スイちゃん
「やったー。この子の名前はスイちゃん! よろしくね、スイちゃん」
僕の指導の下、ダンジョンの土で泥団子を作り、スライムづくりに励む二人。
そして、肉体強化の時と同様にスライムづくりは楓ちゃんのほうが先に成功した。
いや、それは語弊があるかもしれない。
なぜなら、渚もスライムを出現させることにはすでに成功していたからだ。
だが、渚の生み出したスライムは渚には懐かなかった。
なぜだかはわからない。
が、モゾモゾと動き出した動く泥であるスライムは渚の呼びかけには反応を示さなかった。
しまいには、僕らの荷物を食べようと動き出したため、やむなくスライム内部にある魔石を取り出し、動きを止めた。
どうしてそうなったのかはわからない。
もしかすると、泥団子を作った時に魔力を送り込む量が少なかったのかもしれない。
が、失敗もあれば成功もある。
兄である渚の失敗とは裏腹に、妹の楓ちゃんは成功した。
渚と同じように泥団子を作り、その泥団子を泥の中に埋めてしばらく様子を見ていると動き始めた泥のスライム。
そのスライムが、楓ちゃんの言うことを聞いてくれた。
手にひらの上に乗ってほしいとお願いすると、スーちゃんとは違って上下にポンポンと跳ねるように動いて意思表示をする。
そして、言われたとおりに楓ちゃんの手に乗ってくれたのだ。
「スイちゃんか。いい名前だね。スイちゃん、よろしく。こっちの子はスーちゃんっていうから仲良くしてね」
楓ちゃんのちっちゃな手の上に乗るスイちゃんにスーちゃんを紹介する。
スーちゃんはプルプルと横に震えるように動き、スイちゃんはピョンピョンと上下に動く。
可愛い。
スライム二匹の微笑ましい姿に僕ら三人はそろって笑顔を浮かべた。
「楓ちゃん、スイちゃんにお願いしてみて。楓ちゃんの体から漏れ出る魔力を食べてもらって、超集中になれるように頼んでみてよ」
「うん、わかった。スイちゃん、佑馬お兄さんの言ったとおりにしてくれるかな?」
楓ちゃんの言葉を聞いて、スイちゃんが上下に揺れる。
きちんと言葉に反応しているってことは、スライムにも意思があるのだろう。
生まれたばかりで言葉がわかるなんて偉いぞ、スイちゃん。
僕がひそかに心の中で応援しながら見ていると、目をつぶっていた楓ちゃんが声をあげる。
「あ、わかった。これが超集中なんだね。わ、すごい。なんか変な感じ。遠くの音も聞こえるみたいだね」
「あ、もうできたんだ。そうそう、集中力が高まって感覚が鋭くなるから音も遠くまで聞こえるようになると思うよ。もしかしたら、最初はそういうのが聞こえすぎたり、わかりすぎてしんどくなるかもしれないから、その時はスイちゃんにお願いして魔力を食べるのをやめてもらうんだ。超集中が解ければ普通の状態に戻るから楽になると思う」
「うん、わかった。まだ大丈夫だから、このままでいる」
そう言って、目を閉じてじっとする楓ちゃん。
楓ちゃんの手の上に乗っているスイちゃんは僕のスーちゃんよりも体が一回り小さい感じがする。
多分、泥団子を作った時の大きさが僕の時よりも小さかったからかな?
ただ、僕よりも丁寧に磨いてきれいにつるつるにしていたからか、色合いが少し白っぽくてきれいだ。
そんな白っぽいスライムとともに精神を集中し続ける楓ちゃんを見ながら、渚は再び泥団子製作作業へと戻ることにしたようでしゃがみこんで、手を動かしていた。
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