第26話「今日はビール祭りたい」
夕方。
宿前の屋台。
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炭火の赤が、ゆらゆら揺れている。
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鉄板の上では、ロック鳥肉が焼けていた。
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ジュゥゥゥ――。
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脂が落ち、香ばしい煙が立ち上る。
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その横では、砂ズリ串。
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炭火へ脂が落ちるたび、小さく火が爆ぜた。
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パチッ。
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源太:
> 「よし……今日はベリービジーたい」
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ロジャーは、屋台の前へ即席の木札を立てていた。
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そこには、雑な文字でこう書かれている。
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『ROC BIRD
TODAY ONLY』
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その下。
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『COLD BEER』
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源太:
> 「イングリッシュ分からん人もおるやろ」
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ロジャー:
> “They’ll understand the smell.” (匂いで分かる)
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実際。
通りを歩く人々が、次々と屋台を振り返っていた。
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「なんだあの匂いは」
「またあの屋台だ」
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ざわざわ。
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孤児たちまで集まってくる。
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孤児:
> “Marco! Marco!”
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マルコは炭火の前で、黙々と串を焼いていた。
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マルコ:
> “Caldo… caldo…” (熱い……熱い……)
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源太:
> 「落としたら食わせんけんね」
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マルコ:
> “SI!?” (えぇ!?)
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ロジャーは、焼き上がったオムレツを見て目を細めた。
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黄色い卵。
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そして、中から覗く赤いパスタ。
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ロジャー:
> “…Beautiful.” (綺麗だな)
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源太:
> 「料理は見た目も大事たい」
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その時。
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ロジャーの視線が、屋台の隅へ向く。
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銀色の箱。
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生ビールサーバー。
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ロジャー:
> “…You’re really doing it?” (本当にやるのか?)
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源太:
> 「祭りやけんね」
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サーバーの蓋が開く。
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中には、山のような氷。
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ひやり、とした白い冷気が漏れた。
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足元では、スライムがぷるぷる震えている。
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ロジャー:
> “…Madonna.” (なんなんだお前は……)
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源太は、ガラスジョッキを並べた。
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現代から一緒に来た、透明なジョッキ。
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夕日の光を受け、琥珀色に輝く。
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通行人たちが、ざわついた。
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「硝子だ」
「なんだあの透明さは」
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源太:
> 「よーし……」
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コックを倒す。
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ブシュッ――。
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黄金色の液体が流れ落ちる。
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しゅわわわ……。
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細かい泡。
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冷えた水滴が、ジョッキ表面を滑り落ちる。
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ロジャー:
> “…Cold…” (冷たい……)
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ロジャーは、恐る恐るジョッキを持つ。
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ひやり。
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目を見開いた。
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ロジャー:
> “…Cold beer.” (冷えたビールだ……)
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源太:
> 「キンキンたい」
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ロジャーは一口飲む。
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ごくっ。
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数秒、止まる。
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そして。
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ロジャー:
> “…THIS SELLS!!” (これは売れるぞ!!)
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周囲の客たちが、一気にざわついた。
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「酒だ!」
「冷えてるぞ!」
「なんだあの泡!?」
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一気に人が押し寄せる。
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源太:
> 「並ばんね!!」
> 「押したらオムライス潰れるけん!!」
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鉄板が鳴る。
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ジュゥゥゥ!!
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ズリ串が焼ける。
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パチパチ。
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冷えたビールが注がれる。
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ブシュッ。
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ガラスジョッキがぶつかる。
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カンッ。
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夜の屋台へ、笑い声が広がっていった。
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源太は汗を拭いながら、小さく笑う。
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源太:
> 「……祭りたい」




