マルチタスク
「結局、僕だけスライムを仲間にできなかったよ」
ダンジョンの中で渚が悲しみの声をあげる。
泥団子を作り、それを泥に埋めてスライムを生み出すことには何度も成功したものの、そのスライムが渚には懐かなかった。
残念だが、仕方がない。
さすがにこっちの言うことを理解もしないスライムをそのまま家に連れて帰るわけにもいかないだろう。
そんなことをしたら、家に穴が開いてもおかしくない。
「まあ、その分魔石が手に入ったからいいんじゃないの? それだって、売ればお金になるんだし。それに肉体強化はできるようになったんだしさ」
「……うん、そうだね。僕もスコップで土を掘れるようにはなっているもんね。成長しているってことで間違いないよね、佑馬君?」
「当然。最初は全然掘れなかったのに一日でここまで進歩したって自慢できるよ」
渚は自分でスライムを仲間にすることはできなかったが、超集中を全く経験していないわけではない。
僕のスーちゃんで経験もしているし、楓ちゃんからスイちゃんにお願いしてもらい魔力を食べてもらって超集中の状態にもなっていた。
これからは二人とも、スイちゃんの力を借りて超集中の感覚を覚えることができるはずだ。
毎日練習すれば、スイちゃんの力を借りずとも超集中の状態になれるかもしれない。
そう考えると、僕も負けていられないな。
スーちゃんに頼り切りにはならないようにして自分でももっと練習したほうがいいかもしれない。
「じゃあ、そろそろ今日の土を持ち帰ろうか」
「あ、そっか。そういえば掘った土は自分たちで持っていかないといけないんだったね。っていうか、僕たちが泥団子を作っている間に佑馬君はすごい量を掘っていたけど、こんなに持っていけるの?」
「任せて。超集中を使えばバランス能力にも影響あるんだ。七袋くらいまでなら上に積んでも手押し車で運べるんだよ」
「す、すごいね。なんかサーカスの人みたい」
「曲芸ってやつかな。そうだね。もしかしたらそういうのもできるかもね」
渚と楓ちゃんが泥団子を作ったり、スイちゃんと遊んだり魔力操作の練習をしている間も僕はずっと穴を掘っていた。
二人と話もしながらだから、口と手を両方動かしていたけど、作業スピードはそんなに落ちていないはず。
超集中の新しい一面が見れたかもしれない。
意識がものすごく集中しているので一つのことに没頭してしまうかというとそうではなく、二つのことを同時並行でできるみたいだ。
こういうのをマルチタスクとかっていうんだっけ?
話しながらでも、どこをどういう風に掘るか、自分の体をどういう風に使うかをしっかりと考えながら動くことができたと思う。
もしかして、これならショート動画とかを見ながらでも勉強ができたりするんだろうか。
いや、勉強は勉強でしっかりやったほうがいいか。
そんなことを考えながらも、僕は手押し車を押してギルドにダンジョンの土を納品し、そこで得たお金プラス二人が手に入れた魔石も売って、その代金で帰り道に買い食いして帰ることになった。
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