14話 カメ肉のお鍋ですの!
グツグツ、コトコト。
「もう出来ましたの? 食べていいですの?」
「もう少し待て、しっかり火が通らないと……」
「お腹空きましたの!」
「分かったから! スプーンでカンカン鍋を叩くな!」
夜になって雨が止んだので、ミロスが解体してくれた鉄骨ウミガメの肉と鍋代わりの甲羅を使って早速料理を作ることに。
解体したカメ肉はかなりの量が手に入ったので、これでしばらく食事には困らなそうだ。
「それにしても、ミロスは器用ですわね。ヤシの実で食器まで作ってしまうなんて」
「適当にくり抜いただけだ。アーシアだってできるさ」
鉄骨ウミガメの甲羅で鍋的なものを手に入れたのは良かったものの、作った料理を取り分ける器が無かったので、ミロスがヤシの実をナイフでくり抜いて入れ物にしてくれた。
ついでにヤシの枝を削ってスプーンも作ってくれた。ミロスはすごい。わたくしもあとでナイフの使い方を教えてもらおう。
「ねえミロス~まだ煮えませんの~?」
「もうすぐ出来る。ヤシの実ジュースでも飲んで待っておけ」
「もう飲み終わっちゃいましたの」
料理の具はカメ肉とヤシの実の果肉、浜辺で拾った貝。味付けはお塩のみ。
鍋にしている鉄骨ウミガメの甲羅は、下からしっかり火で炙っても溶けることはなく、しっかりと鍋の役割を果たしてくれている。
「……よし、出来たぞ。熱いから気をつけろ」
「ありがとうございます! ん~! 美味しそうですわ!」
「はっはっは。アーシアはお嬢様のわりに解体も大丈夫だったし、ワイルドな料理でも物怖じしないんだな」
「ギリス王国軍の代表を務めるフォレガンドロス家の娘ですもの、これくらいなんてことないですわ」
将軍家の子供とはいえ、わたくしは一人娘の公爵令嬢。
王国軍の戦士として戦いの訓練や野営の練習を経験したわけではない。
ただ、子供のころから『フェアリーランド漂流記』を読んでそういう野性味あふれる暮らしに憧れていたわたくしは、お屋敷に出入りしていたお父様の部下の兵士たちから遠征したときの野宿の話や、山で魔物を捕まえて食べた話などを聞くのが好きだった。
「それではいただきますの。ふー、ふー……はぐ」
……もぐもぐ。
「どうだ?」
「……お、美味しいですの~!!」
わたくしはもうひとつカメ肉を掬って口に運び、ゆっくりと噛み締める。
塩で味付けしただけとは思えないほど、ミルキーでジューシーな旨味が口の中に広がってゆく。
「……うん、貝のダシが効いているな。それにヤシの果肉が溶け出して風味も良くなっている」
「ミルクを入れていないのにスープが白いのは、ヤシの果肉を入れたからなんですの?」
「そうだな。これは好き嫌いが分かれるかもしれんが……」
「わたくしは美味しいと思いますの!」
スープを一口飲んでみる。ほんのり甘くてまろやかで、なんだかホッとする味。
「カメ肉、とっても美味しいですわ!」
「そうだな、鉄骨ウミガメっていうくらいだから肉も鉄臭いのかと思ったが全然食べられる……お? これは当たりだな」
ミロスがスプーンでなにか丸いものを掬って食べようとしている。なにそれ、わたくし知らないわ。
「ちょっと、当たりってなんですの? ズルいですの!」
「ん、食べたいのか? まあもうひとつ入っているから譲っても良いが」
「なんですの? それ」
「何って、カメの目ん玉だが。栄養満点で美味いんだこれが」
「ミロス食べていいですの」
「そうか? じゃあもうひとつはアーシアに」
「ミロス食べていいですの!」
わたくしのワイルド料理レベルはまだまだだということを思い知らされましたわ。
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