サイドストーリー第一話 職員(フェリシア視点)
時系列的には本編31話と32話の中間です。
【フェリシア視点】
ギルドの職員になって一週間が過ぎた。
まずは受付からっていうことで今日も一日受付に立ってる。
冒険者にお仕事を紹介したり、魔法講習の案内をしたり、街の人からの仕事の依頼を受け付けたり、色々とやることがあって大変だけど、それでもありがとうって言ってもらえたり、私の仕事で助かったって言ってくれる人がいて、やりがいを感じられる。
冒険者よりもこっちの仕事の方が私には合ってたのかも。
もっと早くからアインさんの言う通りにしとけば良かったなあ。
日が暮れて、今日の魔法講習の受講者の方々は帰っていった。
帰るときに受付で冒険者について聞いてくる人が何人かいて、その人に説明するのも私の仕事。
全員ってわけじゃないけど、何人かは私が説明して冒険者になるって決めてくれた人もいて、私がその人の生活に影響を与えてるって思うと、重大な仕事なんだなって実感する。
そして、ここからが受付の仕事の中でも一番大変で重要な仕事。
受講者の方々が帰っていったあとは仕事を終えた冒険者が帰ってくる。
冒険者の仕事や態度、性格を考慮して冒険者ランクの査定、遷移魔法を教えるかどうかの見極めをしていく。
「フェリシアさん、今日は私が一緒に受付に立ちますね」
「ユフィ!うん、よろしくね!」
私1人ではまだ心配だからって、帰ってきた冒険者の対応をするときだけは誰か1人が付いてくれる。
この業務は複雑でまだ分からないことが多いけど、早く私1人でも安心して任せてもらえるように頑張ろう!
「もう受付の仕事には慣れましたか?」
「うん!さっきも冒険者になるって言ってくれた人がいたんだよ!」
「良かったですね!どんな人でしたか?」
「自信が無さ気な人だったかな。でも真面目そうな人だったよ!」
「それなら今後が楽しみですね。遷移魔法についてはどうですか?」
遷移魔法かあ。
真面目で謙虚、そして絶対に人に向けて使わないって確信が持てる人にしか教えちゃいけないんだよね。
「今後次第、だね。冒険者として経験を積んで自信が付いたときにどうなるかはまだ分からないかな」
「はい!満点の回答です!」
「えっ、どういうこと?」
「今のはフェリシアさんの人を見る目を確認する試験だったんです。
これなら受付の仕事は全部任せられる日も近そうですね」
「そうだったの!?もー、そういうことなら先に言ってよー」
「えへへ、すみません。でも先に言ったら試験になりませんから」
「ううん。それより……」
「あっ、冒険者さんが帰ってきましたよ」
ギルドの入口を見ると冒険者4人が荷物を持って入ってきたところだった。
ユフィとの雑談は終わり。
仕事に集中しよう。
「こちらにどうぞー!」
冒険者が近付いてきて、3人分の冒険者章と荷物が入った麻袋をドサッとカウンターに置いた。
「ゴブリン3匹だ」
「今確認しますねー」
麻袋を開けると、そこには解体されたゴブリンの太もも肉がいくつかと討伐確認部位の右耳が3つ、そして、生臭い匂いが充填されていた。
太もも肉を順に取り出していきながら、肉の状態を確認していく。
「太もも肉は買取と持ち帰りのどちらになさいますか?」
「買取だ」
「血抜きが不十分なものがあったようでして、十分に血抜きされた肉にも匂いが移ってしまっています。
買取金額が下がってしまいますが、よろしいでしょうか?」
「……どれだ?」
肉を一つずつ確認していると、黒っぽくなっている肉をいくつか発見した。
「こちらですね」
黒くなった肉を冒険者側に差し出す。
「……アロンツォ!お前のだぞ!」
「ゴブリンの援軍が来て逃げるしか無かったときのやつだろ!
なあ、あんた。あんときは仕方なかったんだ。
ここはおまけしてくれねえか?」
「すみません、匂いが移ってしまっておりますので……」
「そこをなんとかよー。
今度エール一杯奢るからよ」
「申し訳ございません……」
「チッ……融通が効かねえやつだな」
「それで、報酬は合計でいくらだ?」
「討伐報酬で600ゼニーです。買取金額は……」
匂いが強いものは買取できなくて、匂いが弱いものは半額で脚1本あたり50ゼニー。
それが3本だから……。
「150ゼニーで、合計で750ゼニーです」
「……そうか」
「命掛けたにしちゃ割に合わねえな」
「明日一日休める程度じゃあな」
カウンターに置いた硬貨を受け取った3人の冒険者はそのままギルドの外へと歩いていった。
「あまり気にしないでくださいね。
あの人たちはああいう人たちですから」
「うん、職員評価表でも酷い評価だね……」
カウンターの下に隠してある表で冒険者章で確認した名前を探すと、既に遷移魔法を教えないことと、星5には昇格させないことが決まっていた。
冒険者から受け取った討伐確認部位や脚を倉庫に持っていこうとすると、ギルドの入口の扉が大きな音を立てながら開いた。
「アインさんはいますか!?」
そこに立っていたのはギルドの制服を着た見慣れない男の人。
年齢は私と同じくらいかな。
息を切らしてかなり慌ててるみたいだけど、どうしたんだろう。
「3階にいます。緊急連絡ですか?」
ユフィが受付から出て、声を掛けながら階段の前に移動した。
「早く逃げるように言ってください!もう騎士団が」
「逃げる?それは我らに逆らうということか?」
ギルド職員の後ろから白い金属の鎧を着た人たちが姿を現した。
あれが騎士団の人たち……?
「うっ……いえ……」
「アインはいるんだな?なら今のは聞かなかったことにしてやる。早く連れてこい」
「その必要はない。……騎士団?」
騒ぎを聞きつけてくれたのか、アインさんが階段から降りてきていた。
「貴様がアインか?」
騎士の1人が羊皮紙を取り出して、それとアインさんの顔を見比べている。
「私がアインです。騎士様がこんなところまで何用でしょうか?」
「コーマという人物に魔法を教えたのは貴様で間違いないな?」
「はい、間違いありません」
「そのコーマが殺人を行った可能性がある。エストーラまで来てもらおう」
「コーマが!?」
コーマが殺人!?
……この前の盗賊のことだよね?
盗賊じゃない人を殺したりなんてしてないよね?
いくらコーマでもそんなこと……しないって信じたいけど……。
「連絡係のニコラだな?本当か?」
「はい、本当です……」
「そうか……」
本当にコーマが盗賊以外の人を殺したの……?
そんな……なんで……。
「確認は済んだな?では着いてこい」
「はい……。ユフィ、ギルドは任せる。
くれぐれも早まったことはするなよ」
「かしこまりました……」
アインさんは騎士団の人たちに連れられ、ギルドから出ていった。
えっ、アインさんはどうなるの?
コーマはともかく、アインさんまで死刑になるの?
そんな……。
「ニコラさんは私に付いてきてください。
他の皆さんはいつも通り業務を!
冒険者さんが列を作っています。」
ユフィがみんなに声を掛ける。
ギルドの入口を見ると沢山の冒険者が列を作っていた。
そうだよ、ユフィならきっとなんとかできるアイディアを考えてくれるはず!
私は今日の業務を終わらせないと!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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次回の更新は2026年4月13日の予定です。




