暇つぶし
万が一、誰かが僕の落下に気づいて助けに来てくれた時に、下手に動いたせいで見つけてもらえなかった困る。
そう考えて、僕はその場にとどまり続けた。
昼過ぎだ。
スマホの時計を確認し、あと数時間はここで待つと決めた。
それが正解なのかどうかは全く分からない。
待つのが正解か、それとも動くべきか。
正直、どちらが“死なない選択”なのかはわからない。
もしかしたら、すぐにこの場を移動して出口を探したほうがいいのかもしれない。
あるいは、数時間といわずに救出されるまでずっとこの場で待っていたほうがいいのかもしれない。
だけど、僕は数時間経過しても助けが来なかった場合は、この場を離れて移動しようというつもりになっていた。
というのも、飲用水は手に入れられそうだとわかったが、食べ物が見当たらないからだ。
リュックに入っているダンジョンバーで少しは凌げるだろうけれど、それもいつまでもはもたないだろう。
食料の確保は生き延びて帰るためには絶対に必要だと思う。
だから、暗くなる前に食糧を探しに出られるように、あと数時間はここで待つことに決めたわけだ。
ただ、何もせずに待つのは無理だった。
何かしていないと落ち着かない。
そこで草原に穴を掘ってみたが、ずっと続けるわけにもいかない。
なぜなら、穴を掘る作業というのは結構な重労働であり、お腹が空くからだ。
なので、お腹が空かずにできるダンジョン内での暇つぶしとして僕は泥団子を作ることにした。
無意味な作業だとわかっている。
それでも、手を動かしていないと不安に飲み込まれそうだった。
草原を掘ってできた穴の底。
そこには水が湧き出てきている。
その水を掘った土と混ぜ合わせて泥にし、両手のひらで握ることができるくらいの量を持ち、ギュッと圧をかけ、丸い球にしていく。
なるべく重く、固くなるように、球の中心に押し付けるようにしながら泥を固めていき、そして満足できるくらいになったら、泥団子の表面を磨き上げる。
渚の妹の楓ちゃんがやっていたように、きれいに、つるつるに、ピカピカになるように、丁寧に丁寧に磨いていく。
そうしてできたピカピカツルツルの泥団子を穴の底にそっと入れて、また次の泥団子を作り始める。
いつモンスターに襲われるかわからない。
そんな状況でこんなことをしていてもいいのかと思うのだけれども、逆に言えばほかにできること、することがないというのもある。
ほかにできる暇つぶしといえば、スマホをいじるくらいだけれど、それだってバッテリーの残量は限られている。
今後スマホが必要になる場面もあるかもしれないので、暇つぶしでバッテリー残量を消耗するのも考えものだ。
そうして、僕はひたすら泥団子を作り続けた。
その作った泥団子を穴の底の水場に置いておいたのだが、すると――そこからスライムが発生したのだった。
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