大変貌
「あれ? 寝てたのか? マジで? 全然記憶ないんだけど」
目を覚ますと、そこは荒野だった。
かつて草原だった場所は、今や草一本生えない不毛の大地と化している。
そのむき出しの地面の上で、僕は身を起こした。
そこでようやく、自分が寝ていたのだと気づく。
僕が起きた場所には今も白い龍の尻尾が横たわっている。
そういえば、超絶空腹だったからか、夢遊病者のようにフラフラと近づき、白龍の尻尾にかじりついたんだったっけ。
そして無我夢中で生肉を齧り、滴る血潮でのどを潤し、そのまま急激な血糖値の変動かなにかで気を失ったのだろう。
たしかそういう漫画があったように思う。
今の僕はある程度お腹が満たされている。
が、僕が血糖値の変動で意識を失っている間も、スーちゃんは起きていたみたいだ。
そして、僕の体から離れて行動し、今も白龍の尻尾を食べ続けている。
……というか、あのスライムはスーちゃんでいいんだよね?
「スーちゃん? 君が俺のマイベストパートナーのスーちゃんで間違いなかったら返事してほしいなー」
白龍の尻尾に引っ付いているスライムは一体だけだ。
僕の体にスーちゃんが引っ付いていない以上、あそこにいるのはスーちゃんであると思う。
それでも確信が持てなかったのは、スーちゃんの体がまた変化していたからだ。
もともとは、泥団子と泥から生まれてきたスライムのスーちゃんの体は土の色である茶色系統だった。
だが、ダンジョンに開いた穴に落ちた先の草原でも穴を掘り、泥団子を作って出現したスライムを食べることでスーちゃんの体は青色に近づいていった。
そのとき、体の大きさもちょっと大きくなっていた。
だが、今は違う。
スマホの表示を見る限り、尻尾を発見したのは半日前だ。
つまり、僕が意識を失っていたその半日で、スーちゃんの体は青色から透明に近くなり、そしてものすごく大きくなっていた。
巨大な白龍の尻尾の先でもビルくらいの大きさがあるように見えるが、その尻尾に張り付き、懸命に食べている透明なスライムの大きさは三十メートルくらいに広がっているように見える。
ついこの前までボール大くらいだったので、あまりにも大きな変化で同一スライムとは思えないのだ。
だが、そんな巨大スライムは僕が声をかけると白龍の尻尾から離れて僕の近くにやってきてプルプルと震える。
一緒だー。
この仕草は僕の質問に肯定を伝えるあのスーちゃんのもので間違いない。
どうやら、半日気絶している間にスーちゃんは大変貌を遂げたようだ。
「お、大きくなったね、スーちゃん。でも、そんなに大きいともう僕の肩には乗れないかな?」
あまりの変貌に動揺し、自分でも何を言っているのかよくわからない。
だが、それを聞いたスーちゃんはその大きく半透明な体をウネウネさせ始めた。
波打つスーちゃんの体がゆっくりと小さくなる。
そして、かつてのボール大ほどではないけれど、人を駄目にするソファーくらいの大きさまで縮んだ。
しかも、そのうえで僕の体に引っ付いてくる。
かつては僕の肩に乗ったり、お腹に引っ付いたりしていたスーちゃんが、僕の全身を包むようにして引っ付いた。
頭の先から手足、そして胴体全体と、肉体のすべてをカバーするようにくっついてきたのだ。
すごく変な感じで、まるで全身がジェルに包まれているようだが、少しすると慣れてきたように思う。
というか、むしろスーちゃんに包まれることで快適な温度に保たれ、海の上にぷかぷかと浮いているかのようなリラックス効果があるようにすら感じてきた。
このまま横になれば、それこそ人を駄目にするソファーのようにゴロゴロし続けられるかもしれない。
まさにこれは人を駄目にするスライムスーツだ。
そんなこんなで、僕は全身すべてをスーちゃんに包まれながら、まだ残る白龍の尻尾に、再び手を伸ばし食事を再開したのだった。
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