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95話 島流し令嬢の幸せな生活



「皆さま、飲み物は行き渡りましたか?」



「「「はーい」」」



「えー、こほん。それではこれよりマージンス島防衛成功やったねパーティーを開催します! 皆さまお疲れ様でした! 乾杯ですわ~!!」



「「「かんぱーい!!!!」」」



 ギリス王国・アイル王国連合軍の襲撃から数日後。

敵の浮遊艦隊を破壊して見事マージンス島を守り切ったわたくしたちは、草原エリアの本拠地にみんなで集まって防衛成功のお祝いパーティーを開催していた。

戦いが終わってしばらくは、島に流れ着いた浮遊艦隊の残骸を片づけたり、島の中に上陸した残党がいないか、ロドス海賊団にも協力してもらって他の艦隊などが待機していないか周囲を警戒していたが、その辺りの事もひと区切りついたので盛大にお祝いをすることにした。



「ゴク、ゴク、ゴク……ふぅ~! 中々美味い酒なんだな」



「まったく、こんなもんを艦隊に積んでおったとはのう」



「指揮官連中は優雅に酒でも飲みながら兵が島を制圧する様子を眺めて過ごすつもりだったんだろう」



「お酒の趣味は良いけれど、考えてることは悪趣味ねえ」



 今回の戦いでは、こちらの被害は出さずに全員無事に生き残ることが出来たが、相手はおそらくほぼ全滅。

かなりの死者が出たし、殺したのはわたくしたちだ。

勝利して島を守ることが出来たことに喜ぶ気持ちもあるが、やはり精神的にしばらくはきつかったと思う。特に子供達にとっては。

でも、いつまでも暗い気持ちでいては仕方が無いので、今回の戦で犠牲となった人たちを慰霊してからは気持ちを切り替えて再び島での生活を楽しむことにした。



「美味いごはん、たくさん!」



「これって、なんのお祝い?」



「うふふ、色々なお祝いよお。アナタたちが島に来た歓迎会とかねえ」



「さあさあ、お料理が出来ましたよ。冷めないうちにどうぞ召し上がってください」



「腹いっぱい食べるんだぞ」



「チャンドラ姉ちゃんは食べ過ぎだよ」



「「「あはははは!」」」



 マヨルカとメリーナの作る美味しい料理に子供たちやチャンドラが集まっていく。

少し前にロドスが連れて来た元奴隷の獣人族の子供たちには戦があった事を言っていない。

まだそういうのが分からないくらい幼いし、島に来たばかりで襲撃されるような経験はしてほしくなかった。



「ふふ、マヨルカはすっかり子供たちの母親代わりだねえ」



「あのギリスの黒魔女が随分と穏やかに笑うようになったのう」



「何はともあれ、子供たちが元気そうで良かったですぜ」



 子供たちを連れて来たロドス海賊団と、マヨルカと同じくギリス王国軍で働いていたシュリーが優しい眼差しで彼女と子供たちを眺めながらお酒を飲む。

軍で毒薬開発の研究をしていたマヨルカだが、島では野菜やハーブを育てながらみんなの為に美味しいごはんを作ってくれている。



「あれから王国連中の動きはどうなってる?」



「開発に大金をつぎ込んだ浮遊戦艦を失なっただけでなく、多くの優秀な兵も失ったからな。まあ、しばらくは大人しくしているだろう」



 ミロスとクリストファーが襲撃後のギリス王国とアイル王国の情勢について話し合っている。

やはり元傭兵と王国軍の兵士だ。どんな時でも頭の片隅で島を守ることを考えてくれている。



「それに、その内〝あの映像〟も世界中に拡散されるだろうしな」



「ああ〝あの映像〟ですわね」



「あの映像? なんなんだそれは?」



 わたくしとミロスの言う『あの映像』について知らないクリストファーが頭に疑問符を浮かべている。



「岩山エリアに設置した撮影用魔道具で、浮遊戦艦の襲撃を一部始終映像に納めてあるのです」



「その映像をロドスに渡したんだ。全世界に広めてくれってお願いしてな」



「ばっちり広めてやるから安心しな」



「なるほど……そんなのが拡散されたら国際社会からの非難は免れないな」



「島から魔原石を買っている国や観光に来てくれるやんごとなき身分の方たちからも圧力がかかりますわね」



 これでもう、ギリス王国とアイル王国はマージンス島に手出しが出来なくなるだろう。

この間の襲撃で世界中を敵に回してしまったのだ、むしろ自分たちが攻め込まれる心配をしなくてはいけない。



「は~! そんなえげつない事を裏でやってたとはな。怖い怖い。怖い夫婦だまったく」



「ちょっ!?」



「おいクリス! だ、誰と誰が夫婦なんだよ!」



「誰って、ミロスとアーシアだよ」



「わわわ、わたくしとミロスはそういうのではありませんわ!」



 クリストファーにいきなりとんでもないことを言われて顔が熱くなってしまう。



「あら~? なんだか面白い話をしてるじゃないのお」



「コイバナですか? 私そういうの大好きです!」



「おいこっちくんな! そういうのじゃねえって!」



「なんじゃなんじゃ、酒のツマミに美味い話かのう?」



「アーシア、顔が茹でたカニくらい真っ赤だぞ」



「その例えはやめてくださいまし!」



 理不尽な島流しに遭い、何も無い生活に戸惑い、色々と辛いことも、上手くいかなくてもどかしさを感じることもたくさん経験した。

それでもわたくしは今、かけがえのない仲間たちと一緒に幸せに暮らしている。

島に来てまだ1年だ。これから先、また新たな出会いが待っていることだろう。



 それに、この島には多くの未開地が残っている。

もしかしたら魔原石以上のお宝も眠っているかもしれないし、そんなお宝を狙って新たな脅威が襲いかかってくるかもしれない。

それでもわたくしたちはこの島での暮らしを続けていく。悩み、悲しみ、喜び、楽しく生きていくのだ。



「アーシア! この頭お花畑の連中をどうにかしてくれっ!」



「……ねえ、ミロス」



「な、なんだ?」



「マージンス島での生活は、どうですか?」



「どうですかってお前、そんなもん……最高に決まってるじゃねえか!」



「ふふっ、わたくしもですわっ!」




 おしまい。



 島流し令嬢の無人島開拓奮闘記、これにて完結です!

最後の方がだいぶ駆け足になっちゃいましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

主人公のアーシアが14才設定なのでさすがに恋愛関係までには発展させませんでしたが、自分で書くならこれくらいのちょいラブ要素が丁度良いみたいです。

え? 『そもそも経験少ないから書けないんだろ』って言いました? 実はそれ……正解なんです。



 ところで『無人島にひとつだけ持って行けるとしたら何にする?』みたいな質問あるじゃないですか。

あれ、皆さんなら何を持って行きますか?

ちなみに私は『日本』です。ご愛読ありがとうございました。

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