表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/85

第38話 襲撃

 フェリシアの亡骸を抱え、村へと戻る。

 途中生き残っていたゴブリンと合流し、そいつらにもゴブリンの死体の回収を指示させた。


 フェリシアと暮らしたのはたったの3ヶ月。

 だけど、この3ヶ月は前世を合わせた今までの人生の中で最も幸福な3ヶ月だった。

 フェリシアの笑顔を見るためならなんでもしたし、これからもするつもりだった。


 なのに。

 それなのに。


 なぜこんなことになった。

 なぜフェリシアは死んだんだ。


 フェリシアは俺がこの世界からも旅立つことを考えていたときに、唯一この世界に残る理由をくれた、俺の、俺だけの希望だったんだ。

 だがそんな希望も……。


 王立騎士団。

 フェリシアが殺してくれって言ってた奴らだ。

 諸悪の根源はこいつらだ。

 元より殺すつもりだったが、もうそれだけじゃ済まさない。

 あいつらの家族も、大事な人も、全部殺してやる。


 いや、それだけじゃ足りない。

 人間全員だ。

 全員、俺が殺してやる。

 まずはエストーラだ。



 フェリシアを村の墓地へ埋葬し、墓標を建てた。

 フェリシアが好きだった野苺や花を添え、手を合わせる。


 先の襲撃では大多数のゴブリンが死んだ。

 フェリシアの墓標の周りには沢山の墓標を作る予定だ。


 みんなと一緒ならフェリシアも寂しくないよな。

 この世界の人間を全員地獄に叩き落したら俺もそっちに行くから少しだけ待っていてくれ。

 ……いや、俺も行くのは地獄か。


 俺はこれから王立騎士団も貴族も、それ以外の人間も全部殺すから、天国から応援していてくれ。


 ◇◆◇◆◇ 


 死んだ全員のゴブリンの墓を立て、カミルの墓にも手を合わせ、周りを見渡す。

 生き残ったゴブリン達は墓の前で声を出しながら泣いている。

 ここにいるゴブリンたちに親しかった者を亡くしていない者なんていない。

 こいつらなら共に人間共を殺してくれるはずだ。


『みんな、聞いてくれ』


 ゴブリンたちは泣きながらも俺の方を向いて話を聞いてくれる。


『みんな大切な者を亡くしたよな。

 俺もそうだ。

 俺もフェリシアを亡くして悲しい。

 だが考えてみてほしい。

 なぜ俺達は大切な者を亡くすことになったんだ?』


 ゴブリンたちは考えを巡らせているのか、俺から目線が外れる。


『それはあの人間共がここに来たからだ』


 ゴブリンたちの目線が再び俺に集まった。


『ここに来た人間共は確かに全員殺した。

 だが、人間は他にもいる。

 その中にはここに来た人間の仲間もいるだろう。

 俺達の大切な者は死んで、そいつらが生きているのは納得できなくないか?』


 ゴブリンたちの目の色が変わる。

 そうだよな。

 みんな同じ思いだよな。


『俺達の手でそいつらを全員殺してやろう!

 武器ならここに沢山ある!』


 そう言いながら王立騎士団が持ってきた武器・防具を集めておいた場所を指差す。

 だがまだ反応が悪いな。


『自分たちにできるか不安の者も多いだろう。

 だが、お前たちには俺がいる。

 人間共と正面から戦って傷一つ付かなかった俺がだ。

 そしてお前たちも、先程森で沢山の人間を殺しただろう?

 あのときの体験を思い出してみろ!』


 そうだ、思い出せ。

 お前たちは人間を殺したんだ。


『今、自分たちにもできる。

 人間共を殺しに行きたいと思ったやつは俺と一緒に来い!

 俺は、人間共を絶滅させる!

 出発は明日の日没。

 それまでに覚悟を決めておけ』


 ゴブリン達の何匹かの瞳には決意の心が見えた。

 YouTubeの演説の方法を説明している動画がこんなところで役に立つなんてな。

 これで何匹一緒に来てくれるか。

 俺1人でもやり遂げてみせるが、ゴブリンが一緒に来てくれたら遥かに楽になる。

 街を一つ潰した後なら、他の村のゴブリンも協力してくれるだろうが、エストーラはここにいるゴブリン達とだけでやり遂げる必要がある。


 武器や防具を集めておいた場所へ向かい、自分に合う防具を探す。

 これがあれば密度の低い魔法は無視できる上に、相手に高い密度の魔法を強制できる。

 あと、剣も削ってゴブリン達にも扱えるようにしないと。

 何個作ればいいかは分からないが、これからのことを考えたらいくらあっても良いだろ。


 ◇◆◇◆◇


 翌日、少し早目の夕飯を取り、鹿肉で腹を満たした。

 日は完全に沈み、出発の時間となった。


 貴族の鎧を纏い、武器を集めていた場所に立ち、エストーラの方向を眺める。


 俺は今日、あの街の人間を全員殺す。


『コーマ』


 振り返るとダミアンを始めとした、沢山のゴブリンがそこに並んでいた。

 全員が覚悟が決まった目をしている。


『ダミアン、全員か?』

『ああ。人間を滅ぼそう』

『よく言った。

 ダミアンとエラは弓を持て。

 それ以外は剣だ。

 サイズは合わせたから振れるはずだ』


 狩猟組の多くは死に、残った者は農業しかしたことがないか子供が多い。

 子供と言っても乳児はもういない。

 ゴブリンの年齢を人間に換算すると、一番若いので小学校高学年くらいだ。

 寝ている人間を剣で刺すくらいはできるだろ。


『準備が出来たら行くぞ。

 エストーラに着く頃には人間は全員寝ている』


 ◇◆◇◆◇


 エストーラの門の前に着いた。

 大きな石造りの壁に、木製の門扉。

 少し硬いが、俺の魔法で壊せないものなんてない。


 門扉に自分が入れる程度の穴を空けて入り、ゴブリン達を中に招く。

 ゴブリンは全部で23匹。

 王立騎士団が来る前までは70匹以上いたから3分の2以上も殺されたってことだ。

 そんな中ダミアンとエラが生き残ってくれたのは幸運だった。


 街の中はほとんど暗闇であり、星明かりのみが光源だ。


『チームに分かれて作戦開始だ。反撃されたら迷わず逃げろよ』

『ああ。みんな、無事に再会しよう』


 ゴブリン達はいくつかのチームに分かれ、散り散りになった。

 ゴブリン達には寝静まった民家に入って殺していくように命じた。

 これなら例え魔法使いが相手でも問題なく殺せる。


 そして俺は、未だに寝ていない奴らを殺しに行く。

 日が沈んでからかなりの時間が経った。

 夫婦の営みですら終わっているような時間だ。

 こんな時間でも起きている奴らなんて、よっぽど持続力がある夫婦か朝まで飲むような奴らだけだ。


 明かりが点いている建物に近づくと、見覚えのある建物を見付けた。

 これは……ギルド直営の酒場兼宿屋だ。

 その近くを探すと、火事が起こったのか、ボロボロのギルドや職員用の寮があった。

 少し前にフェリシアとエストーラの近くに来たとき、街の中の何箇所かで火事が起こっていたが、そのうちの二つはここだったのか。

 ギルドや寮はボロボロなのに酒場兼宿屋は無事なのはおかしな話だな。

 運営団体は同じなんだから、こっちもボロボロになっとけよ。


 酒場兼宿屋に入ると、6人の男が酒を呷っていた。


「ん?その鎧は……ホアキンか?1人なのか?」


 なんで鎧だけで名前まで分かるんだ?

 王立騎士団の鎧を知っていたとしても名前までは分からないはず。

 まさか……。


「お前らは王立騎士団なのか?」

「は?何言って……待て、お前誰だ」


 魔臓で魔素を集め始めるが、もう遅い。

 右手から圧縮した魔素を出し、6人の首を一気に落とす。


 立ち上がりかけていた奴がいたせいで少し音がした。

 もし上の階で寝ていたやつがいたら起きたかもしれんが、深酒していたらそれもないだろ。


「あの、何かありましたか〜?……ひっ」


 酒場の奥から1人のウェイトレスが出てきた。


「こいつらは王立騎士団なのか?」

「はっ、はい、そうです!

 ギルドの方ですか?

 ありがとうございます。

 助かりました!」


 助かった?

 何を勘違いしているんだこいつは?


「あのっ、上の階にもいます!」

「そうか……。他には?」

「領主の屋敷で歓待されている方が何人かいます」

「領主の屋敷はどこにある?」

「街の北側です」


 南から街に入ったからここからだと反対側か。

 何人か程度なら問題無いし、明かりが点いているところを回りながら目指すか。


「分かった。じゃあ、もうお前は用済みだ」

「え?」


 ウェイトレスの首を落とす。

 さて、まずは上で寝ている騎士共を殺すか。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


感想や評価、リアクションをいただけると、とても励みになります!


次回の更新は2026年3月30日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ