レクチャー
「まずはこのダンジョンバーを食べます。一つ五百円もする補給食だから心して食べるように」
渚と楓ちゃんに魔力についてレクチャーする。
そのためには、まずは、魔力を感じられるようにならないといけない。
そのためにはどうするか。
ダンジョンバーを食べるのが一番だ。
昔はダンジョンがなく、ダンジョンが出現するまでは、魔力なんてものはなかったらしい。
今では魔力はあると知られるようになっているけれど、基本的にはダンジョンにあるものだと認識されている。
つまり、ダンジョンにほとんどかかわりのなかったかつての僕や、今の二人にとっては魔力というのは縁のないモノということになる。
まずは、その魔力を体に取り込む必要がある。
今、僕にできるのはダンジョンバーを食べてもらって、その中の魔力を取り込んでもらうことくらいだ。
ただ、ダンジョンバーは高い。
学生の僕らにとっては五百円というのはかなり高価なものになる。
正直、ちょっと痛い出費だ。
でも――ここでケチる意味はない。
当然、値段のことを口にすると渚は遠慮した。
「そんなのもらえないよ」
「いいから食べてよ。そうしないと魔力を認識できないと思うし、渚が魔力を使えるようになって一人でダンジョンの壁を掘れるようになれば、それを売れば五百円くらいなら稼げるようになると思うからさ」
「……本当に? 僕でもお金を稼げるようになるの?」
「もちろん。だって、穴掘りを始めたばかりの僕でもできるんだから、渚ができないわけないじゃん。ってわけで、ダンジョンバーをどうぞ。楓ちゃんもこれを食べてみてよ。で、食べた後にお腹のほうでポカポカするような温かいなにかを感じられると思うけど、それが魔力だよ。その魔力を体全体に広げれば肉体強化が使えるようになるんだ」
……渚は、お金が欲しいのかな?
自分でも穴掘りして稼げるという僕の話に少し食いついてくれた。
なので、それをとっかかりにして無理やり話を進める。
遠慮し合って話が進まなくなるのも面倒なので、こういうのは勢いでパパっと進めるのが吉だ。
渚よりも先に楓ちゃんのほうが僕の言うことを聞いてダンジョンバーを食べたので、それを見た渚も、ためらいながらも同じように口にした。
「……あんまりおいしくはないみたいだね」
「探索者が長期間ダンジョンで活動するときに使う補給食みたいなものらしいからね。味よりも、栄養やカロリーを重視して作られているそうだからね。で、魔力は感じられそう?」
「う、うーん。どうだろう。まだよくわかんないかも。楓もそうだよね?」
「ううん。わかるよー。このあったかい感じが、佑馬お兄さんの言っているやつだよね? でも、これをどうすればいいかわかんない」
「お、楓ちゃんは感覚掴むのが速いみたいだね。えっと、お腹のあたりのポカポカが広がって、それがだんだんと胴体全体に広がっていって、最後には手とか足にも広がるようなイメージ、かな? 僕も詳しくはないけど、たぶんそんな感じ。そういうイメージでポカポカを操れないかな?」
「うん、やってみるー」
渚は魔力の感覚をつかむのに苦労しているようだ。
それに対して、楓ちゃんはあっさりと魔力を認識してしまった。
そして、それを全体に広げる肉体強化に挑戦する。
結果、楓ちゃんのほうが速くそれを実現することができ、その後は僕と二人で渚へと教える係に回るのだった。
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