謎の男
「残念ながら連絡はないよ」
「そうか、ありがとよ」
少し不機嫌そうにルールは帰ってきました。
中立国ルイド、その向こう側は未開の土地とされています。
プラチナス国に限らず、多くの国が新しい資源や土地を求めて探索に行きます。
無謀な冒険をするものが後に絶えなかったため、今は許可制となっています。
「捜索隊も出たらしいが見つからなかったそうだ」
「ふーむ」
「仕方ない、俺達も未開の地へ行くか」
「えっ」
「えっじゃないだろ。元々探すのが目的なんだから」
「まぁそうだけど」
ルールは一人でカンガルーへ戻っていきました。
ライトはやれやれと思わず呟きます。
「君……あのロボットのパイロットかい」
後ろから誰かが話しかけてきました。
振り返るとそこには顔が整った男がいました。
どこかで聞いた声だと感じましたが、思い出せません。
「あんたは?」
「俺はラックア、あまり見られないものだから気になってな」
「目立つよなぁ、この星だと」
「この星、か。つまりこの星の生まれではないと」
「ああ、地球から来たんだ。いろいろあって、な」
「ふむ……となると今は帰る方法でも探してるってところか?」
少し言葉が詰まります。
「すまんすまん、で盗み聞きしていたわけじゃないがこの先の未開の地へ行くつもりか?」
「ああ、その通りだけど」
「数日前、未開の地に冒険者が休むための小さな集落地に病にかかった女がいると言う話を聞いた。さっきの女といいお前といい、プラチナス国のものだろ?おそらくその女はお前たちの探し人だ」
「病?」
「未開の地の一番近い森に生息する魔物が持っているウイルスに感染したんだろう。幸い人から人へ感染することはないが、その魔物の血がなければ彼女を救うことはできん」
「そ、そうなのか」
ライトは少し怪しいと感じました。
この男は何故ここまで詳しく、何故教えるのか、それがわかりませんでした。
「魔物はお前が乗るロボットぐらいの大きさはある。用心してかかるがいい」
「ありがとよ」
「礼には及ばんさ……礼には」
どうにも疑問が払拭しきれませんでしたが、ラックアと名乗った男はその場から去っていきました。
戻りが遅いからか、心配したルールがこちらへと戻ってきました。
「おいライト、どうした?」
「いや、あの男からさ……」
ライトは聞いた話を彼女に話しました。
すると険しい顔をしています。
「うーん、腐乱植物の魔物がいるって話を聞いたことがあるがそいつかなぁ。ちと厄介だ」
「そうなのか?」
「まぁ、カンガルーがいりゃなんとかなるだろう」
口ぶりは軽いものでしたが、表情は険しいままです。
彼女にとって仲間がそういう状態にあるということに少し複雑な心境なのだろうと考えます。
「そのラックアって男、何者なんだろうな」
「わからん、……そういやあいつ、カンガルーのことロボットって言ってたな」
カンガルーのことをロボットと呼んだ人間はライト以外では初めてでした。




