飲料水
「おお? ダンジョンの地面が草原だと、穴を掘ると水が出てくるんだな」
ダンジョン内で遭難した僕は、現実逃避していた。
下手に動くとまずいかもしれないという思いもあり、その場にとどまりながら、できることとして草原にスコップを差し込み、穴を掘っていた。
すると、予想外のことが起きた。
数メートルほどの穴を掘ったところで、底から水が湧き出てきたのだ。
てっきり、ダンジョンの地面は一定以上掘ればまた漆黒の穴が現れるのかと思っていた。
まさか、水が湧き出てくるとは想像もしていなかった。
……これって飲んでも大丈夫なんだろうか?
ペットボトルに水を入れてダンジョンに持ち込み、運よくそれも手元にあるが量は限られている。
呑めるのなら助かるんだけど。
「どう思う、スーちゃん? この水って僕が飲んでも大丈夫かな?」
考えてもわからない。
そこで、唯一この場でコミュニケーションできる相手に声をかける。
スライムのスーちゃんだ。
スーちゃんは僕の体に引っ付いていたので、穴に落ちたときにも一緒についてきてしまうこととなった。
スーちゃんにとってそれが良かったのかはわからないけど、信頼できるパートナーがそばにいてくれるのは僕にとっては非常にありがたい。
こんなふうに話しかけられる相手がいるだけでも心強い。
そんなスーちゃんだが、僕の体から離れて、草原に開いた穴へと降りる。
そして、その穴の底に湧き出た水に体をつけた。
……水を飲んでいるんだろうか?
溜まった水がスーちゃんに飲み込まれて減っていく。
そうして、湧き出て溜まっていた分をすべて飲んだ後、スーちゃんは穴から上がってきて体をプルプルと震わせる。
「えっと、もしかしてスーちゃんが先に飲んで調べてくれたってことでいいのかな? 僕でもその水を飲めそうってことでいいの?」
僕がスーちゃんにそう聞くと、プルプルと柔らかなその体を震わせる。
これは多分、肯定の合図だ。
ということは、草原ダンジョンで穴を掘って湧き出してきたこの水は僕も飲める可能性があるってことか。
スーちゃんが飲んだ。
それだけで、少し安心できた。
これは助かる。
見渡した感じでは水場というのは見えていない。
本気でサバイバルになったら、一番最初は水の確保が重要になりそうだけれど、今回はその一番最初の難題を解決できたということになる。
まあ、それもこれも飲んでみなければわからないか。
僕はもう一度穴の底にスコップの先を当て、再び掘り始めた。
しばらくするとまた水が湧き出してきた。
両手で水をすくい、泥が混じらないように気を付けながら、そっと口に含む。
一瞬、ためらう。
もしこれが毒だったら――
それでも、確認は絶対にしておかなければならないと考えて行動した。
変な臭いや味はしないし、舌を刺激する嫌な感じもなし。
細かいところはわかんないけれど、多分大丈夫だろう。
ペットボトルの水が無くなったら湧水を飲むことにしよう。
飲料水の確保に成功した僕は、精神的に一安心し、その場で座り込んだ。
そして、今度は泥団子を作り始めることにした。
何も考えたくなかった。
ただ、手を動かしていないと――怖かった。
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