掃除の依頼
「佑馬、お風呂に入ったら出るときにお風呂掃除をお願いね。お母さんたちはもう入っちゃったから」
渚と楓ちゃんの二人とダンジョンで遊んで買い食いして帰宅した。
そして、家に帰ったらいつものように夕食を食べ、その後は自分の部屋で勉強をする。
すでに宿題は終わらせてあるので、今まで習ったことのある範囲を見返していた。
やっぱり忘れていることが多いなと思いながら、特に重要そうなところをノートにまとめていく。
ショート動画でやっていたノート術という方法で、自分が忘れていたり重要なところをノートに書き出しておいたほうが、もう一度見直しをするときにやりやすいらしい。
そんな感じで勉強をしつつ、僕は魔力操作の練習にも取り組んでいる。
超集中の練習だ。
いつもはスーちゃんに頼んで集中力を高めているけれど、僕自身の力でもきちんと魔力を漏れ出さずに保てるように真似しながら勉強する。
ちゃんと超集中ができていれば複数の行動を同時に行うマルチタスクができるのは今日のダンジョンでの一幕で分かっている。
それなら、超集中の練習と勉強を同時にできるのではないかと考えた。
結果的には、まあまあうまくいっているほうだと思う。
もちろん、スーちゃんに協力してもらったほうが勉強効率はいいと思うけどね。
そんなわけで、僕のそばを離れる時間ができたスーちゃんには掃除をお願いした。
ダンジョンに行っていたことで汚れたスコップや服などの汚れも取ってもらったり、押し入れに入れている物のホコリも食べてもらう。
勉強机の下や裏の隙間なんかもきっとさらにきれいになっているはずだ。
そんなスーちゃんの掃除技術は天下一品で、実はダンジョンから帰って晩御飯を食べているときにお母さんから褒められた。
僕が自分の部屋だけじゃなくて二階の廊下の床や壁、天井などもスーちゃんに掃除をしてもらっていたが、そのきれいになった廊下を見てお母さんが感激していたのだ。
佑馬がこんなに上手に掃除できるとは知らなかった、すごい、ありがとうと何度も言ってきた。
正直、申し訳ない。
僕は何もやっていないんです。
やったのはスーちゃんなんです。
ただ、動くスライムに物を食べさせているという説明を渚たちはともかくダンジョンについては疎いであろうお母さんにいうつもりはなかったので、「たいしたことないよ。たまには僕も掃除くらいするよ」と答えてしまっていた。
だからだろうか。
お風呂に入った時に掃除もしておいてくれとオーダーが出てしまった。
いつもならば、そう言われるとちょっと嫌な気持ちになるところだ。
お風呂掃除はめんどくさい。
お風呂に溜めたお湯を排水管に全部流れるまで待って、自分が濡れるかもしれないからそのまま裸で待機してその後に浴槽や床を掃除し、水分を拭きとるなんて手間がかかる。
「うん、わかったー」
だが、スーちゃんがいるなら問題ない。
というわけで、スーちゃんにお風呂掃除を頼むために一緒に浴室へと向かう。
どうでもいいけど、スーちゃんに僕の体についたゴミや汗も食べてもらっているので、お風呂に入らなくても、体はきれいな状態ではある。
ただ、ゆっくりとお風呂のお湯に浸かるのは気持ちがいいので入るのはやめられない。
「スーちゃん、おいで。ボディーソープで体を洗ってあげるよ」
なんでも食べるスライムのスーちゃんの体はきっときれいだろうけれど、それでもなんとなくスーちゃんをお風呂に入れる前に洗ってあげることにした。
僕の手でスーちゃんの体にお湯をかけてあげ、その後泡立てたボディーソープで優しくなでてあげ、サッとその泡を流す。
うん、きれいになったと思う。
「じゃあ、悪いんだけど、僕がお風呂に入っている間にこの浴槽の掃除をお願いできるかな?」
スーちゃんを洗い終わったら、次は自分の番だ。
頭と体にお湯をかけて洗い、湯船に浸かる。
その間にできるところの掃除をしておいてもらおう。
浴室の床やその角、壁や天井なんかはかびやすいし、そういったものは特に念入りに食べてもらうことにした。
「ふー、きもちいー」
お湯で体を温めながらも、魔力操作は忘れない。
超集中を自分の力でできるようにしながら、体の感覚を確かめる。
腕や足、胴体の筋肉が今日の穴掘りで疲れがたまっていると悲鳴を上げているのを感じ取る。
その疲れを押し流すように自己流のマッサージやストレッチなんかもやっちゃう。
「あれ? スーちゃん、どこ行ったの?」
そんなことをしていると、ふと気が付いた。
スーちゃんの姿が見当たらない。
……返事がない。
どこにいったのかキョロキョロ見渡しても浴室にはスーちゃんの姿は影も形もなくなっていた。
僕は慌ててお湯の中から飛び出し、スーちゃんを探し始めた。
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