天変地異
「もうお昼は過ぎた、か。そろそろ移動したほうがいいかもしれないな」
ダンジョンで穴に落ち、遭難するというとんでもない事態に陥った僕は、助けを待っていた。
泥団子を作り、そこで生まれたスライムを倒してスーちゃんに食べさせてはいたが、基本的には最初に落ちてきた場所を動かずに待ちに徹していた。
だが、残念ながら救助は来ない。
監視員のおじさんだけでなく、ほかの探索者が偶然通りかからないかという淡い期待もあったが、それも今のところなさそうだ。
……こうなったら、動くしかない。
目的は食べ物の確保だ。
ここからダンジョンの外まで脱出するのにどれくらい移動をしなければならないのかはわからない。
もしかしたらすぐに出られる可能性もある。
が、現状ではあまりにも楽観的過ぎる考えなので、まずは食べられるものを見つけておく必要があるだろう。
お昼を過ぎたので、なけなしのダンジョンバーを一本開けて齧りながら、どの方向に向かうかを決めようと、穴の縁に立ち、地平線を見渡した。
……ゾクリ。
その瞬間、全身に言いようのない寒気が走った。
急に気温が下がったわけではないと思う。
だが、体の芯から冷気が噴き出すように広がり、僕の体がガクガクと震えだした。
何がどうしたのか、わからない。
だが、この嫌な感じは僕だけではなく、この草原一帯すべてを襲ったらしい。
今まで、モンスターはこの近くにはいないのではないかと思うくらい、姿を見かけなかった。
だが、僕が立っていられないほど震えている間にも、周囲の状況はめまぐるしく変わっていく。
遠くの木々から鳥が飛び立つ。
まるで地震を予知した野鳥が空へと飛びあがるかのように、無数の飛行型モンスターが空を駆け上がっていく。
きれいな羽を持つ鳥型のモンスター以外にも虫のような羽を持つモンスターに蝙蝠のような羽を持つ何かもいる。
たくさんの種類のモンスターが数えきれないほどの数で空へと飛び立ったことで、まるで空に幕が掛かったかのようになった。
太陽も雲もない青空が広がるダンジョンで、無数の魔物が空へと舞い上がったことでまるでカーテンが閉じられたかのように暗くなる。
異常事態はそれだけではない。
これまたどこにいたのか、飛行型以外のモンスターも動き始めた。
地を這う魔物たちが、一斉に移動を開始したようで、地上を走るモンスターの足音がどんどんと大きくなる。
その音と振動は、地震と錯覚するほどだった。
なにが起きているのかはわからない。
だが、確実になにかが起きている。
そして、それは僕のようなちっぽけな存在がどうにかできることではなく、まさに天変地異としか言いようのない現象が起きている。
モンスターたちはそれにいち早く気が付き、そして逃げているのだ。
その証拠に、モンスターたちは、ある方向から離れるようにひたすらに移動し続けている。
……なにがあるのか。
それが気になり、モンスターたちが離れようとするその中心点へと目を向ける。
きっと、これは現実逃避だ。
僕もモンスターたちを見習って逃げるのが正しいはずだ。
だが、自分自身で分かっている。
僕の足では逃げきれないと。
だからこそ、震える体で立ち尽くし、目だけでそれを追った。
そこには怪獣がいた。
モンスターと呼ばれる幾多もの魔物たちが、まるでちっぽけなぬいぐるみに見えてしまうレベルの超超超巨大なモンスターがそこにはいたのだ。
それも二匹。
僕の目では地平線のそのまた向こうというレベルで距離が離れているように思うのだけれど、そんな遠くても視認できている理解不能なほど巨大な超大型モンスターが戦っていたのだった。
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