変化
草原に掘った穴の底で、泥が蠢く。
モゾモゾと動き始めた動く泥ことスライムだが、ダンジョンの入り口近くで出現したものよりも活発に見える。
あの時は、モゾ……モゾ……と、「あれ? もしかして動いているのかな?」と思うくらいだった。
だが今回は、すぐに勢いよく動き出した。
「えい」
とはいえ、そこは僕が掘った穴の中という限られた空間内での出来事だ。
速く動けたところで、できることといえば穴を這い出てこようと昇るくらいしかない。
泥団子を作るために穴のそばに座っていた僕からはその動きがよく見えていたため、すぐに対応できた。
作りかけの泥団子をそばに置き、スコップを握りしめて、穴の底に発生したスライムへとスコップの先を突き刺す。
そして、中央部分にあるであろう魔石をスライムの体の外へとはじき出すように突き刺したスコップを、そのまま跳ね上げる。
痛みはないはずだが、それでも体全体がビクンと震えた気がした。
後に残ったのは、穴の中にある魔石とスライムの死骸だけだ。
それを見て僕の体に引っ付いていたスーちゃんが離れて降りていく。
スーちゃんは穴の中に入り、生まれたばかりで死んでしまったスライムの死骸に飛び込んだ。
……食べるんだろうか?
我が家でゴミを食べてきれいにしていてくれた時のように、スーちゃんが倒したスライムの死骸と重なり合い、少しずつ消化していく様子に、思わず目を見張る。
スライム同士で捕食する――そんな新たな発見だった。
「ん~? ここの土と水でできたスライムって入口の時とちょっと違うっぽいな。泥団子を中心に生まれているのは確実なんだけど、もうちょっとゼリーっぽい感じでもあるのか」
スーちゃんが倒したスライムの体を食べているのを見ながら、僕は再び泥団子作りを再開する。
手を動かし、土と水で作った泥の塊をピカピカに仕上げながらも、草原で発生したスライムに少し違いがあることに気が付いた。
スーちゃんは体がなめらかできれいではあるのだけれど、基本的には泥が原料であったためか土の色の体をしている。
だけど、ここで発生したスライムは、青みがかったゼリー状の体をしていた。
どちらかといえば、この草原で生まれたスライムのほうが、一般的なイメージに近い。
むしろ、例外なのが泥の塊であるスーちゃんや楓ちゃんとともにいるスイちゃんなのかもしれない。
だが、そんなスーちゃんは倒したスライムの体と魔石を食べ終えるころには、少し体つきが変わっていた。
今までは野球ボールより少し大きく、ソフトボールよりは小さい泥の色をした体だった。
それが一回り大きくなり、少し青みが増した体へと変わっていたのだ。
「スーちゃん、大丈夫? おかしなところはないよね?」
草原スライムを食べたから体つきが変化したのだろうか。
若干心配になり、食事を終えたスーちゃんに尋ねる。
しかし、スーちゃんは特に気にした様子はなさそうで、僕の質問に対しても大丈夫であるとジェスチャーで返事を返してくる。
なら、大丈夫か。
スーちゃんがいいというなら、逆にもっとスライムの死骸を食べさせてもいいのかもしれない。
その後も僕は泥団子を作り、そのたびに出現したスライムをスコップで一突きで仕留め、スーちゃんが食べるというのを繰り返していくこととなった。
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