89話 狂犬コンビですわ!
「狂犬クリスと、狂犬ミロス……?」
「アイル王国軍時代のあだ名さ。狂犬コンビってことで、結構敵から恐れられていたんだぜ」
「センスのないヤツらが付けたセンスのない呼称だよ」
メリーナとクリストファーを迎えたあと、みんなで浜辺に集合してバーベキューパーティーを開催する。
最近、ロドス海賊団が荷物の受け渡しの為に島に滞在する際の夜はだいたいこんな感じで食事をしている。
「ミロスは人狼族だから分かりますが、どうしてクリストファーも狂犬なのですか?」
「そこは自分も不思議でねえ。狂犬要素なんて無いと思ってるんだけど」
「そう思ってるのはお前だけだ、クリス」
「この人、争いごとになると人が変わったように凶暴になっちゃうのよ」
「しかも自分ではそれを覚えてないときた。オレ以上に狂犬だよ」
「ううー……納得できないが、みんなにそれを言われるんだよな……」
戦いの時の記憶がないのに今まで生き残ってるということは、狂犬モードの時はただ無鉄砲なだけじゃなくて能力も高いという事ね。
「というか、まさか『ギリスの黒魔女』までこんな所にいるとは……」
「ギリスの黒魔女?」
メリーナが少し離れた所の焚き火で魚を焼くマヨルカに視線を向ける。
「あら? もしかしてアタシの話かしらん?」
「マヨルカ、ギリスの黒魔女って呼ばれてたんですの?」
「そういえば、アイル王国ではそういう風に呼ばれてるらしいって噂を聞いたことがあるわねえ」
「マヨルカさんの毒薬を使用した暗殺って、成功率が異常に高いんですよ。即効性で無味無臭。中和薬もほぼ作れない謎の毒……一時期、私も毒薬の成分解析に携わりましたが全くもって歯が立ちませんでした」
「お褒め頂き光栄だわあ」
元ギリス王国軍所属の毒薬調合師のマヨルカは、今では美味しいごはんを作ってくれる島のお母さん的な立ち位置に。
環境が変わればやるべきことも変わってくるということですわね。
こんなところじゃ生まれた国同士でいがみ合っても仕方ありませんわ。
「この後クリスたちはどうするんだ? ここに住むってんならオレたちは歓迎するが」
「それなんだが、このまま自分とメリーナはロドス船長の船にお世話になろうと思っている」
「助けてもらった恩もあるし、人手も足りてないらしいの。私なら薬関係の目利きもできるし、島で採れる素材の評価もそれなりにできるから」
海賊船から商船へとジョブチェンジしたロドス海賊団。
以前よりも仕事が増えたらしくマージンス島と他国の取り引きも手伝ってもらっているので結構忙しいとは聞いていた。
薬師のメリーナと軍人のクリストファーが船員として力になるなら荷物をお願いしているわたくしたち的にも心強い。
「あっしらは船の上では無敵……と思わせて治療や薬の知識を持ってる奴はいないんでさあ」
「最近、他の国の船にちょっかいかけられることも多くなったから戦える人が増えるのは助かるよ」
「ちょっかいですの?」
「アンタたちマージンス島と独占取引してるアタイたちが気に入らないのさ。悔しけりゃ自分たちも島に来てみろってんだ」
周囲に生息する危険な魔物や複雑な潮の流れの影響で、マージンス島を行き来することのできる船は今のところこのロドス海賊団を除いて皆無。
観光船でも来てくれれば厚いおもてなしをして差し上げるんですが……
「あっそうですわ。ロドスたちに観光ツアーをやってもらえれば良いかもしれません」
「観光ツアー? なんだいそれは」
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