第24話「乾かしんしゃった」
朝。
市場の隅にあるスープ工房には、今日も豚骨の匂いが満ちていた。
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寸胴から白い湯気が立ち上る。
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ぐつぐつぐつ……。
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源太は長い木杓子で鍋を混ぜる。
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源太:
> 「よか色たい」
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足元では、スライムが揺れていた。
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ぷる。
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工房の隅には、出汁を取り終えた大量の豚骨が積まれている。
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山のようだった。
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源太は一本持ち上げる。
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まだ重い。
湿っている。
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源太:
> 「もったいなかねぇ……」
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骨を指で押す。
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ぐに。
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まだ水分が残っていた。
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源太:
> 「骨粉になったらよかばってん」
> 「乾かすの時間かかるもんなぁ」
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源太は骨を戻す。
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その時。
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足元で、スライムが揺れた。
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ぷる。
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ふわぁ……。
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工房の空気が流れる。
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吊るしていた布が、わずかに揺れた。
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源太:
> 「ん?」
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さらに。
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ふわぁぁ……。
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乾いた風が、骨の山を撫でる。
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表面の水分が飛んでいく。
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カラ……。
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白く乾いていく骨。
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源太は一本持ち上げた。
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軽い。
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コン。
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木台へ当てる。
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パキッ。
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骨が、簡単に砕けた。
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白い粉が、ぱらぱらと落ちる。
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源太:
> 「……あれ?」
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また、微風が吹く。
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ふわぁ……。
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そこで源太の動きが止まった。
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源太:
> 「……雨の降って、しろしかった時と一緒たい」
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砕けた骨を見つめる。
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指で触る。
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さらさらになっていた。
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源太:
> 「お前……乾かしよったとね」
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しゃがみ込み、スライムを撫でる。
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源太:
> 「そげんかことも出来るようになったとや?」
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スライム:
> ぷる。
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源太は床へ落ちた白い粉を見る。
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そして、ふっと笑った。
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源太:
> 「……これ、使えるばい」
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工房の奥で、豚骨スープが静かに煮え続けていた。




