天井
「ここが頂上か。ずいぶん時間がかかったけどようやくここまで来られたな。……で、どうしよう、これ。空が壁なんだけど……」
十三回目の木登りチャレンジで、ようやく巨大樹の頂上にたどり着いた。
我ながら快挙だと思う。
スーちゃんの力も借りていたが、かなり慣れてきたので割とスーちゃんがいなくても木登りが特技だと人に行ってもいいくらいには上達した。
そんな苦労の末、ついにてっぺんへとたどり着いたのだが、僕の目的はダンジョンの脱出であり、木登りはそのための手段でしかない。
ダンジョンに開いた穴に落ちた僕はここから脱出するためには階段のように上へ進むルートがあるのではないかと考えた。
だが、草原、あるいは荒野には階段らしきものは見当たらなかった。
そこで、上へとつながる可能性があるものとして、見つけた巨大樹を登ろうと考えたわけだ。
そして、その巨大樹のてっぺんまでやってきて初めて知った。
ダンジョンの空は空ではないということに。
雲一つなく、太陽もないのに晴天で明るい空がここでは存在している。
違和感があれども、地面から見上げると普通に「天気のいい空」であるとしか認識できなかった。
だが、天を衝くほどの巨大な木のてっぺんにやってくると、それが本物の空ではないと、はっきり思い知らされた。
僕は今、ダンジョンの空に触れている。
……硬い。
空のはずなのに、指先に返ってくるのは確かな抵抗だった。
僕の両手が青空に触れ、そこには物質的な硬さを感じていた。
手で触れていてもまだ先がありそうに思う青空は、それでも先へは進めない壁だった。
ダンジョンの空はダンジョンの天井に描かれた偽物の青い空だったというわけだ。
「階段っていうか、これ以上登れるところがなさそうなんだけど、どっか出られるところってないの?」
巨大樹の太い幹の上部は少し開けた広場のようになっていた。
その上を移動しながら、手の届く範囲でダンジョンの天井へと触れながら探っていく。
どこかに隠し通路みたいに脱出のための移動ルートがないかを確認する。
だが、どこにもない。
ダンジョンを出るために上に向かうというのは間違っていたのだろうか。
これじゃあ、ただ無駄に木登りをしただけになる。
……ここまで来て、行き止まり?
さすがに、それは笑えない。
どこかに脱出ルートがないのだろうか。
しかし、探しても探しても、ダンジョンの空、あるいは天井には脱出するための糸口すら見つけられなかった。
ほかの手がかりを探すしかないのか?
けれど、恐ろしいほどの高さまで到達した巨大樹の頂上からはるか下にある地面へと目を向けても、これといって脱出できそうなものは見つからなかった。
というか、相変わらず巨大樹の上から見た景色はダンジョンに広がる草原か、あるいは荒野しか見えていない。
「よし。ここは逆転の発想だ。ルートがないなら――作るしかない。ダンジョンの天井に上に繋がるルートがないなら、僕が自分で穴を掘ればいいんだ」
正直、自分でも何を言っているのかわからない。
空を掘る。
冷静に考えれば、正気じゃない。
だが、ここから地面に降りて再びほかの手がかりを探すのは、脱出の可能性が高い選択肢ではないように感じていた。
ならば、最初からの勘を信じよう。
巨大樹を登った先に脱出の手がかりがあるはずだ。
もしそんな手掛かりが見つからないのだとすれば、それは探し方が足りないか、あるいは自分で作る必要がある。
これまでに探しても探しても見つからないのであれば、選択肢はほかにない。
そう考えた僕は、マイスコップを手にして穴を掘り始めた。
いつもの壁を掘るのと同じ、だけれども自分の頭よりも上にある天井に向かって僕はスコップを振り上げる。
上部へ続く穴を開けようと、掘り始めた。
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