飢え
「でっけー。けど、これでも全身じゃないのか。尻尾だけなのかな?」
荒野と化した大地に、白く巨大な物体が横たわっている。
最初は、それを超巨大モンスターである龍の体だと思った。
だが、よくよく見てみると違うことに気が付く。
その白く長い物体には羽はなく、先端は細くなっている。
つまりこれは全身ではなく、尻尾の先の切れ端なのではないだろうか。
きっと戦闘した際に尻尾が切られたのだろう。
あるいは、トカゲのように自ら尻尾を切り離したのかもしれない。
まあ、理由はわからないが、重要なのはこれが本体ではなく、動き出す気配がないことだ。
もしこれが龍の体全体だった場合、実は死んでいませんでしたー、と動き出す可能性さえ考える必要があったかもしれないのだから。
さすがに尻尾だけで動き出すことはないと思う。
ないよね?
グゥ~。
白い龍の尻尾。
言葉にするとなんてことなさそうだけど、その切れ端だけでも小さなビルほどの長さがあり、太さも異様で、それを見ていて、僕のお腹が鳴ってしまった。
そういえば、穴の中に避難してからもう三日も経過していたんだったか。
無事に生き延びられるように祈り続けている間は時間感覚が無くなって全く気にしていなかったけれど、僕はお腹がすごく空いているみたいだ。
龍の尻尾の切断面がぶ厚い骨付き肉みたいに見えたことで、強烈な空腹を自覚してしまった。
やばい。
さっきまでは全然気にしていなかったのに、空腹であると分かったとたんに我慢できなくなってしまった。
そういえば、水すらほとんど口にしていなかった。
それに気づくと、今度はのどまでカラカラに乾いてきてしまった。
どろり、と白龍の尻尾の断面から赤い血が滴る。
普段なら、真っ赤な血を見れば気分が悪くなっていたはずだ。
だが、この時ばかりは違った。
おいしそう。
白龍の尻尾の肉と血を前に、僕の思考は食欲に塗りつぶされた。
そして、それは僕だけではなかったようだ。
僕の体に引っ付いていたスライムのスーちゃんも青色の半液状みたいになってきた体を変形して白龍の尻尾の方向へと伸ばす。
気持ちは同じだ。
僕と同じく空腹を感じて、あれを食べたい、おいしそうだと感じているに違いない。
そこから先の記憶は、途切れている。
どうやら僕は白龍の尻尾に引き寄せられるように近づいて、生のままの肉を齧り、血を飲んで体の飢えを満たそうとスーちゃんとともにひたすら食事に明け暮れていたようだった。
僕が冷静さを取り戻したのは、翌日の昼に目を覚ましたときだった。
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