食料保存
かつては小さなボール程度の大きさしかなかったスーちゃんは体の大きさを変えることのできる透明なスライムへと変わった。
僕の呼びかけに応じて、人気のビーズクッションくらいの大きさになったが、それから再び巨大化し、今はまた白龍の尻尾を食べている。
そして、目が覚めた僕も再び尻尾肉を食べていた。
透明になり巨大化したスーちゃんが白龍の尻尾に広がって張り付き、皮膚表面を食べる。
白龍は尻尾の先まで白い鱗に覆われていて、これが実に硬い。
僕が歯を立ててもまったく噛み切れない。
そのため、ここはなんでも溶かして吸収できるスーちゃんに任せることにした。
そして、非常に硬い鱗の下にある肉は柔らかくジューシーで、生のまま噛り付いても食べることができる。
これを生で食べてもいいのかはわからないが、もうすでに気絶するくらいには食べていたので今更気にしてもしかたがないだろう。
しかし、この肉は病みつきになるうまさだ。
尻尾の先の切れ端だと思うが、建物の高さくらいはあるような長さと太さをしているだけあって、普通なら僕が食べたところで減ったかもわからないはずだ。
だけど、もうかなりの量を食べている。
明らかに僕の体の容積よりも数倍以上食べているので自分でも驚いている。
おいしすぎるのだ。
こういうのってなんていうんだったっけ。
内臓に染み渡る、みたいな言葉があったように思う。
滴る血がのどを通り、胃に落ちる。
そこから全身へと温かさが広がっていく気がする。
食べた肉はお腹で吸収されて、僕の筋肉になる。
実際にそうなっているのかどうかはわからないが、感覚的に食べた分がそのまま血肉になっているのを実感できる。
……ほんとに大丈夫だよね?
この白龍の尻尾を食べたスーちゃんは体が巨大化して透明になっちゃったけど、僕も同じように透明になったりしないよね?
少し不安にはなるが、手や足は透明になることなく、しびれたり動かしにくくなったり変色するような異常事態も一切起こっていないから大丈夫だろうと言い聞かせて、ひたすらに食事を続けた。
なぜそんなに食べることに執着するのか。
それは、この尻尾を狙ってほかの魔物がやってこないかという心配があるからだ。
僕やスーちゃんがおいしさで我を忘れるということは、ほかの魔物にとっても同じに違いない。
そして、今は周囲には見当たらないものの、いつどこでどんなモンスターがこの尻尾の存在に気が付いてやってくるかわからない。
僕はモンスターが近づいてきても、気づける自信がない。
あの超巨大なモンスターが争い始めるまで、草原に無数のモンスターがいることにすら気づかなかったのだから。
しかし、尻尾を半分以上食べ、そしてあと残り三分の一くらいになったあたりでさすがにお腹がはちきれそうになってしまった。
僕もそうだが、スーちゃんも満腹になってきたようだ。
荒野に横たわる白龍の尻尾の食べ残しができてしまった。
どうしよう?
このまま放置すべきか?
だが、現状では食べ物が次にいつ手に入るかわからない。
早くこの場所から脱出して家に帰りたいけれど、それができるかどうかは未知数だ。
であれば、こいつを捨てていくのはもったいない。
悩んだ末に僕はこの白龍の尻尾の食べ残しを地面へと埋めていくことにした。
そうだ。
もし万が一、新しい食べ物が手に入らなかったら、埋めた尻尾を掘り返して食べよう。
地面に直埋めするので汚いかもしれないけれど、表面をスーちゃんが食べれば中の肉部分はきっと食べられるだろう。
そんな考えのまま、僕は唯一の食糧を保存するための穴を新たに掘り始めた。
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