第25話「ふわとろのあればい」
朝。
宿前の屋台。
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炭火の上では、大鍋の湯がぐらぐら沸いていた。
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その横。
小さなガスコンロの上で、小鍋が静かに煮えている。
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ぐつぐつ。
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赤いラズベリーが崩れ、甘酸っぱい香りが漂っていた。
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ワインビネガー。
少しの蜂蜜。
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源太は木匙で混ぜながら、小さく頷く。
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源太:
> 「……なんちゃってケチャップたい」
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足元では、スライムがぷるぷる揺れていた。
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その横。
吊るされたロック鳥の残り肉。
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大きな砂ズリ。
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そして木箱の中には、ロック鳥の卵。
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源太:
> 「あー……ズリ残っとったね」
> 「卵もあるし……」
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木台の上へ、
刻んだロック鳥肉
玉ねぎ
人参
茹でたパスタ
を並べる。
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源太:
> 「米無かけんねぇ」
> 「今日はこれたい」
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包丁でパスタを細かく刻む。
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トントントントン。
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粒みたいになった小麦麺を、鉄板へ放り込む。
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ジュゥゥゥ――。
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玉ねぎ。
人参。
ロック鳥肉。
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油を吸った香りが、一気に広がった。
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その時。
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宿の扉が開いた。
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ロジャー:
> “…What is that smell?”
(この匂いはなんだ)
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ロジャーは、小鍋を覗き込む。
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赤いラズベリーソース。
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ぐつぐつ。
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ロジャー:
> “…TONKOTSU?”
(……トンコツか?)
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源太:
> 「違うばい!」
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ロジャー:
> “…Not pork bone soup?”
(豚骨じゃないのか?)
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源太:
> 「果物たい果物!」
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源太は、小鍋のラズベリーソースを鉄板へ流し込んだ。
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ジュワッ!!
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甘酸っぱい香りが、一気に広がる。
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赤いソースが、刻んだパスタへ絡んでいった。
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ロジャー:
> “…Madonna.”
(なんだこの匂いは……)
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源太:
> 「よし……それっぽかね」
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源太はロック鳥の卵を割る。
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カコン。
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黄色い卵液が、熱された鉄板へ流れた。
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ジュワァァァ――。
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ロジャー:
> “…You cook eggs on iron?”
(鉄の上で卵を焼くのか?)
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源太:
> 「包むとよ」
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ロジャー:
> “…Wrap?”
(包む?)
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赤く炒めたパスタを、半熟卵の中央へ乗せる。
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そして。
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くるり。
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ロジャー:
> “…Madonna.”
(なんだそれは……)
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黄色い卵の塊。
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木匙を入れると、半熟卵がふわりと割れた。
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中から、赤いパスタが現れる。
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ロジャー:
> “…Pasta?”
(パスタだと?)
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源太:
> 「ロック鳥のなんちゃってオムライスたい」
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ロジャーは一口食べる。
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しばらく無言。
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そして。
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ロジャー:
> “…This sells.”
(これは売れる)
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源太は笑った。
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その時。
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源太は、屋台の隅へ置かれていた生ビールサーバーへ目を向けた。
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銀色の箱。
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源太:
> 「前は氷無かったけんね」
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ロジャー:
> “…Cold beer?”
(冷えたビールか?)
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源太はサーバーの蓋を開ける。
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ガコン。
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源太:
> 「ここに氷ばたくさん入れちゃらん?」
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スライム:
> ぷるっ!
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パキパキパキッ。
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透明な氷が、サーバーの中へ次々と現れていく。
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ロジャー:
> “…Madonna…”
(なんだこの屋台は……)
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源太はニヤリと笑った。
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源太:
> 「今日は祭りたい」




