」

「おおー!!」


 まさか、この子たちはさっきの騎士と戦う気なの?


「明日以降の訓練は厳しくします。

 今日は帰って休みましょう」


 えっ、ちょっと待ってよ。

 なんでみんなそんなに人と戦うことを当たり前みたいに受け入れてるの?


「待ってよ!!」


 だよね!?

 受け入れられてないのは私だけじゃないよね?


「俺はもうすぐ12歳だ!

 だから俺も対人戦の訓練したい!」


 そっち!?

 戦いたい方なの!?


「オスカル……。

 気持ちは分かりますが、ダメです。

 まだ遷移魔法を使えないでしょう」

「それは……今すぐにでも練習すれば!」

「そんな時間はありません」

「うっ……」

「分かったらオスカルも休んでください。

 明日以降の窓口業務は大変ですよ」

「はい……」


 オスカルは頷いて、そのまま部屋から出ていった。

 でも納得はしていなさそう。


 部屋に残ったのは私とユフィだけ。


「ユフィ、あの……」

「フェリシアさん……。

 そうですよね、戸惑ってしまいますよね」

「うん、なんでみんなあんなに戦おうとしてるの?

 話合いじゃ解決できないのかな?」

「王立騎士団、というより、この国の貴族や王族はギルドを解散させたがっていますから、おそらく話合いでは解決できないでしょうね……」

「だからって人同士で戦うなんて……」

「そうですね。私もできれば戦いたくありません」

「じゃあ、訓練なんて……」

「だからと言って、戦わなければアインさんを見殺しにするのと同じです」

「それは……」


 そうだけど。

 私だってアインさんをこのまま処刑させたくない。

 だけど……。


「フェリシアさんに戦うことを強要しません。

 王立騎士団がどのように動くかは分かりませんが、もしギルドと戦うことになったらフェリシアさんは逃げてください」

「そんなこと……」


 できない……。

 けど、戦うことも私には……。


「今日は帰って休みましょう。

 すぐに戦いが始まるわけではありません。

 まだ時間はありますから」

「うん、そうだね……」


 ◇◆◇◆◇


 その日の夜、寝るためにベッドで横になっていると、枕元に気配を感じた。


「ユフィ?どうしたの?」

「あの……今日は一緒に寝ても良いですか?」

「うん……いいよ」

「ありがとうございます」


 少しずれて、ベッドにユフィが寝られるスペースを空けると、ユフィがそこに入ってきた。

 今までずっとユフィと同室だったけど、こんなことは初めて。


「……アインさんは、無事でしょうか」

「無事だと、いいね」


 あんな風に騎士に連れて行かれて、今頃どうしているんだろう。

 厳しい尋問にあっているのかな。


「アインさんと過ごした時間はまだ短いですが、アインさんは私たちにとってもよくしてくれました」

「そうだね」


 私がベルハイムにやっとの思いで辿り着いたとき、アインさんの助けが無ければ私は今ここにいなかった。

 あのときアインさんに会えなければ生きているかどうかも分からないし、生きていたとしても、多分酷い暮らしをしていただろうな。

 ちょっとぶっきらぼうだけど、優しい人だった。

 そんな人なんだから、ユフィたちにも優しかったんだろうな。


「私たちがトラメリアにいた頃、セラさんという方が支部長だったのですが、その人もアインさんと同じくらい優しい人でした」

「うん……」

「でも、今から2年前。

 スタンピードを乗り越えた翌日に、私たちの目の前で貴族に連れて行かれてしまいました。

 それ以来、セラさんはギルドに帰ってきませんでした」

「そう、だったの……」


 目の前で連れて行かれたって、それって……。


「私も、イサークも、他のみんなも、そのときと今を重ねてしまっているのだと思います」

「……」

「セラさんが今もまだ生きているかは分かりません。

 ですが、アインさんは生きています」

「……うん」

「私たちはもうあの頃とは違います。

 魔法もいっぱい練習しました。

 でも……」

「うん」

「でも、騎士団はもっと強い。

 多分、私たちよりも」

「そう、なんだね」

「私たちが騎士団と戦って、全員死なずに勝つなんて絶対に無理。

 負けて、私たち全員殺されるかもしれない」

「……」

「もしそうなったら私のせい。

 今、私が騎士団とは戦わないって決めて、アインさんを見殺しにしたら皆死なずに済む。

 私はどうしたらいいの?」

「ユフィ……」


 さっき話していたときはユフィは自信があるように見えてたけど、本当はそんなことなかったんだ。

 ユフィはまだ14歳の女の子。

 そんな子にみんなの命を背負わせるなんて……。


「どうしたらいいかなんて、私も分からない。

 でもね、きっとユフィは間違ってない。

 そうやって悩むことが大事なことなんだよ。

 人の命に関わることを簡単に決めることの方がずっと間違ってる」

「そう、かな……」

「うん。

 だからね、今だけは泣いていいんだよ」

「うん……」


 ユフィが私の胸に顔を埋めて、抱きしめてきた。

 それを抱きしめながら頭を軽く撫でる。

 胸が少し濡れ、嗚咽が軽く漏れながら、夜は更けていった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新は2026年4月17日の予定です。

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