15話 衣食住の「衣」ですの!
春期の初月、無人島生活……1週間目くらい。天気:快晴。
「ミロス~! でっかいカニが採れましたの~!」
「おう、やるじゃねえかアーシア。今夜はカニ鍋だな」
鉄骨ウミガメの甲羅を鍋として使えるようになってから……というかミロスと出会ってから、わたくしの生活はかなり豊かになった。
豊かになったというか、まあそれなりにちゃんとした食事とお水を確保することが出来るようになり、明日死ぬかも分からない、みたいな状況からは脱せたと思う。
「ミロス、何をやっているんですの?」
「ん? ああ、昨日食ったオオハサミエビモドキの殻をちょっとな」
「エビモドキの蒸し焼き、美味しかったですわね……」
ギリス王国から島流しにされ、この無人島で暮らすようになって数日。
わたくしが新しく知ったことは、意外と魔物の身体や島に生えている草木は、家の素材にできたり、調理器具や食器になったりするということ。
「ほらアーシア。これをお前にやろう」
「これって、ハサミですの?」
「ああ。オオハサミエビモドキの手は中身を洗って乾かせばそのままハサミとして使用できる。ほら、予備もあるぞ」
「そっちは左手ですのね」
魔物には身体の一部が異様に硬くなっていたり、金属の刃のように鋭くなっている種類がいる。
戦うのは危険だが、倒して正しい処理をすれば武器にも調理器具にもなる。
オオハサミエビモドキさんの命に感謝。大切に使わせてもらおう。
「うふふ、これで食材の採取が楽になりますの~♪」
「……分かったから、海から上がったならはやく服を着てこい」
「下着は着けていますの」
「そうか、ならじっくりとその質素な身体を眺めさせてもらおうか」
「~っ!! 服を着てきますの!」
住む所も何とかなった、食事も今の所大丈夫。足りてないのは衣・食・住の『衣』だ。
わたくしが持っている服は、島に来たときに着ていたドレスと下着、それから非常食や水の入った木箱に入れられた着替え用のワンピースと下着が1着ずつ。
ミロスも同じようなものだ。
「ミロスは良いですわよね。すっぽんぽんでももふもふだから」
「なにが良いのか全く分からん。ちゃんと腰に帆布巻いてるだろ」
浜辺に流れ着いた船の帆に使っていた帆布はとても便利で、水を弾くので家の屋根に使ったり、衣服代わりにすることもできる。
わたくしも最近は、帆布を服代わりにして腰と胸に巻き、元々持っていた服は着潰さないように保管している。
それに森の探索ならこっちのほうが動きやすいし。
「でも本当はもっと可愛いのが欲しいですわ」
どちらかというとふわっとしたガーリーな服よりはある程度動きやすくてシンプルなほうが好きだけど、さすがに今のコーデはワイルドすぎる。
それに今の季節は暖かいから良いけど、秋期や冬期に入ったらさすがに厳しいだろう。
「森に生えている草を編んだり、魔物の毛皮とかで服を作れば……でもそんな技術わたくしにはありませんし……」
よし、寒い日は最悪ミロスに抱き着いて暖を取ろう。
「ミロス、お願いがありますわ」
「ん~? なんだ~?」
「冬になったらわたくしの毛布になって欲しいですの」
「オレを殺す気か?」
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