おまけ「しろしかね」
翌朝。
フィレンツェの空は、朝から灰色だった。
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ザーッ――。
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雨が降り続いている。
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石畳を叩く音。
軒先から落ちる雫。
市場も人通りが少なかった。
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宿の廊下には、洗濯物が並んでいる。
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だが。
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ロジャー:
> “…Still wet.”
(まだ乾いてない)
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ジェームス:
> “Again.”
(またか)
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三日続きの雨だった。
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布は冷たい。
じめっとしている。
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マルコ:
> “Che schifo…”
(気持ち悪いな……)
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源太は濡れた布を引っ張る。
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源太:
> 「しろしかね……」
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窓の外を見る。
空は真っ暗。
炭も湿気を吸っていた。
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屋台営業も今日は厳しい。
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源太:
> 「博多も梅雨はこんな感じやったね」
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ロジャー:
> “…Rain season?”
(雨の季節か?)
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源太:
> 「ずーっとジメジメたい」
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その時だった。
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足元で、スライムがぷるぷる揺れる。
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ぷる。
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ふわ。
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小さな風が吹いた。
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吊るされていた布が揺れる。
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ロジャー:
> “…Hm?”
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もう一度。
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ふわぁ……。
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今度は、湿った布の表面が少し乾く。
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ジェームス:
> “…Wind?”
(風か?)
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マルコは窓を見る。
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外は無風だった。
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だが。
室内だけ、微かに空気が流れている。
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源太:
> 「……ん?」
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スライムは、洗濯物の下で揺れている。
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ぷるん。
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ふわぁ……。
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布がゆっくり乾いていく。
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ロジャー:
> “…It’s doing that.”
(あいつがやってるぞ)
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源太はしゃがみ込む。
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源太:
> 「そげんかことも出来ると?」
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スライム:
> ぷる。
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アントニオ:
> “…Holy slime…”
(ホーリースライム……)
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だが本人は特に気にしていない。
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ただ、楽しそうに揺れていた。
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昼過ぎ。
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宿の廊下には、乾いた布が並んでいた。
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ロジャー:
> “…Useful.”
(便利だな)
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源太:
> 「便利かね〜」
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外では、まだ雨が降り続いていた。




