ローズナイト
「おいおい、マジかよ」
ラッドは少し怖気づいています。
騎士の姿が青い薔薇を思わせる装飾、先程までの緑に包まれた姿は見る影もありません。
「ローズナイトって言ったところか?安直だけどよ」
爪をガチンガチンと鳴らせて戦闘態勢に入ります。
戦う意志を感じ取ったのかローズナイトも構えます。
「やる気満々だな……よし!」
意を決して飛び込みます。
爪撃を右、左と連続で繰り出します。
しかしそれを避けようとはせず、そのまま直撃。
攻撃したにも関わらずビートルは後退します。
その足元には崩れ落ちた爪があります。
少しずつ、少しずつさらに後退していきます。
「こいつは困った、困ったな……」
セクト国のビートルの武装は爪のみです。
対魔法兵器としての性能に特化したビートルにとって白騎士は言わば鴨。
しかしその自慢の装甲と同じ材質の爪は呆気なく破壊されてしまいました。
ラッドは必死に考えます。
自身の装甲がアドバンテージにならないことは想定済みだったはずだと。
だからこそ用意してきた策があるのではないかと。
「いや、無理だな」
考えてきた策は捨てました。
というよりは決行できなくなったというのが正しいです。
ビートルの切断された腕を見てから耐性が役に立たないことは想定していました。
だからこその次の策、それを決行するには爪が必要でした。
「逃げる……逃げれるか?」
自問自答を繰り返します。
彼にはいくつかの想定外がありました。
脇にある無線機のスイッチをオンにします。
「聞こえるかライト」
『……ああ、しかし何故連絡をしてきた!』
「悪い、緊急事態だ」
『なぁライト……誰と話している?この声の主は何者だ?』
『あとで話す!それより緊急事態ってなんだ?』
「あの植物騎士、姿が変わってる上に手強すぎる。武器もなくなって作戦が続行できなくなってしまった」
『なんだって!一旦撤退しろラッド!』
「無理だな、残念ながら逃げれる雰囲気じゃないね」
ビートルの機動力はホワイトナイトよりは高い性能があります。
無論、ローズナイト相手にも同様に言えます。
だがラッドは不用意に間合いに入りすぎたことに失敗を感じていました。
恐らく、早く動くと間合いを詰められ、両断されるのは避けられない。
直感がそれを知らせます。
『バーストモードを起動させる!』
『待て待て、今日はもう使っただろ!』
『じゃないと間に合わない!』
『あーもう!……たぶん1分か2分だぞ!』
『ラッド、持ちこたえろ!直ぐにいく!』
「そんな直ぐに来れないだろ!5分も持たねえよ!」
半ば自棄気味に言葉を発し、機体のレバーを引きます。
素手で戦う態勢です。
「クソッ!かかってこい化物め!」
今にも殴りかかろうと構えます。
それに反応し、ローズナイトも剣を騎士らしく構えます。
「クッ、ウオオオオオ!」
拳を振りかぶり、右ストレートを繰り出します。
しかし、目に止まらぬ速さで振られた剣はその右腕を切り落とします。
そのままその剣は振り下ろされました。
ビートルの前面の装甲が斬られましたが間一髪一歩後ろに下がったことで表面だけで済みました。
バランスを崩し、尻もちをつきます。
「こ、ここまでか!」
そのまま剣を振り上げ、振り下ろしを繰り出そうとします。
「うおおおおおおおおおお!」
真横から何かが勢い良く現れ、ローズナイトへタックルを繰り出しました。
赤く、燃え盛るようなカンガルーが間一髪やってきました。




