感染
視界が霞む――
必死に頭を叩き、意識を覚醒させようと必死です。
「どうした?」
「お、おかしいんだ……俺……アタシはどうなってる」
ライトは不思議そうに見ます。
様子はおかしいですが、見たままでいうなら正常に見えます。
「具合でも悪いのか?」
「違う、違うんだ。体、体が言うことを聞か……聞かな……」
ライトは彼女の肩を掴みました。
その感触は人肌の柔らかさではなく、柔らかい木を触るような感触です。
彼女はウイルスに感染していました。
「しっかりしろ!」
返事がありません。
進行が進んでいるようでした。
「集落地はもうすぐだ……えっ?」
たどり着いたその場所は目を疑う光景が広がっていました。
覆われた緑、見ただけでもわかる植人化した人々。
一人だけ這いずるように移動している人がいました。
「ドクター!」
カンガルーで近くへ行き、モニターから問いかけます。
返事はないですが、腕を震わせながら何かを渡そうとする素振りをしていました。
感染するかもしれない、そんなリスクを顧みずハッチをあけて彼の元へと向かいます。
「しっかり!……駄目か」
手に持っているノートらしきものをとり、コックピットへと戻ります。
急ぎノートを開き、中身を見ました。
最初はカルテのような記述がされていましたが、最後の1ページだけ走り書きがされていました。
そこにはこの地帯への感染拡大、注意喚起と対策について記されていました。
「な、何故こんなことに」
「そいつは簡単な話さ、ここに元凶が現れたからだ」
振り向くとそこにはラッドがいました。
思わぬ客人に言葉が出ませんでした。
「どういうことだ?」
「恐らく森の魔物の中身だろう」
「森の魔物の中身……?」
「ああ、魔物が誰かの手によって倒されたはずなんだがどうも様子が変なんだ」
「魔物が倒された?さっき俺は奴と戦ってたんだぜ?」
「倒したのはお前ではなく他の奴だと思う。ビートルの腕がそこには落ちていたからな」
「なるほど、それで変というのは?」
「そのビートルの腕なんだが、鋭利な武器で切断されたような痕があったんだ」
「あれを切り落としたというのか?」
「ああ、詳しい話はルイドでしよう。ここも危ない――」
ラッドは言葉を止め、急激に直線で加速します。
何かに体当たりを繰り出しました。
「な、なんだあれは!」
「ライト!急げ!離脱するぞ!」
巨大なマシン、風格のある剣、そして盾。
白く美しいフォルムを持つ白騎士を飲み込むような蔦、そして苔。
"植物に支配された白騎士"がそこにはいました。




