13話 甲羅を鍋にしますわ!
「よいしょっと……うわ、重いなこれは」
「ヘビー級ですわ……!」
カメの魔物が死んで完全に動かなくなったのを確認してから二人で雨の当たらない屋根の下まで運び込み、ミロスが魔物を解体していく。
「……解体するところはけっこう精神的にキツいかもしれないから、寝床に戻ってても大丈夫だぞ」
「いえ、大丈夫ですわ。フェアリーランド漂流記でも解体シーンがあったし、むしろ興味がありますの」
「そうか」
ナイフでザク、ザクと魔物を解体していくミロス。
正直、かなりショッキングな画面ではある。
しかし、わたくしがお屋敷で食べていたウシやブタのお肉も誰かがこうやって解体していたのだから、そう思うとなんともいえない気持ちになる。
昨日食べたお魚や貝にも感謝しなくては。
「アーシアは、カメ肉は食ったことがあるか?」
「いえ、食べたことないですわ。カメって食べられるんですの?」
「ああ。鶏肉みたいで美味いぞ」
「それは楽しみですわ」
ミロスが甲羅と身体の間にナイフを入れて、慎重に甲羅部分を外す。
「取れた……うん、いい感じじゃないかこれは」
「ひっくりかえしたら本当にお鍋っぽいですわね」
大きなカメの甲羅をひっくり返してみると、思ったよりも深さがあってかなり水を入れられそうだ。
「でもミロス、この甲羅は火にかけても大丈夫なんですの? 焼け焦げて穴が空いてしまうんじゃあ……」
「普通のカメならそうなるな……だがしかし、コイツの甲羅は違う」
ミロスがコンコン、と甲羅を叩く。
どことなく教会の鐘のような篭った音がした。
「コイツはおそらく『鉄骨ウミガメ』の仲間だ」
「てっこつ、ウミガメですの……?」
「ああ。他にも鉄骨リクガメや鉄骨ヌマガメもいるんだが、まあその辺のウミガメバージョンだな」
「もしかして、甲羅が鉄で出来ていたりするんですの?」
「正解だアーシア。もっとも、鉄以外にも鉱物成分がいくつか含まれているらしいが」
鉄骨ウミガメは、普段の餌とは別に石や砂なども食べる。
そして鉄のように硬くて丈夫な甲羅を作る栄養にするらしい。
「だからあんなに重かったんですのね」
「もしかしたら、防御の他にも石のフリをして獲物を捕食したりできるのかもしれないな」
ミロスが黒曜石のナイフで甲羅の表面を軽く擦る。
カシュッ、カシュッ……シュバッ!
「火花が出ましたの!」
「ああ、つまりこの甲羅はオレが火起こしに使ってるこの鉄鉱石と似たような成分ってことだ。鍋として使えるだろう」
「やりましたの! お鍋ゲットですわね!」
これで集めた雨水を加熱して飲むことが出来るし、他にも色々な料理を作ることが出来る。
お鍋ひとつで一気に生活のクオリティを上げることが出来ますの!
「それじゃあアーシア嬢、おひとつお願いしたいことがあるのですがよろしいですかな?」
「勿論です。このわたくし、アーシア・フォレガンドロスにお任せですわ! で、何をお願いされるんですの?」
「オレはまだ肉の解体作業が残ってるから、代わりにこの甲羅を綺麗に洗ってくれ」
「任されましたわ!」
こうしてわたくしとミロスは、日が落ちて辺りが真っ暗になるまでカメ肉と甲羅の処理に勤しんだのであった。
くきゅ~……
「お、お腹が空きましたわ……」
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