第10話「炭ば持ってきんしゃった」
4日目の夕方。
屋台「源ちゃん」には、今日も炭火の煙が上がっていた。
ジュゥゥ……
焼き鳥の脂が炭へ落ちる。
香ばしい匂いが、石畳の通りを流れていく。
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> “Buono!”
(うまい!)
> “Another one!”
(もう一本くれ!)
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源太:
> 「はいはい、ちょっと待たんね」
串を返す。
炭の火は安定している。
だが。
源太は、炭箱の中を見て小さく眉をひそめた。
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少ない。
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源太:
> 「炭の減り、早かねぇ……」
ジェームスが串を齧りながら顔を上げる。
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ジェームス:
> “Charcoal?”
(炭か?)
源太:
> 「これたい。火ぃ起こすやつ」
炭を指差す。
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ロジャーが興味深そうに箱を覗き込む。
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ロジャー:
> “Good charcoal is expensive.”
(良い炭は高いぞ)
源太:
> 「やっぱ高かとねぇ……」
マルコが黙ったまま炭を手に取る。
指先で軽く叩いた。
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マルコ:
> “Carbone…”
(炭か……)
源太:
> 「お、カルボネ?」
ロジャー:
> “Carbone means charcoal.”
(カルボネは炭って意味だ)
源太:
> 「へぇ〜」
マルコは少し考え込む。
そして短く頷いた。
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マルコ:
> “Domani.”
(明日だ)
源太:
> 「ん?」
だがマルコは、そのまま焼き鳥へ手を伸ばした。
説明はない。
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翌朝。
まだ空気の冷たい時間。
宿の外から、大きな音が聞こえた。
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ゴト……ッ
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源太:
> 「んぁ……?」
ベッドの上で目を覚ます。
まだこの世界のベッドには慣れない。
だが屋台の簡易ベッドより、身体はかなり楽だった。
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源太:
> 「ドラスレなら宿屋に泊まったら完全回復するとばってんな……」
現実はそう上手くはいかない。
腰はまだ少し痛かった。
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もう一度、大きな音が響く。
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ゴトッ!
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源太:
> 「なんね朝から……」
上着を羽織り、窓から外を覗く。
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マルコがいた。
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背中には薪。
そして小さな荷車には、大量の炭。
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源太:
> 「うおっ!?」
マルコ:
> “Carbone.”
(炭だ)
源太:
> 「いや、見ればわかるって!」
マルコは当然のように炭を降ろし始める。
職人らしい無駄のない動きだった。
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源太:
> 「こんな持ってきてよかと!?」
後ろからロジャーも歩いてくる。
欠伸をしながら笑った。
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ロジャー:
> “He started gathering it before sunrise.”
(こいつ、夜明け前から集めてたぞ)
源太:
> 「仕事早かねぇ……」
炭。
薪。
大量の火力。
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その瞬間。
源太の頭に、ある料理が浮かんだ。
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白い湯気。
長時間炊き続ける寸胴。
骨から滲み出る旨味。
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源太:
> 「……これ」
マルコ:
> “?”
(?)
源太:
> 「豚骨ば炊けるやん……」
ロジャーが首を傾げる。
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ロジャー:
> “Tonkotsu?”
(トンコツ?)
源太はゆっくり笑った。
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源太:
> 「世界一うまかスープたい」




