第20話「どげんかせんといかん」
ガラガラ……。
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赤提灯が揺れる。
石畳を、屋台ごと進んでいく。
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スライムは荷台の端でぷるぷるしていた。
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市場の賑わいが少しずつ遠ざかる。
細い路地を抜けると、古い石造りの建物が見えた。
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入口には小さな十字架。
壁は少し崩れている。
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アントニオ:
> “Here.”
(ここです)
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中庭には、小さな畑があった。
葉は細く、色も薄い。
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マルコは無言で土を見る。
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源太:
> 「……やせとるね」
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修道女たちが出てきた。
その後ろから、子供たちも顔を覗かせる。
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子供たちの視線は、すぐ串へ向いた。
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ロジャー:
> “…Hungry.”
(腹減ってるな)
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源太は炭を起こし始める。
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パチパチ……。
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アルミラージの串が焼かれる。
脂が炭へ落ちた。
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ジュゥゥゥ――。
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匂いが広がる。
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子供の一人が、小さく唾を飲み込んだ。
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焼き上がった串が配られていく。
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誰も騒がない。
夢中で食べていた。
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熱そうに頬張りながら、一本ずつ大事そうに食べている。
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源太は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
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スライム:
> ぷる。
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修道女が頭を下げる。
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修道女:
> “Thank you…”
> “Very much…”
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少しぎこちない英語だった。
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源太:
> 「よかよ」
> 「余りもんたい」
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修道女は困ったように笑った。
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その横で、ロジャーが通訳する。
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ロジャー:
> “Donations are getting smaller.”
(寄付が減ってるらしい)
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修道女:
> “Food… difficult.”
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ロジャー:
> “And crops don’t grow well.”
(作物の育ちも悪いそうだ)
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源太は畑を見る。
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乾いている。
土が軽い。
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マルコが指先で土を崩した。
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ぱらぱらと砕ける。
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マルコ:
> “…Non va bene.”
(よくないな)
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源太はしゃがみ込み、土を触る。
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炭の灰。
骨。
生ゴミ。
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屋台で毎日出るものが、頭をよぎった。
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子供たちは、まだ串を食べている。
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その姿を見ながら、源太は小さく呟いた。
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源太:
> 「……どけんかせんといかんね」
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夕暮れの風が、痩せた畑を静かに揺らしていた。




