第14話「きつかー」
朝。
宿の食堂には、まだ昨夜の酒の匂いが残っていた。
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マルコは周囲を見回す。
屋台は閉まったまま。
源太もいない。
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マルコ:
> “Non è tornato?”
(まだ戻ってないのか?)
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ロジャーは眠そうな顔でパンを齧る。
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ロジャー:
> “…Don’t tell me he’s still there.”
(……まさかまだあそこに居るのか?)
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市場外れの空き地。
壊れた荷車。
石壁。
そして――。
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グツグツグツ……
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寸胴は、まだ煮えていた。
炭火の前。
源太が座ったまま、うとうとしている。
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マルコ:
> “…Madonna.”
(なんてこった)
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ロジャー:
> “He stayed here all night.”
(こいつ徹夜したな)
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源太はゆっくり顔を上げる。
目の下には濃い隈が出来ていた。
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源太:
> 「オールナイトしてベリータイヤード」
「トゥデイはホリデーにするけん」
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ロジャー:
> “…You look terrible.”
(ひどい顔だぞ)
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その時だった。
ぷる。
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マルコの足元で、小さなスライムが揺れる。
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マルコ:
> “…Che cos’è?”
(……なんだこれ?)
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源太はスライムを抱き上げる。
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源太:
> 「あと友達出来たけん」
「マイフレンドたい」
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スライムがぷるぷる揺れる。
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ロジャー:
> “…He’s speaking like a broken priest now.”
(壊れた修道士みたいな喋り方してる)
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マルコは額を押さえた。
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マルコ:
> “Basta.”
(もういい)
> “Oggi chiuso.”
(今日は休みだ)
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源太:
> 「もうダメ……」
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そう言った直後。
その場へごろんと横になる。
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ロジャー:
> “…That was fast.”
(即決だな)
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炭火が静かに揺れている。
朝の風が、空き地をゆっくり吹き抜けていった。




