返して
「ようするに、そのスライムのスーちゃんが僕らの体に引っ付いて魔力を食べると超集中の状態になるってこと?」
「うん。多分そうなると思う。超集中ができればめちゃくちゃ意識が集中できるだけじゃなくて、例えば、夜寝たときに疲れが取れやすくなったり、勉強がはかどるとか、体の動かし方がうまくなるとかいろいろあるんだ。まあ、それはスーちゃんに魔力を食べてもらっている間だけのことだけど、一度でも体験しておくと、これから目指すべきものがはっきりすると思う」
一度でも経験しているか、していないかの違いは大きいと思う。
今の不完全な肉体強化が最終形態だと思ってしまったらそこで進歩は止まるからだ。
だけど、スーちゃんに助けてもらってであっても超集中を経験していれば、まだ自分の魔力の扱い方は先のあるものだと認識できる。
そうすれば、自然とそれをできるようになろうと目指すことにつながると思う。
「やってみる? 一応、僕の経験談でしかないけれどスーちゃんに魔力を食べてもらうのはデメリットはないと思うから、試してみてもいいと思うよ」
「そうだね。佑馬君がそんなに言うならお願いしてみようかな。頼めるかな、佑馬君」
「おっけ。じゃあ、スーちゃんお願いね、――って、あれ? いつの間に」
僕が渚と話をして、スーちゃんを一時的に渚に渡して超集中の状態になってもらうことに決めた。
そう結論が出たところで、改めてスーちゃんにお願いしようと思ったときにようやく気が付いた。
僕の体からすでにスーちゃんが離れていることに。
スーちゃんはなんと楓ちゃんの手のひらの中にいた。
「かわいー。泥団子みたいなのにスベスベで柔らかくて気持ちいい。佑馬お兄さん、楓もこの子が欲しい」
「え、いや、ちょっと待って。スーちゃん取らないで」
「か、楓、駄目だよ。そのスライムは佑馬君の友だちなんだから、勝手にとっちゃだめだよ」
楓ちゃんの手のひらの上に乗るスーちゃん。
茶色い野球ボールよりも少し大きい程度のスベスベプニプニのスライムは、機嫌がよさそうにその手のひらの上でフルフルと震えている。
当のスーちゃんは、楓ちゃんと遊ぶのを嫌がっていなさそうだ。
ぷるん、と楽しそうに震えている。
なんか、軽くショックだ。
スーちゃん取られちゃった。
「か、楓ちゃん、お願い。一度スーちゃん返して」
「うん、いいよ。じゃあ、私もスーちゃんみたいなお友達を作る。前みたいに泥団子を作ったらいいのかなー?」
「ああ、そうだね。うん、それがいいよ。そうしよう。渚もそれでいいよね。スライムの作り方をもう一度説明するから、二人とも自分でスライムを作って仲良くなりなよ」
そうだ。
そうしよう。
わざわざ僕がスーちゃんを差し出さなくてもいいじゃないか。
ここにはダンジョンの土があるし、水も持ってきている。
土に水をかけて泥団子を作り、その泥団子を泥の中に入れて放置する。
そうすれば、スライムが出現するはずだ。
スーちゃんみたいに友だちになってくれるスライムができる方法がいまいちよくわからない。
うーん、と唸りながら思い出してみるけど、たぶん、泥団子を作るときに手のひらから魔力を注いだような覚えがある。
もしかすると、あれが良かったんだろうか?
とにかく、そのときのことを再現できるように当時のやり方を思い出しながら説明し、二人に泥団子からのスライムづくりを指導して、なんとかスーちゃんを返してもらえたのだった。
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