第5話「腹減っとるやろ?」
市場から戻る頃には、昼前になっていた。
屋台「源ちゃん」は、昨日と同じ場所にある。
石畳。
古い建物。
その中で、赤提灯だけが妙に浮いていた。
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源太:
> 「シッダウンプリーズ」
バンコを手のひらで指す。
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男は屋台を見回す。
調理台。
鉄板。
炭火。
見たことのない道具ばかりらしい。
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男:
> “…Interesting.”
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源太:
> 「インタレスティング?」
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男:
> “Strange. But… not bad.”
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源太:
> 「変わっとるって言いたいっちゃろ」
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なんとなくニュアンスで分かった。
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男は屋台の椅子へ腰掛ける。
だが背筋は真っ直ぐなままだ。
剣も手放さない。
完全には警戒を解いていない。
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源太は炭を整える。
パチ……パチ……
赤く熾った炭の上へ、串を並べた。
ジュウゥ……
肉から落ちた脂が炭へ弾ける。
白い煙が立ち上がり、
香ばしい匂いが一気に広がった。
男の視線が、わずかに動く。
源太は小さく笑う。
源太:
「腹減っとるやろ?ハングリー?」
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男:
> “…A little.”
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源太:
> 「絶対もっと減っとるたい」
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串を返す。
玉ねぎ。
キノコ。
肉汁が落ち、炭火が赤く弾ける。
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煙が立ち上る。
香りが屋台の外まで流れていく。
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通行人が足を止め始める。
昨日と同じだった。
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男はその様子を不思議そうに見ている。
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男:
> “People gather because of smell?”
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源太:
> 「飯は匂いが大事やけんね」
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もちろん全部は通じていない。
だが“smell”には反応した。
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焼き上がる。
源太は軽く塩を振った。
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男:
> “…Only salt?”
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源太:
> 「塩ばなめたらいかんよ」
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串を差し出す。
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男は少し警戒しながら受け取った。
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一口。
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動きが止まる。
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炭火の香り。
肉汁。
玉ねぎの甘み。
そして塩。
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男:
> “…What is this?”
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源太:
> 「焼き鳥たい」
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男はもう一口食べる。
今度は迷いがなかった。
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源太はその様子を見ながら、次の串を焼き始める。
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男:
> “…Good.”
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短い。
だが、かなり本気の声だった。
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源太:
> 「そらよかった」
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男は串を見つめる。
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男:
> “Inns serve meat. But not like this.”
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源太:
> 「あー、レストラン?」
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男:
> “Similar.”
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どうやら、この世界にも食堂のようなものはあるらしい。
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男は二本目へ手を伸ばす。
さっきより動きが早い。
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源太:
> 「気に入ったね」
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その時だった。
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屋台の外から、聞き覚えのある声がした。
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> “Buono…!”
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昨日、最初に串を食べた男だった。
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さらに後ろにも人がいる。
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昨日より多い。
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男は少し驚いた顔で外を見る。
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源太は炭を見つめたまま、小さく笑った。
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源太:
> 「なんか、客増えてきたばい」




