第11話「かまどば作るばい」
朝の空気はまだ冷たかった。
宿の前には、炭と薪が積まれている。
マルコが運んできたものだった。
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源太は炭を眺めながら、腕を組む。
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源太:
> 「豚骨ば炊ける……」
頭の中には、もう白いスープしかなかった。
長時間炊き続ける寸胴。
骨から出る旨味。
あの匂い。
あの味。
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源太:
> 「ばってん、炊く場所なかね……」
屋台の炭火では火力が足りない。
寸胴を長時間煮込むには、ちゃんとかまどが必要だった。
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マルコが地面を見下ろす。
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マルコ:
> “Fornace?”
(かまどか?)
源太:
> 「お、フォルナーチェ?」
ロジャーが笑う。
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ロジャー:
> “He’s asking if you need a stove.”
(かまどが必要なのかって聞いてる)
源太:
> 「必要たい!」
源太は両手で大鍋の形を作る。
さらに火を煽るジェスチャー。
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源太:
> 「ビッグスープ!」
ロジャー:
> “…Your English somehow gets worse every day.”
(お前、毎日英語下手になってないか?)
源太:
> 「通じとるけんよかろうもん」
マルコはしゃがみ込む。
そのまま地面へ木片で線を描き始めた。
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四角。
穴。
空気の通り道。
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職人の図面だった。
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源太:
> 「おぉ……」
マルコ:
> “Pietra.Fuoco.Pentola.”
(石、火、鍋だ)
源太:
> 「わかりやすか〜」
ロジャーが苦笑する。
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ロジャー:
> “You two understand each other surprisingly well.”
(お前ら、意外と意思疎通できてるよな)
それから急に作業が始まった。
宿の裏に積まれていた石。
割れたレンガ。
不要になった木材。
マルコは迷いなく組み上げていく。
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ゴッ
ガッ
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石を置く音が朝に響く。
源太も手伝う。
久しぶりの力仕事だった。
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源太:
> 「腰ぃ……!」
マルコ:
> “Vecchio.”
(年だな)
源太:
「なんか今バカにされた気がするばい」
ロジャー:
“He said you are old.”
(お前は年だって言ったぞ)
源太:
> 「やかましかっ」
ロジャーは樽の上へ座り、面白そうに眺めているだけだった。
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ロジャー:
> “This is definitely going to cause trouble.”
(絶対問題になるぞこれ)
源太:
> 「ならんたい」
ロジャー:
> “You’re building a stove in front of an inn.”
(宿の前にかまど作ってるんだぞ?)
源太:
> 「細かかことはよかと」
昼前には、簡易かまどが形になっていた。
荒い。
だが火力は出そうだった。
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マルコは炭を入れ、火を点ける。
ボゥッ……
炎が立ち上がった。
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源太:
> 「おぉぉ……!」
思った以上だった。
寸胴も置ける。
火力も強い。
これなら長時間炊ける。
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源太:
> 「豚骨ラーメンば作れる……!」
ロジャーが首を傾げる。
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ロジャー:
> “You keep saying that word.”
(さっきからその言葉ばっかり言ってるな)
源太:
> 「ラーメンたい」
ロジャー:
> “…Soup?”
(スープか?)
源太:
> 「違う。ラーメンたい」
説明は難しかった。
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その時だった。
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宿の扉が勢いよく開いた。
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宿主:
> “CHE STATE FACENDO!?”
(お前ら何をしてるんだ!?)
全員、動きが止まる。
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宿主は、宿の前に出来上がった“巨大かまど”を見て固まっていた。
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ロジャーが小さく呟く。
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ロジャー:
> “See?”
(ほらな?)




