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ダンジョン穴掘り――ストレス発散のためにスコップを手にダンジョンでひたすら穴を掘ってたら奈落に落ちた――  作者: カンチェラーラ


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木登り術

 人生で多分初めてとなるであろう木登り。

 それを、どれだけ高いかもわからないダンジョンの巨大樹でやる。

 そんな壮大なチャレンジを開始した僕は予想外に登ることができていた。


 成功の秘訣はまたもやスーちゃんだ。

 このダンジョンから脱出できるかどうかは、もはやスーちゃんにかかっていると言ってもいい。

 そのレベルで、スーちゃんは僕の初めての木登りをサポートしてくれた。


 スーちゃんはスライムだ。

 僕がダンジョンの入り口近くで泥団子を作り、その泥団子とダンジョンの泥を混ぜていたところに発生したスライムで、なぜか僕と仲良くなりマイベストパートナーとなった。

 そんなスーちゃんを僕は家に連れて帰り、一緒に生活をしていた。


 そのときのことを、今さらながら思い出した。

 スーちゃんにとって、壁は障害ではなかったということに。

 つまりどういうことかというと、スライムであるスーちゃんは僕の部屋の壁や家の外壁などのような地面と垂直な壁面でもピタリと張りつき、さらにはその壁面を移動して壁の汚れなどを食べていてくれたのだ。

 あれだけスーちゃんに掃除を頼んでおいて、そのことを忘れていた。

 要するに、スーちゃんは垂直の壁を登れるということだ。


 そして、今の僕の体はスーちゃんがスライムスーツのように全身を覆っている。

 透明で、厚みもほとんど気にならない。

 そのため、全身を覆われていることすら忘れてしまうほどだ。

 だが、このスライムスーツのおかげで僕は速く走ることができた。

 これは、スーちゃんがスライムの体で僕を覆い、筋肉の動きをサポートしたり、走るときの足の裏の衝撃を緩和してくれていたからだ。


 木登りとは、手と足を使って木に掴まりながら登る行為だ。

 手のひらと足の裏が、基本的には木に引っ付くことになり、逆につかみ損ねたり踏み外せば木から落下することを意味する。

 だが、僕の手のひらや足の裏には透明で半液状のスライムの体があり、そしてスライムの体は垂直な壁にでも引っ付くことができる。


 つまり今の僕は、手足に吸盤をつけた状態で木登りをしているようなものだ。

 多分、普通はこんなことはできないと思う。

 いくらスライムと仲良くなっても不可能だ。

 そこらのスライムで同じようなことをしようとしても、吸盤機能が不足していてすぐに木から落ちてしまうだろう。

 これができるようになったのも、スーちゃんが白龍の尻尾を食べて体が大きく成長したからだと思う。

 僕の体のサイズに合わせて縮みはしたけれど、大きくなったおかげで力が増したに違いない。

 両方の手足の四点で僕の体重を支えながら木登りしても落っこちたりしない強力な吸着力が備わっていた。


 圧倒的な吸引力、とでも言いたくなる。

 スーちゃんのおかげで僕は巨大樹に生えている木の枝を掴み、体を持ち上げて乗り上げて、さらに次の枝を登っていく。

 手の届かないところにしか枝がない場合には、ちょっと怖いけれど木の幹に手足をしっかりとつけて這うように移動することで、登り続けることができた。

 プロのロッククライマーでも驚くレベルだろう。


 そんなわけで、下を見たらおしっこをちびりそうなレベルの高さまでも上り詰めることに成功した僕は完全に油断していた。

 このダンジョンにはモンスターがいるということに。

 そして、モンスターの中には木を登るのではなく空を飛ぶものも存在するということに。


 枝がないところを巨大樹の幹にへばりつきながら、一歩ずつ慎重に移動していた僕は、空飛ぶ魔物からすると止まって見えたことだろう。

 格好の獲物と見たのか、鳥型のモンスターが襲いかかってきて、僕はそれに気が付くのが遅れた。

 そもそも、視線は木の幹に集中していたからだ。

 気づいたときには、もう遅かった。

 なにもないと思っていた背後の空から忍び寄る鳥のモンスターに僕は胴体を掴まれ、そのまま木から引きはがされ、空へと放り出された。

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― 新着の感想 ―
私ならスーちゃんに背負ってもらって壁登りをお願いするかも。怖ぇもん
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